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さようなら、どうぞ、末永く、おしあわせに


大学時代、当時ちょっと流行っていたビジネスコンテストのような場所で出会った人たちがいた。

一夏限りのチームだったはずなのに、すぐに意気投合して、とびきり仲良くなって、単位も全部取り終わった最後の1年は毎日みんなで集まるような仲間ができた。

その中でも、とびきり仲良くなった男の子が、1 人いた。こんなに気が合う人に出会えるの!と高揚した出会いだった。彼といると何でも楽しかったし、お笑いなんて興味もなければほとんど見たこともなかったけど彼が教えてくれるお笑いは好きで観た。

いつしか、みんなには内緒でふたりでも過ごすようになって、わたしたちはたくさん旅行に行って、たくさん時間を過ごして、一緒にご飯を作って食べて寝た。

そのうち近づきすぎて、「友達」から「セックスする友達」になった。なんか「付き合う」とかは違うよねって言いながら。

いつだって一緒にいて、「おまえら絶対なんかあるだろー」っていつものメンバーに言われても全部笑ってごまかした。すべてがふたりの秘密。

これが楽だよねなんて口では言いながら、わたしの方は、近づけば近づくほど想いが溢れていった。でも、付き合いたいなんて言わなかった。付き合うなんて形式に囚われなくても、一緒にいたいってお互いが思いあうふたりだからこその関係だって思っていた。

いつしか、今までの関係じゃいられなくなり、仲が良かったふたりだったはずなのに、お互いのことを大切にできなくなって、何年もかけてどんどん仲が悪くなっていった。「ハリネズミのジレンマみたい」と友達に言われたこともあった。近づきすぎると傷つけあってしまって、近づけないことらしい。わたしたちみたいだなぁーと記憶に残っている。

セフレなんて言葉で表すような関係じゃないって思っていたけど、時間が経てばたつほどセフレになっていったのが悲しかった。確かに、大切にしあってたはずなのに。

そうしてわたしたちはその関係を絶った。

わたしは女友達たちには赤裸々に話をしていたけど、彼と共通の友達である大学時代の仲間たちには内緒だったから、何もなかったことにして、そのままみんなで仲良くした。元カレでもなければ、友達でもないふたり。セックスしちゃうベストフレンドとして、わたしの脳は処理して、そのまま仲良しチームを続けた。最初は違和感があったけど、すぐに自然に振る舞えるようになった。何より、大学時代の記憶はわたしにとってかけがえのないもので、そのコミュニティを失う方が100万倍辛かったから。

半年くらい経って、彼に対してはまったく気持はなかったけど、ときたま精神的支えを求めてくる彼と、家でだらだらごはんを食べたりした。彼に彼女ができたり、わたしに彼氏ができてもその関係は続いていた。セックスはしない。ようやくベストフレンドに戻れた気がしていた。


「付き合うことになった!」という報告を受けたのは、ゴロゴロ寝てた日曜日の昼下がり。ラインの相手は、わたしが兼ねてから仲良くしていた女友達だった。ん?ん?だれと?と思っていたら、相手まさかの、はあの彼だったのである。

わたしと彼女は、この5年ちょっとのことを事細かに相談しているくらいの仲だった。最近、彼とその子は、わたしを通じて何回か会った。どうして?

「ああ、そうなの。びっくりした」

咄嗟に返したけど、しばらくして、「価値観が違うから、距離をおくね」と返事をして終わった。わたしが怒る話でもないし、ごめんね、いいよ。の話でもない。でももう仲良くすることはできないと思った。

振り返ると、感情に任せて、こんなあっさり最低かもしれないし、間違ってるかもしれない。

なんでわたしはこんな気分になってるかは言語化できない。でも、なんか、おかしくない?気持ち悪くない?としか思えなかった。わたしのワガママかもしれないけど、そんな、こんなに、近くで。

そのあと彼からも「いろいろごめん、飯行こう」と連絡がきたけど、読まずにそのまま削除した。

「えーおめでとう!結婚式のスピーチわたしかなあ」なんて笑って言えれば、きっと2人を失わずに済む。でも、言えなかった。だから、親友と呼べるような人を一気に2人失うことになってしまった。この歳になって友達を作ることって、とっても難しいのに。でも、彼らが別れたとしても、わたしはもう二度とどちらとも仲良くできない。

そんなことなんてどうでもいいくらいふたりにとっては恋なんだろうけど、なんだか悲しくて泣いた。

何が嫌かも分からないし、何に悲しんでるのかも分からない。でもわたしは、大切にしていたものを失ってしまった。それは親友であり、記憶であり、信頼?わからない。



と、これはただの想い出の記録で、特になんの意味もないし、いつか読み返して、そんな気分だったよねって笑う材料になればいいなと思う。もしかして飲み会で、「わたしの痛い黒歴史みて」なんて言ってゲラゲラnote見せて笑ってるかもしれないよね。うける。

最近、コロナだとか、政治だとか、混沌としている世の中の情報をいったんストップしたくて、Twitterでそれらのワードをミュートにした。

ついでに、彼らの名前や、会社名とかも、ミュートにした。その文字列を見て笑えてきた。総理と、今世紀最大のウイルスに並ぶなんて!驚くくらい、ミュートにしただけでなにも情報は入ってこない。なんだ。あーこんなもんなんだなぁ。


「いっきに2人友達失ったー」と笑いながら言ったら、「2人分の働きしてあげるよー」と笑いながら答えてくれた友達がいた。泣いた。


さようなら、どうぞ、末長く、おしあわせに