0128 マノエル・ド・オリヴェイラ監督『階段通りの人々』聖地巡礼
2022年9月23日(金)にポルトガルの(旧リスボン県)リスボンでマノエル・ド・オリヴェイラ監督『階段通りの人々』(A Caixa)の聖地巡礼をしてきました。
ひとりの盲目の老人を中心に、彼のその恩恵を羨むリスボンの裏町のサン・クリストヴァン階段 Escadinhas de São Cristóvão 通りの人々の一日が、限定された空間の中で展開されていきます。
現代のリスボンの階段通り。まるで舞台のような階段の最上部に教会が聳え、「恵みの聖者」のレリーフ(幼児と聖クリストフォルスのレリーフ)が浮かんでいる。
勤めを終わらせた夜警が眠りに帰る朝、人々の生活が始まる。階段通りの人々の最近の関心毎は盲目の老人(演:ルイス・ミゲル・シントラ)がどこからか認可されたという「恵みの箱(寄付金箱)」を据えて公然とお恵みのお金を集め始めたことだ。老人の娘(演:ベアトリス・バタルダ)は選択でなけなしのお金を稼ぎ、その亭主(演:フィリペ・コショフェル)は遊び人。自分たちの同じ貧乏人だった筈なのに、老人の「恵みの箱」に通行人からのお金が集まり、一家の羽振りがやたら良くなったのだ。
この箱をめぐって、通りの12番地の老女(グリシニア・クァルティン)、その孫夫婦、孫息子の親友、子だくさんの母親(パウラ・セアブラ)、居酒屋の亭主(演:ルイ・デ・カルヴァリョ)、豆売りの女(イザベル・ルート)、ギター弾きの教授(演:ドゥアルテ・コスタ)、朝から騒動のタネを探し求めているチンピラたち、老人の娘婿の遊び人仲間(演:ディエゴ・ドリア)、燃える赤のドレスの娼婦(演:ソフィア・アルヴェス)、そしてニセ盲人まで登場。
吹き溜まりのような階段通りに悲劇が訪れ、その悲劇から一転、聖女が誕生していく…。
セットを使わずオールロケ(←ラスト近くのバレリーナの舞踏シーンはずっとセットだと思ってましたが現地訪問してロケ撮影と確認)の舞台はリスボン中心部東側のマダレーナ通りからアルファマ地区に登る階段。実際にはかなり狭いエリアで、大きな撮影所のスタジオならロケ地全体がすっぽり収まってしまう広さです。階段の登り切った所に幼児と聖クリストフォルスのレリーフがあって、更に横階段を登ったところにサン・クリストヴァン教会 Igreja de São Cristóvãoがあります。
Igreja de São Cristóvão (Lisboa) – Wikipédia, a enciclopédia livre (wikipedia.org)
いつもの聖地巡礼報告では作品のストーリーの順を追って紹介しますが、本篇はサン・クリストヴァンの階段通りを上に下に行ったり来たりで(構成上、ご報告がわかりにくくなってしまうので)、今回の聖地巡礼報告は丘の上の「サン・クリストヴァン教会」~「幼児と聖クリストフォルスのレリーフ」~「盲目の老人」~麓の「マグダレーナ通りに抜ける出口」というように山側から谷側の地理的な位置関係の上下順に本篇画像と検証画像を並べてご案内します。
高齢のマノエル・ド・オリヴェイラとしては、悠々と流れるドウロ川を舞台にした大作『アブラハム渓谷』を撮ってから一年を置かずして監督する作品だったので肩の力を抜いてコンパクトに撮影出来て良かったのではないでしょうか?(次作の『メフィストの誘い』も修道院敷地内の限定空間で撮影)。
©2022 プッチー・ミンミン
©1994 Madragoa Filmes
マノエル・ド・オリヴェイラ監督他作品の聖地巡礼
0125『ノン、あるいは支配の空しい栄光』
0126『神曲』
0127『アブラハム渓谷』
0129『メフィストの誘い』
0130『家宝』
0131『永遠の語らい』
0132『コロンブス 永遠の海』
0133『ブロンド少女は過激に美しく』
0134『アンジェリカの微笑み』
0135 『ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区 征服者、征服さる』