あなたの英語はネイティブ何歳レベル?vol.14 <イギリス小3で学ぶ「黒人歴史月間」>
わが子が通うイギリスの現地校、小3時(Year 4という名称の学年)の課題プリントにある日、「Black History Month(黒人歴史月間)」という見慣れぬ文字を見つけました。1915年に始まったこの記念行事はまたの名を
といい、黒人への人種差別が特にひどかったアメリカで生まれたものです。
黒人歴史月間の成り立ち
1976年からは米大統領により、毎年2月を黒人歴史月間にすると正式に指定されましたが、その起源については自身もアフリカ系米国人で、ハーバード大学の歴史家だったカーター・G ・ウッドソン(Carter G. Woodson)博士による功績が大きいです。
博士は人種偏見の弊害を明らかにするだけでなく、アメリカをはじめ世界中のアフリカにルーツを持つ黒人による、さまざまな貢献をたたえることも目的として1926年に
を提唱しました。この週間が月間に延長され、今日まで広く浸透するようになりました(参照:History.com Editors “Black History Month” History 2021)。ちなみに、2月となった理由は奴隷解放宣言によって奴隷を解放した、第16代米大統領のエイブラハム・リンカーンと、元奴隷で奴隷制度廃止論を唱えて積極的に活動を展開したフレデリック・ダグラスの誕生月だからです。
イギリスでの黒人歴史月間
イギリスの民族構成は2019年統計で白人が84.8%と圧倒的多数ですが、そのほかにもアジア系が2番手で8%、黒人系は次に多い3.5%(出典:“Population of England and Wales by ethnicity” GOV.UK 2021)ほどいます。
この黒人歴史月間を正式に祝う国はほかに、カナダとイギリスだそうです。
小学校で教えられる黒人活動家:ローザ・パークス
わが子が家で見ていた課題用の音声ビデオになにげなく耳を傾けていると、どうやらバス車内での白人と黒人のやりとりのよう。その昔、アメリカではトイレやバスの席などが白人とそのほかの人種では区別されていたという話を、そういえば耳にしたことがあります。
けれど日本で生まれ育った私には、あくまでもその程度の知識しかありません。それをアメリカやイギリスではこうして明確に、過去に黒人がどのように世間から扱われてきたかということを、授業で(わが子の学校のことしか知らないので、もちろんすべての学校ではないと思います)はっきりと教えています。
今回の教材で取り上げられていたのは、もともとは一市民に過ぎなかった黒人女性、ローザ・パークス(Rosa Parks)についてでした。1955年の12月1日、彼女はバス車内で白人の乗客に席を譲らなかったという理由で逮捕、罰金を課されました。当時、白人と黒人が座る席は明確に分けられており、パークスさんがとった行動は規則違反でした。
市民が政府を動かすまで:デモ運動
パークスさん逮捕に異議を唱えた人々はバス利用の拒否をし、代わりに歩いたり自転車を使ったりしてバスのボイコット運動を始めました。381日間も続いたこの運動はバス会社に多大な経済的損失を与え、ついに政府も動かざるを得なくなります。
このような人種による差別は数あるうちのひとつに過ぎませんでしたが、とりあえずはこの運動以降、バス車内では誰でも好きな席に座ることが許されました。この大きな運動のキッカケとなった、小さな抗議の主であるローザ・パークスは、のちに「公民権運動の母」と呼ばれるようになります。
アメリカのいくつかの州では、パークスさんが逮捕された12月1日と誕生日である2月4日は
として祝日となっています。
わが子の課題が出されたのも2月4日でしたが、これで納得がいきました。日本でもしこういったテーマが取り上げられたとしても、どこか遠い世界の話、という感じが否めずピンとこなかったかもしれませんが、いまのわが子が通う学校ですと生徒のなかには黒人もいるので、いったい彼らはどういった気持ちでこの話を聞いているのだろう、と気になりました。
日本を含め、どの国にも直視したくない過去の過ちや出来事があるはずですが、この授業のように事実を伝え教訓にさせることはとても大切だと思います。
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