八木節まつり
八木節まつりというものをご存知だろうか。
それは、群馬のとある里山に囲まれた土地で、老いも若きも男も女も踊り乱れるという夜祭。
その異様さは群馬に伝わる数々の逸話のひとつ、『そろいの仕度で八木節音頭』からもうかがい知れ、先人達がこの怪異な文化を後世に伝えようとした意志が感じられる。
そして、その八木節の宴が8月3・4・5日に行われると聞きつけた我らPurveyorsは、潜入を試みた訳である。
これは北関東民の魂を陶酔させる狂乱の宴、桐生祭りの潜入ルポである。
8月4日、その日。
ついにその日がやってきた。
街は平和である。
いや、平和な顔を装っている。
よく見れば漏れ出るエネルギーを隠しきれない若者がそこかしこにいる。
ご覧、父親に抱かれた幼子だけは敏感にその危機を感じ取っている。
舞うブルーインパルス
一足先に航空自衛隊のブルーインパルスが宙を舞う。
快晴の広大なキャンパスに、これまた広大なスモークの模様を描いてゆく。
五輪とは、人体を構成する頭、両手、両足の五体を表すことがある。
そう、この日の夜の狂喜乱舞の暗喩であろう。
一方その頃
Purveyorsも今日はシャッターを上げて、お祭り仕様。
桐生市梅田のcafe restaurant NILSさん、茶の湯の川島 宗鳴さん、軽井沢よりKOKAGEビールさんの出店があり、ZEROGRAMのカラフルなテントも並び、とても華やか。
そして夜はやってくる
時は来た!
煌々と夜を彩る非日常的なやぐらを中心に人々が群がっている。
そしてそのやぐらから、太鼓と笛のチャカポコピーヒャラのお囃子の上におっちゃんの民謡の生唄がのった音楽が永遠と聞こえている。
いや、永遠に続くかと思われたその刹那、突然の無音。
そして数秒後、再びドンチャカ始まる。
うん、これは上がる!
ハウスやトランスに似た繰り返されることによって陶酔していくような高揚感。
そしてこの熱狂の現場は、写真のやぐらだけではない。
通りのそこかしこにやぐらが組まれ、そこかしこでサークルが生まれ、そこかしこで熱狂が起こっているのだ。
夜が明るくなったと言われるようになって久しいが、とはいえここは桐生。
山に囲まれた土地で、永遠と続くお囃子に合わせ、暗闇の中、踊って踊って夜が過ぎてゆく。
そうか、これが「祭」なんだと、僕の中に在るであろう上州魂が震える体験だった。
終わりに
祭にはフェスティバルとカーニバルと、ふた通りある。
フェスティバルはアーティストや出演者がいて、それを見たり聞いたりして楽しむもの。
フジロックフェスティバルが有名ですね。
一方、カーニバルは参加して一緒に楽しむもの。
リオのカーニバルがまさにそれです。
八木節まつりは正真正銘カーニバル。
阿波踊りは十分に知名度があり洗練されているが、八木節はおそらくまだまだだ。
YAGI CARNIVALだと、動物保護団体様から誤解されそうだが、もっとこのストリート感溢れた土着のカーニバルを知ってもらいたいと思う。
そして、阿波踊りの中にある一節の、同じアホなら踊らにゃソンソン、を見習って来年はあの熱狂の渦の中に入ってみようと思う。