大切な人との約束

去年の二月。僕の大切な大好きなおじいがこの世から去った。

90才だった。いわゆる大往生だ。


子供の頃からおじいちゃん子だった。何をするにもおじいのあとを追い、記憶の限りでは、本当におじいに怒られた記憶がない。


口癖は、


『人に好かれる人間になれ』

『人がよく来る家にしないとあかん』だった。


おじいは人から本当に愛されていた。おじいは野菜作りが得意で、畑をいじっていると、近所のおじいさん達がよくおじいのところに集まってきていた。


とにかく元気な人だった。僕が大阪で生活していたときも、何ヵ月に一度は原付で地元のバス停までいき、そこから高速バスを乗り継ぎ大阪までよく遊びにきていた。


大阪城へ行ったり、嵐山へ行ったり。。。いろんなところへよく一緒に行ったものだ。


おじいが亡くなってから、近所のおばさんから聞いた話、よく大阪に来る前の日に、

『明日孫のとこにいってくる!』とか、

帰ってきたら手土産もって、

『今日は○○いってきた』とか、僕と過ごした話をよくしにきていたそうだ。


僕の中で、まさかあのスーパーおじいと別れる日がくるなんて思っても見なかった。。。


おじいは生前よく、


『お前が接骨院開業したらお祝いしたるからな!!』とか、

『お前の接骨院の一番の患者になったるからな!!』とかよくいっていた。。。


そのときは軽くありがとうと聞く程度だった。


大阪にいるときもたまに、


『開業したら言うてこいよ!!』ってよく言われていた。おそらく誰よりも僕の独立を待ちわびていたのだろう。。。


そんな、スーパーおじいが弱り出したのはバイク事故で大腿骨骨折をしてから。。。


いつもみたいに大阪に来たときにその弱りようといったら一目瞭然だった。


歩くスピードは極度にゆっくりになり、大阪へ来ても駅周辺でしか過ごせなくたった。。。


今思えば、それでもよく大阪にきてくれていたとおもう。。。


そこからのおじいはものすごい勢いで弱っていった。。。


数日に一回、電話してきて

『元気しとるこぉー??』

『風邪引いてないこぉー?』

『体だけはきをつけーよ!!』

『また大阪呼んでくれーの!!』


これの繰り返し。


そんな僕も長女の小学校の入学にあわせ、長年過ごした大阪を離れ地元に帰省することに。。。


帰省して、今のデイサービスに勤めだし。


そのころにはほぼ毎日電話してきて、

『元気しとるこぉ?』


時には夜中に、留守番電話もはいるようになり。。。


時には、留守番電話越しに

『こいつ、電話にでやがれへん。別に何かしてくれなんて頼まへんのに!!』

『電話くらいでてくれ!!』


夜中であろうが、平日の仕事中であろうが。。そんな留守番電話が入り出した。


すぐにピンときた。認知症だ。。。


僕はすぐに親父に連絡して、


『おじい、認知症なりよるで!!』


最初は、そりゃ、90近くなれば少しづつおかしなこと言うわくらいだったと思う。


僕も地元に帰省して、近くになればなるほど自分から連絡する機会は減り、なかなか日中おじいに会いにいく機会もなく、月日だけが過ぎていった。


ある日、父親から電話があり、病院におじいの見舞いに行くように連絡がはいった。

その時に同時にもう長くないことを告げられた。。。


もともと前立腺癌の治療をしていたのは知っていた。でも、癌で死ぬか、寿命で死ぬかというくらいの状態ときいていた。


しかし、結局癌が骨転移し、神経を圧迫し歩けなくなってしまった。頑丈だったおじいの体はみるみるうちに痩せ、太かった足は僕の二の腕より痩せ細っていた。。。


おまけに見舞いに行くと、僕の事を別の親戚の人と間違い。。。認知症もどんどん進行していった。


そのころから時間があればしょっちゅう見舞いにいき、

『おじいどないや?』と聞くと、

『大分、リハビリして歩けるようになったからもう少ししたら退院できるからな!!』って。


溢れ出しそうな涙をぐっとこられ、僕はただただ、

『そうか、そうか!!よく頑張ってるな!退院したらどっかあそびにいこな!!』

とだけ答えた。。。


僕も医療従事者として長年やって来て、おじいの足を触れば歩けないことなんて容易に想像できた。


いつも帰り際にナースステーションによって看護師さんにおじいの様子を聞くと、だんだんリハビリもできなくなってきているとの報告がかえってきた。

それに加え、

『おじいさんは本当にやさしくて、看護師や同じ部屋の人のことをいつも気にかけてくださって、ほんとうにやさしいおじいさんですね。』と付け加えてくれる。


最後の最後まで、人として一番大切な、僕にいってくれた


『人に好かれる人間になれ!』


ということを自ら実践していることにすごく誇りに思えた。。。


僕がカッコ悪い生き方からカッコいい生き方に変えること、チャレンジするということはおじいとの果たせなかった約束を果たすことでもある。


『人に好かれる人間になれ!』


僕の中で、


人に好かれる人間とは


いつも何に対しても一生懸命


いつも前向きにイキイキしている


いつも挑戦している


失敗してもあきらめない


目の前の人のために全力で何かをしようとしている


イコール、カッコいい生き方をしていきたい。おじいとの約束を果たすために。。。










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