【note版】かけ持ち聖人「聖アンドリュー」
イギリスを構成する4つの地域(country)には、それぞれ守護聖人とその記念日が以下のようにあります。
・イングランド:聖ジョージ 記念日:4月23日
・スコットランド:聖アンデレ 記念日:11月30日
・北アイルランド:聖パトリック 記念日:3月17日
・ウェールズ:聖デービッド 記念日:3月1日
今日は11月30日なので、スコットランドの「聖アンドリュー(アンデレ)・デー(St Andrew’s Day)」についてお伝えします。
※以下は他媒体に掲載中の記事から転載(自著)した、過去のものです。noteには私の個人的な記録として一部割愛、再編集(くだけた文調や写真のキャプション、絵文字など)したものをお届けします。フルバージョンの原文はこちらをご参照ください(2021年11月22日執筆分)。
スコットランドだけじゃない「聖アンドリュー」
聖アンドリューは、イエス・キリストの12使徒のひとりでスコットランドの守護聖人ですが、ほかの聖人にもありがちな「かけ持ち聖人(筆者命名)」でもあります。
つまり、キリスト教を信奉する国はイギリス以外にもあるので、ほかの国や地域の守護聖人であることが多いのです。聖アンドリューもご多分にもれず、ほかにルーマニアやギリシャ、ロシア、ウクライナ、ポーランドといった国でも守護聖人として崇められています。
スコットランドの守護聖人ではあるが、スコットランドに足を踏み入れたことがない外国人、という点でもイングランドの聖ジョージと共通しています。
生い立ちについてははっきりせず、紀元5(5AD)〜10世紀(10AD)という幅のある期間に、現在のイスラエルである土地で生まれたのでは、と言われています。
スコットランド旗との関係性
兄弟ペトロと共に漁師として生計を立てていた頃、イエスに声をかけられ弟子入りしたというアンドリューが、どのようにしてスコットランドと関係ができたかについては諸説ありますが、英メディアのBBCがウェブサイト上で紹介しているもののひとつに、以下のようなものがあります。
9世紀、イングランドとの戦いに備えていた当時のスコットランド王、アンガスの下にある日、聖アンドリューが夢枕に現れ勝利を約束しました。
戦当日にはアンドリューのシンボルである「X」の形が空に浮かび上がり、王はもしこの戦に勝ったら聖アンドリューをスコットランドの守護聖人に据えよう、と誓いました。
結果はすべてそのとおりとなり、1320年、聖アンドリューは正式にスコットランドの守護聖人と定められました(参照:“St Andrew's Day: Everything you need to know” BBC Nov 2020.)。X形の十字は「セント・アンドリュー・クロス」と呼ばれ、のちにスコットランドの旗として採用されました。
当日の祝い方
スコットランドでは普段からこの「セント・アンドリュー・クロス」があちこちで掲げられていますが、この記念日にはさらに多くの旗があげられることでしょう。
ほかの地域の記念日が休日ではないにもかかわらず、聖アンドリュー・デーはスコットランドで祝日扱いになります。さぞかし盛大に祝うのかと思いきや、祝い始めたのは18世紀からとさほど古い慣習ではないことや、もともとは海外の在米スコットランド人が故郷を懐かしみ始めたものだということもあり、現地では詩人のロバート・バーンズをたたえるバーンズ・ナイト(関連記事)や新年の祝いの方が盛んだとか。
祝日も法的な効力はないので、普段どおりに出勤する人もいるそうです。とはいえ当日はゲール語でケイリー(ceilidh)という名前のダンスパーティーをしたり、カレン・スキンク(cullen skink)というタラや芋などが入った具沢山のクリームシチューのような郷土料理に舌鼓を打ったりして楽しむ人もいるようです。
わが子が所属するボーイスカウト(関連記事)では、スコットランドにちなんだ食べ物として、バーンズ・ナイトでも食すハギスにショートブレッド、タブレット(tablet)というキャラメル(ファッジ)のようなキャンディ、そしてIrn-Bruというブランドのご当地オレンジジュースでパーティーが開かれました。
スコットランドにはゴルフ発祥の地としても知られる、セント・アンドリュース(St Andrews)という町や、スコットランド最古の大学セント・アンドリュース大学など聖アンドリューの名を冠したものが多くあります。
聖アンドリューの面影を探しに、いつかスコットランドにまで足を伸ばしてみてはいかがでしょう。