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The Cure:16年ぶりのアルバム『Songs of A Lost World』のレビュー
今回は、The Cureの16年ぶりのスタジオ録音アルバム『Songs of A Lost World』のレビューを書きたいと思います。
2008年にリリースされた前作『4:13 Dream』は、当時から「The Cureの最高傑作!」とも称され、プレスからも高評価を受けました。このアルバムは米国ビルボード16位にランクインしました。
今回は、その前作よりもさらに高評価を獲得し、英国チャートNo.1という素晴らしい快挙を成し遂げました。彼らの商業的に最も人気の高いアルバム『Wish』以来、32年ぶりのNo.1でした。
もちろん、素晴らしい結末を夢見ることはあっても、16年ぶりの新作スタジオアルバムが全世界的にトップセールスになるとは私の記憶の中でも前例がないのではと思います。(もしあればごめんなさい)
そしてThe Cure結成後、2度目の英国チャートNo.1という素晴らしい快挙。
各国別では『Wish』は米・英・豪の3カ国でNo.1でしたが、今回の『Songs of A Lost World』はベルギー、仏、独、デンマーク、スウェーデン、スイス、ポルトガル、ポーランド、英、米・豪(ジャンル別)12カ国でのNo.1と、このアルバムは全世界で大ヒットでしたThe Cureのアルバムとなります。
この結果は長年のライブ活動が全世界規模になっていたことからではないかと思います。
このようにハロウィンの翌日に全世界同時発売されたアルバムですが、16年間の時間を費やしただけでなく、大々的なプロモーションや、MLに登録していたファンへの手紙の配送といった細やかなファンサービスも功を奏し、トップに輝きました。
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「ありがとう」
IT IS ENORMOUSLY UPLIFTING, GENUINELY HEARTWARMING TO EXPERIENCE SUCH A WONDERFUL REACTION TO THE RELEASE OF ‘SONGS OF A LOST WORLD’ – TO EVERYONE WHO HAS BOUGHT IT, LISTENED TO IT, LOVED IT, BELIEVED IN US OVER THE YEARS – THANK YOU – X
『SONGS OF A LOST WORLD』のリリースに対してこのような素晴らしい反響をいただけたことは、非常に嬉しく、心から心温まる思いです。このアルバムを購入し、聴いてくださり、愛してくださり、長年私たちを信じてくださっているすべての方々に、心から感謝いたします。ありがとう - X
The Cureの唯一無二のフロントマンであり、今回はボーカル、ギター、6弦ベース、キーボード、作詞作曲、編曲、制作、ミキシング、レコーディングアシスタント、スリーブコンセプト、石の写真まで担当したRobert Smithは語っています。
「今回のアルバムのテーマは「喪失、孤立、無常、そして死のテーマ」が含まれている」
正直なところ、今回のアルバムを発表するとは夢にも思いませんでした。2008年以降のThe Cureの活動を振り返ると、新しいスタジオアルバムにこだわるバンドではないという感覚でした。
プロモーションをして、アルバムを出してツアーをし、各メディアからインタビューを受けたり、ファンサをしたりというイメージは長らくなく、とはいえ、16年間には多くのメジャーフェスに出演し、過去のカタログのアルバム全曲ツアーや再現ツアーなど、演奏・ライブを中心とした活動がとても活発だったからです。
Robert本人も、特にここ10年ほどのライブ・ツアーを続けたことはバンド活動の中でとても「よかったこと」とし、この10年で過去30年を取り消すほどの充実した活動だったと振り返って語っています。
このことからもわかるように、私も世界のどこかでThe Cureが演奏していることが、長年のファンとして安心感や心の支えとなっており、まさに「これがThe Cureだ」と感じていました。また多くのミュージシャン、バンドとのコラボも頻繁にあったことからも、特にという印象もありました。
またこの間、2013年と2019年にはFuji Rock Festivalでヘッドライナーとして日本で演奏し、これまでの「日本のトラウマ」を払拭する長時間のライブ演奏も行いました。※2019年はSimon Gallupの緊急不参加により、息子のEdenが代役を務めました。Edenは1992年頃からSimonの代役を務めていました。
『Songs of A Lost World』は全8曲、約50分の収録で、2019年にリリースが予定されていたため、2019年には全ての録音が完了していたとのことです。
"Alone"
この曲を聴いた時、少々驚いたのは、これまでのThe Cureとは少し異なるアプローチを感じたことです。音が整理されており、荘厳で広がりのある、淡々とした世界観がありました。初期のモノトーンな音楽とは違い、無機質でもなく、暖かさも感じます。プロモーション映像で石がゆっくり回転する映像が流れますが、まさにこの曲にぴったりです。
夜中に一人で漠然と先のことや、生きることなどを考えるのにちょうどいい曲のように感じました。
The Cure - Alone (Official Lyric Video)
"And Nothing Is Forever"
この曲は、何かのセレモニーの時に流すのにピッタリな曲という感じがしました。既に、8曲中の2曲が今までない神妙で神秘的な音を持っていますが、はっきり言って心地よく聞こえ、今までのThe Cureのアクの強さや誇張されていた特徴が抑えられており、苦手に思っていた人でも聞きやすいのではないかと思える楽曲が続きます。
ちょうど寝る時にいいかなという、寝落ちサウンド(おいおい)。
この曲についてRobert本人が解説していますが、読むとRobertちょっと可愛いですね。睦まじいええ話やないですか ε-(´∀`*)ホッ
愛する人と交わした約束がヒントになっている。その約束は、「あなたが死ぬ時はそばにいるよ」というものだった。この曲は、必ず訪れる死という運命を受け入れることについて歌っている。そしてまた、ひとりぼっちのまま死ぬことに対するおぞましいほどの恐怖感についても歌っている。
"A Fragile Thing"
3曲目もイントロからピアノの単音、アルペジオで始まりますが、以前のThe Cureならば、もっと強弱をはっきりさせ、弾けた感じの即興性の高いジャズ的からの音が多く見受けられましたが、今回はオーケストラで演奏しそうなスタイルの曲という感じです。
また昨日(11月29日)に『Songs of A Lost World』から、「A Fragile Thing」をRobert自身による2024年版ニュー・リミックスの「A Fragile Thing (RS24 Remix)」、Radio Edit、Live Troxy London(MMXXIV)からのライブ・バージョンの3曲が配信リリースされました。※こちらから選べます(https://x.gd/66aEY)
「A Fragile Thing (RS24 Remix)」は、7インチビニール盤はホワイトカラーで11月11日にリリースされ、B面も「RS24 Remix」というカップリングでしたが、こちらもRobert自身によるリミックス2曲を収録した限定リリースです。
A Fragile Thing (Radio Edit)
"Warsong"
日本語にすると(戦争の歌)となりますが、歪んだギターの音がやっと聞こえてきて、これからがあのThe Cureなんじゃないかというくらい、長く長い演奏が続きます。ザクザクと音をつんざく、破壊的なギターの音が戦場で叫ぶ声にも聞こえ、地面は揺れ、破壊されるようです。
Robertは新作のために、無常や私を考え、このような曲のインスピレーションをメディアなどから得たのでしょうか。
新たな年が訪れるたびに、新たな戦争が起こる……。
これほど多くの人が戦って戦って戦いまくるように突き動かされているが、いったいその理由は何なのか。それは簡単には理解できないのではないだろうか。人間とは所詮はそういうものだ……というのでない限りは。
"Drone:Nodrone"
この曲はキャッチーなアップテンポの曲で、間奏前には破天荒に、ギターソロはパワフルにワウを何度も押し返し続けるようです。
Robertは「自分の家の裏手をうろうろしていたとき、僕の頭上にカメラ付きドローンが飛んできた……」当然、誰もがそんなことがあればイラッとするでしょう。侵入・監視という身の毛がよだつ「現代世界」と奇妙な折り合いをつけようとする奇妙な試み、「そんな”奇妙な難しさ”をヒントに生まれた作品だ」と語っています。
「現実を受け入れることはもっと奇妙なほど難しく……僕にとっては、混沌と縁を切ることがひどく難しい。この曲はそういうことについて歌っている!」
Robertが「In Between Days」のように、頭をフリフリしながら「信じられない!」とオーバーアクションをしたかどうかは分かりません。
"I Can Never Say Goodbye"
この曲は、Robertの実兄であるRichardの予期せぬ死がテーマであるそうです。Robertは音楽一家としても知られていますが、兄Richardとは年齢が離れていたこともあり、ギターを耳コピするためにレコードのコレクションを聞いたり、ギターを貸してもらったり、プレゼントをしてもらうという微笑ましい兄弟のエピソードもあり、兄RichardはRobertの理解者でもあったようにも感じられます。
コンサート・ツアー”Shows Of A Lost World”では、歌うのがとても難しい曲だったけれども、いつも素晴らしい出来映えになった。この「I CAN NEVER SAY GOODBYE」をステージで演奏することが、自分の悲しみと折り合いをつける上で役に立った。兄がいないってことが寂しくてたまらない。
The Cure - I Can Never Say Goodbye (6 Music Live Session)
"All I Ever Am"
この曲は私が思うに「Robertの存在哲学の曲」とでも言いましょうか、Robert自身の解説を読んで、まるでデカルトの「我思う、故に我あり」といった言葉をテーマから想起してしまいました。いやそれよりも、Robertは自分がなぜここに存在し、若い時の自分から今の自分がどのように確立されてきたのかについて考えています。解説でも永続性が魅力的なテーマとしてループしているようです。
哲学的な内容なのでしょうが、永続性をドラムパターンやギターのエフェクトで繰り返し、繰り返し表現し、気の遠くなるような永遠の時間の積み重ねを感じさせる曲だと思いました。
なぜなら自分は、自分の記憶の集合体だからだ。とはいうものの、自分の記憶そのものが今の自分のせいで変化しつつある……。僕は前からずっと、「時を経ても存在する」ということの永続性を魅力的なテーマだと感じてきた……のだろうか?!!
"Endsong"
最後の曲は(終わりの曲)です。きっとこのアルバムは、夜中に聴いていると染みいる深い曲が多いアルバムだと思います。この曲はとても綺麗なギターの旋律が聴けます。「Warsong」や「Drone:Nodrone」とは全く違う音です。Robertが幼い頃に見た月は今も同じ月に見えるけれど、取り巻く世界は時間と共に変化し、そして自分も同じRobertではあるものの、あの時とは違うと感じるのでしょう。
最近、SNSで幼少の頃に読んだ学習絵本のシリーズの投稿を発見し懐かしく思いました。子供だった私は絵本に描かれた未来を夢み、世界はキラキラしたものと思っていました。しかし、現代ではSNSやネット、便利になったものの、心無い言葉の攻撃などから起きる許されない問題。
人類の月面到達から50周年目だった。あの年の夏は外に度々出て、空を見上げ、過去を振り返り、時間の経過を悲しみ、どんどん壊れゆく世界で老いていった。
外に出て月を見上げる時、今の僕は10歳の頃とほぼ同じように見上げている。けれど自分の足下にある世界はかつての世界と同じではないとわかっているし、自分もかつての自分と同じではないとわかっている。こういう認識は僕にとっては苦しみだし、こういう認識は今も変わらない月面のせいでさらにひどいものになっている。そばには何もなく、ひとりぼっちだ。
Robertの解説の最後の言葉「ひとりぼっちだ」から再びアルバムの「Alone」に戻り、無限に輪廻転生のように聴き返すことになる、何度も聴けるアルバムということです。今回の私的アルバムレビューはこれで終わります。
引用したRobert本人からの全曲解説は以下のリンク先になります。気になる方は読んでみてください。
11月1日、つまりハロウィンの翌日であり、『Songs of A Lost World』のリリース日に、For the Free Global Live StreamをYouTubeで行いました。この素敵なパーティには世界中の
のファンが集結し、3時間にも及ぶ圧巻のライブとなりました。このライブを私も当日に視聴しました。
THE CURE :: SONGS OF A LOST WORLD :: FULL LIVE STREAM
SETLIST
-------- SONGS OF A LOST WORLD
Alone
And Nothing Is Forever
A Fragile thing
Warsong
Drone:Nodrone
I Can Never Say Goodbye
All I Ever Am
Endsong
--------INTERMISSION
Plainsong
Pictures Of You
High
Lovesong
Burn
Fascination Street
A Night Like This
Push
Inbetween Days
Just Like Heaven
From The Edge Of The Deep Green Sea
Disintegration
-------- ENCORE 1(Seventeen Seconds 45th Anniversary)
At Night
M
Secrets
Play For Today
A Forest
-------- ENCORE 2
Lullaby
The Walk
Friday I'm In Love
Close To Me
Why Can't I Be You?
Boys Don't Cry
最後に情報として、The Cure公式からのメーリングリストに、今回のライブが行われたTroxyの「More Exciting Troxy News This Sunday」というニュースがあるそうです。
次回の予定は、Smashing Pumpkins、Manics、Aerosmith、Roxy Music、The Smiths、Johnny Marrのどれか、もしくはその他を取り上げる予定です。
さらに、Kula Shakerの「日本に戻って来て!」キャンペーンも続けます。
Sloanは『Smeared』の全曲演奏ライブを行っていたので、機会があれば続報を書きます。
メタル、パンクについても書こうと思っています。ランキングや、アルバム1枚、楽曲1曲を毎日投稿するという野望もあります。この先もまだまだ続きます。
最後に、メンバーシップも始めています。
ご清聴ありがとうございました!
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