不思議の国
最近この曲ばかり聴いている。
チャゲ&飛鳥の83年のアルバム『21世紀』に収録の佳作、『不思議の国』である。
もとより美しい、あまりにも美しい曲だと思っていたが、最近になって歌詞が異常にいいことを発見した。
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飛鳥涼の詞のモチーフのひとつに「子ども」がある。
子ども系は隠れ名曲の宝庫であることは、皆さんも先刻ご承知おきと思う。
Sons and Daughters〜それより僕が伝えたいのは
水の部屋
クルミを割れた日
風のライオン
夢はるか
ガラスの十代
…タイトルをタイピングしているだけで背すじが伸びてくる、真の名曲たちである。
『不思議の国』はファンでも知らない人がいるであろうS級隠れ名曲であるが、これもまた子ども系の曲。
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ある時『21世紀』を流し聞きしていたら、ふと『不思議の国』のこのフレイズが入ってきた。
絵空ごとを並べながら僕はいつも得意顔
この表現に自分の生活がぴたりと重なったのだ。
私の幼な子はのめり込みやすいタイプで色々熱中しては(電車とか忍者とか野球とか)、そのトピックを一生懸命話してきたりごっこ遊びに引きこんだり。
言葉が足りなくて何を言いたいのかわからなかったり、うまく付き合えなかったりすることもよくあり、密かに心痛める毎日を私は送っている。
息子の姿はまさに「絵空ごとを並べながら僕はいつも得意顔」なのであった。
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このフレイズから辿っていくと「不思議の国」とはどんな場所なのかが見えてきた。
そっと瞳を閉じてみるだけで 不思議の国
とあるから空想の世界、心の世界のことを不思議の国と言っているのであろう。
「空を翔けたり息きらしたり」して遊ぶワンダーランド。
さらに辿ってみると、こんなフレイズが一段と深みを添えていることを発見する。
まだ僕が幼い頃 心悲しい時にだけ 訪れていた気がする 不思議の国
悲しいときに逃げ込むスペースが、不思議の国なのだ。
楽しいばかりのワンダーランドかと思いきや、絵空ごとと得意顔の背景には悲しさが流れている。
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子どもとか、人とか、自分を観察していると思う。
人は悲しいほどに空想に耽るのだと。
空想しない人、現実しか見ない人は強い。
悲しくないのだから。
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大人になれば悲しみなど すべて消えると信じてた頃
悲しい大人もまた、不思議の国で遊んでいる。
このように文字を綴ることも然り。
それを読むことも然り。
たまにはいいよね!