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のすたるじあ【おとなのためのSFファンタジー #7】

ようこそ!
こちらは「おとなのための、創作小説」です。
ほんのひととき、
ちょっぴり不思議な世界を
お楽しみください。

今回のおはなしは
『のすたるじあ』
です。

では、いってらっしゃいませ。

***** ***** *****

のすたるじあ


 低緯度オーロラに街が覆われた日、わたしは強い郷愁を覚えた。
目の前で展開する、紅や薄桃色、緑や黄色のうねり。ほの赤い明け方の空に、流れるように踊る色とりどりの光。
 確かに、いつか、どこかで、同じような光景をわたしは見たのだ―。いつか、どこかで…。
記憶を探ろうとしても、回想の中にその光景はいまだに現れてこない。とても小さな頃だった?それとも、もっともっと前?「ここに来る前の記憶」が、この光景を知っている…?

 その頃のわたしは不確かだった。自己の存在が、あまりにも不安定だったのだ。確実性のない、わたしという存在。不安ということばでは表しきれないほどの違和感。なぜ、わたしは、いま、ここにいる?何のため?そして、誰のため?
 そんなことばかりが頭の中を巡っていた。そのせいか、現実であるはずの世界が、すべて仕組まれたお芝居のように思えるようになっていた。そしてわたしは、何の特徴もない、通りすがりのエキストラを演じさせられていた…。
 「…大規模な太陽フレアが発生し…GPS機能などに影響が出る恐れ…」どこからか流れてくるニュースも、この壮大なお芝居の中の、台本通りの台詞だ。だから別段あわてる必要もない。きっと、このお芝居はエンディングが近いのだ。だからここへ来て物事が大きく動こうとしている。

 それにしてもわたしは、相変わらず宙ぶらりんだった。ある意味、この大地に根差したものには味わえない浮遊感を得られている。心地良さもあり、不安でもあった。しかしきっといつか、自分の還るべきところが分かるのだろう。だとすれば、それまでの不自由を遊んでみたい―そんな気持ちがいつしか芽生えていた。不確かな自分であるうちに、その不条理さを味わい尽くしてみたかった。

 ちょうどその頃、わたしの住む街に低緯度オーロラが発生したのだった。

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