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わたしは浴室の天才説

お風呂は、私にとってアイディアの泉。湯船に浸かっていると、不思議と頭が冴えてくる。ふとした瞬間に「あっ、これいいかも!」と、ちょっとした企画や言葉のフレーズが浮かぶのだ。

しかし、お風呂の中にはメモ帳もペンもない。スマホを持ち込むのも気が引ける。だから私は、「これは絶対忘れないぞ!」と、心の中で何度も繰り返す。でも、お風呂を出て体を拭き、髪を乾かしているうちに……「えっと、何を思いついたんだっけ?」となる。

湯気とともに、せっかくのアイディアもモクモク〜っとどこかへ消えてしまうのだ。

なんとか思い出そうと、さっきの湯船の中の姿勢を再現してみたり、「たしか、何か面白いことを思いついたはず……」と手がかりを探したりする。けれど、大抵の場合、何も出てこない。頭の片隅にかすかに残った感覚だけが、「すごく良いアイディアだった気がするよ?」と囁いてくる。

そんなことを何度も繰り返して、私はとうとう諦めることにした。「お風呂の中のアイディアは、お風呂専用。外には持ち出せないのかもしれない」と。

そう思うと、ちょっと気が楽になった。アイディアを忘れてしまっても、それはそれでいい。たぶん、また似たようなものが浮かぶだろうし、もし本当に大事なものなら、ちゃんと戻ってきてくれる。

今日もまた、私はお風呂の中で「これはすごいぞ!」と思いついた。でも、きっとお風呂を出たら忘れてしまう。それでもまあ、お湯の中に広がったアイディアは、いつか別の形でふわっと戻ってくるかもしれない。

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プーロトロト
現実から離れたものがたりの世界へ。