わだかまり
エアコンの音がうるさく聞こえるぐらいには
日常に意識を向けた時
非日常的に聞こえてきた
外の世界の蝉の声
今年は風鈴の音(ね)があまり聞こえず
少し
寂しい
風鈴の音(ね)はなぜ
あんなにも
澄んだ清らかな音がするのだろう
一点の曇りもなく
風にたゆたう
一筋の音(ね)
こんな季節だったか
何十年も昔に
一冊の本を繰り返し繰り返し
読み耽(ふけ)っていた
【7つの子】
知らない作家さんの本だった
表紙の男の子と女の子の後ろ姿の絵が
とてもよかった
夏の景色の表紙だった
内容もとても面白く
その一冊でファンになり
その人の小説を集めまくった
当時
1番大好きな作家さんだった
7つの子
真夏に食べ始める
カキ氷の薄い氷のような
どこかに儚さを秘めた
そんな本だった
その時代にあった本がある
その時代
その当時
その時に読むべき
本がある
その本はまさしく
それだった
押し入れに棚を作り
何段も本を並べて置いていた
その本達は今は手元に残ってはいないけれど
7つの子の小さな文庫本は
まだ残してある
今はもう手に取り読むことはしないけれど
その本は
今もまだ
私の手元に残してある
そんな本
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