【note版】イギリスの花園ラグビー場?ラグビーの聖地「トゥイッケナム・スタジアム」
ラグビーといえば大学が関東だったので、もっぱら秩父宮や国立競技場ばかり行っていました。ちょうどこの日曜はまた、伝統校の対戦があるようで・・なになに・・
100回目の対決?今年は負けなしで調子がよい?
・・たまたま今日はこのお題にしようとしただけなのに、なんだか急に試合の行方が気になってきました・・。
日本でラグビーの聖地といえば大阪の花園ですが、イギリスではロンドン郊外にある「トゥイッケナム・スタジアム(Twickenham Stadium)」だと言われています。2022年の11月17日に、日本代表の試合(the Autumn Nation Series)があったので見てきました。
ラグビーゆかりの地
イギリス発祥のスポーツは数多くありますが、ラグビーもそのひとつ。その名も、ラグビー市という町がイングランド中部のウォーリックシャーにあり、ラグビーとはそこの名門私立校の生徒が、サッカーの試合中に手でボールを持って走ってしまったことにちなんでいると言われています。
ですが、“ラグビー聖地”と呼ばれているのは、イングランド代表のホームスタジアムがあるトゥイッケナムの方です。
1909年に初試合が開かれた同スタジアムの収容人数は82000人。東京の秩父宮ラグビー場のそれは27188人なので、かなり大規模であることがわかります。日英(イングランド)戦のこの日も来場者数は81087人で、観客席の空きはほとんどありませんでした。
スタジアムまでの道のり
試合当日、最寄駅のトゥイッケナム駅に降り立つと、通りは立ち並ぶ警察官に封鎖され、歩行者天国になっていました。
スタジアムまでは住宅街を通り抜けて15分ほど。世界各国の屋台料理がズラリと並び、おいしそうな匂いに包まれています。
イングランドと日本の両方の旗やマフラー、応援グッズやシャツなどが売られている出店もあり、日の丸があちこちではためく様は不思議な光景でした。
フェイスペイントをし旗をマントがわりに羽織った人、時期柄戦没者追悼シンボルのポピー(関連記事)のかぶり物をしている人、14時半からすでにビール片手に大声で歌い盛り上がっている団体などさまざまな人たちがいて、とてもにぎやかです。
入場手続き
スタジアムすぐ横のマリオット・ホテル、ラグビー博物館などを抜けていよいよ入場ゲートに到着です。ここでチケットを提示するのですが、頭上の「A4サイズ以上の手荷物は持ち込み不可」と、リュックサックの絵にもバツ印がついた看板を見て内心焦りました。
どうりで周りにはほぼ手ぶらで身軽な人が多いわけだ、皆手慣れているな、とますます冷や汗をかくことに。
その一方で、明らかに規定外の鞄を持ち、チェック後そのまま通してもらっている人も目にしたので、かすかな希望を持って荷物検査の列に並びました。すると案の定、普通サイズのものであればリュックタイプの荷物でも問題なく、ホッ・・。
試合開始、キックオフ
トイレはどこも長蛇の列。いったん席についてしまうと行くのは困難なことが目に見えているので先に済ませると、場外同様ひしめく屋台と観客で芋洗い状態だったのが嘘かのように、閑散としていました。
それもそのはず、イギリスの国家が聞こえたと思いきや、ときはすでにちょうど試合開始時刻の15:15でした。君が代はないの?と思いましたが、あったとしてもほかの日本人歌手による歌や選手入場、黙とう時間などもろもろの催事はことごとく見逃してしまったようです。
入場は3時間ほど前から可能とのことなので、試合前の余興もタップリ楽しみたい方は早めの到着がよいでしょう。
紳士的なサポーター
今回の観覧席は最上階で、たどり着くまでビル10階分ほどの階段をノンストップで登ったかのようなハードさ。太ももがピクピク、息はゼイゼイと想定外のキツさでした。
ラグビーはゴルフと並んで“紳士のスポーツ”と称されますが、この日はまさにそれを実感!サポーターの秩序ある態度、対戦相手サイドへの優しさを間の当たりにしました。
小さいながらも日の丸国旗などを持って、それも遅れて入ってきたわれわれにもあちこちで道を開けてくれたり(試合後もわざわざ!)微笑んでくれたりと、温かさを終始感じました。
あいにく開始早々点を取られ、その後も取られ続けてしまった日本代表ですが、そのときもこちらに向かって盛んに親指を立てて「楽しんでるか〜い?イイだろ?」のような、嫌味でない心配りをしてくれます。
しかも、着席早々隣の観客がわざわざ家族全員の写真を自ら撮ると申し出てくれ、想定外に貴重な1枚をゲットしました。いわく、「僕はスコットランド人だから(試合中に関することなど)なにも気にしないから」などと言ってくれました。や、優しい・・🥹
イギリス式観戦方法
そんなありがたい申し出や気遣いを周りの観客からいただき、気持ちよく観ることができたのですが、同時に「アウェイで観戦することの難しさ」にも気づきました。
まずは、会場に歓声が渦巻くとき=日本が劣勢のときであり、逆のときにこちらが拳を挙げたり声を出すと、実際には誰も気にしていないはずですが、やはりこちらとしては、その真逆の行動パターンに違和感を覚えます。
はじめは大きな日の丸国旗が壁に貼られている観客席を目印に、「あ、あそこに仲間が!」と励みにしていたのですが、なんと、前半が終わらぬうちに彼らは早々にその国旗を下ろしてしまい・・帰ってしまったのでしょうか?!ショック😱
自然発生的に、どこからともなく湧き起きるイングランド代表の応援歌「スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット(Swing Low, Sweet Chariot)」の渦には、飲み込まれるような圧力があり、選手たちのプレッシャーはいかほどのものなのか、とつい心配してしまいます。
1986年のワールドカップ、メキシコ大会から始まったといわれる“メキシカン・ウェーブ”は、観客が順に立ち上がって波を立てる動作ですが、波の真ん中にいた日本人は当然立ち上がらず、居心地が悪そうでした。
波のあとにはブーイングとセットになっており、対戦相手や観客のためかスタジアムで売られていた公式パンフレットには、トゥイッケナム・スタジアムではこのメキシカン・ウェーブを控えてほしい旨、記載されていました(出典:Gillingham, N. (2022) Autumn Nations Series England V Japan (12 November 2022): Respect and Sportsmanship at Twickenham. Liverpool: The PPL Group, p.7.)。
また、得点が入ると両チームともに音楽が流れるのですが、日本が入ったときはどうしても?申し訳程度ですぐに音が消されてしまう気がして、なかなか余韻に浸れないどころか、得点したことすらすぐには気づかないありさま。
ひるがえってイングランド側は得点が入ると踊り出す人が多いので、そのうちイングランドが入ったときでも、私も密かに楽しむようになりました。
進化した日本チームの呼び名
2022年11月現在、男子ラグビーの世界ランキングでイングランドは5位、日本は10位(出典:World Rugby[“WORLD RANKINGS: ALL BLACKS CLIMB ABOVE BOKS AND PUMAS RISE”]Rugby365, Nov, 2022.)についているように、もともとイングランドは、日本にとって高嶺の花ともいえる強敵でした。
1971年の大阪で初めて対戦して以来今日まで7回(ほかの参照ウェブサイトでは9回とありました)、ただの1度も勝ったことがありません(出典:Griffiths, J. (2022) Autumn Nations Series England V Japan (12 November 2022): Wins since first match in 1971. Liverpool: The PPL Group, p. 63.)。
今回も残念ながら太刀打ちできませんでしたが、周知のとおり近年日本ラグビーのレベルは目覚ましいほど上がってきています。
記憶に新しいところでは、2015年のワールドカップで南アフリカ代表を破る快挙、自国開催での2019年は当時世界ランク2位のアイルランドを破るという、史上最大級の番狂わせを演じました。
このような頑張りを讃えるため、もともと桜のロゴにちなんで“チェリー・ブロッサムズ”と海外のメディアには呼ばれていたものが、2003年のワールドカップの対スコットランド戦で魅せた善戦以来
という新たな呼称が生まれました。
聞いた話ですが、スポーツ好きが多いイギリス人はこういう話や展開が大好きなようで、このような熱き戦いがあったあとは、日本でもイギリスでも、「日本人か?よくやった、すばらしい!」と声をかけてきたり、パブで1杯振る舞ったりする人もいるようです。
今回イギリス人サポーターが終始おしなべて優しかったのは、日本が残念な結果に終わってしまったからではなく、純粋にスポーツマンシップに則ったものだったのだと心から思えました。
なお、帰りは想定していたとおり、駅にたどり着くまできっかり1時間かかりました。だから早々に、会場をあとにする観客もいたわけですね・・。