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終わりの始まり➃ 終


りょうちゃんがいなくなった。
何の前触れもなく、突然に。

その日は仕事があまりにも忙しく
スナックにも行かず、家に着くなり
気絶するように眠った。

目が覚めて、スマホを手に取る。
「あれっ?」
ラインが来ていない。
いつもなら、りょうちゃんから
ラインが来てるはず。

「おかしいな…」
イヤな予感がした。
スマホを持つ手が震え出した。
りょうちゃんにラインを送る。
既読にならない。
そんなのは、よくある事。

だけど、その時は違った。
何度も何度も文字を打つ。

「りょうちゃん」
「どこにいるの」
「大丈夫?」
「返事して」
「お願いだから」
「帰ってきて」

どれだけ待っても既読にはならなかった。
通話も呼び出し音が、永遠に鳴り響くだけ。

一気に凍りついた。
心が、躰が…

あたし、拒否されたんだ…


もちろん、思い当たる場所は
片っ端から探しに行った。

スナックにも行った。
ママにも聞いた。

お店にも、来ていないと。

りょうちゃんは
どこからともなくフラッと来て、
気が付いたら
常連になっていたらしい。


あの日、あたしの心に広がった波紋は
今日の予感だったのか…

あの日、あたしが言った
「愛してる」
この言葉がいけなかったのか
この言葉がきっかけだったのか

今となってはわからない。
わかるのは、もう
りょうちゃんは帰って来ないという事だけ。


あの日、あなたは言った
「好きだよ」
私も、あなたに言った
「大好き」

そのまま私達は長いキスをした。


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