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機甲シン・ゼロ 第六話

まえのおはなし

「おいおい、それがウチのF-22より強いだって?」
 携帯電話からの音声がゼロのコクピット内に響く。
「今お前虎の尾を踏んだぞトラァっ!」
「言っていい事と悪い事があるな」
「ちょっと魚釣島周辺クリアにしてくれるか……あと、スパイ衛星その他の電源を1時間オフに」
「何をする気だ?」

1時間後……
「シャインっ!す……
「鉄山こ……
「サンっアタっ……
 衛星回線を使っているのに耳障りな雑音がビシビシと入る。気がつくと台湾北部と沖縄方面に3m級の津波が押し寄せ、ある島に至っては島の形が変わっていた。
「一体何をしたんだ!」
「隕石が落ちて……来た様な……」
「いやぁ、ゼロの攻撃は余波が、その、な!」
「……日本近海でフルパワーなんか出せるかっちゅーの」
 簡単な話、駿河湾沖では余りに本土が近過ぎて大技が使えなかったのだ。使おうとしていた人物は若干一名いた様だが。
 スーパーロボットの弱点、それは強過ぎる武装だ。特にゼロに搭載された光線技は余りの出力に指向性を持たせる事が出来ていない。それが現実世界で白日の下に晒されるとどうなるか……簡単に言えば国会の予算審議会が何故か大荒れになり、朝のワイドショーが盛り上がる。予算の審議とは一体……

「あのですね、お電話変わりました内閣総理大臣でございます。何をしたのかお答え頂きたい!」
「おお総理、知らん方がいいぞ」
「知ったらまた立襟に虐められるだろ、うん」
「どちらにせよ野党の追及は受けるんですね、津波も株価もインフルも内閣のせいなんだからもう諦めました……」
「こちらとしてもシンゾーならぬシンローを増やしたくは無い。見なかった事にした方が良い。折見てこっちでなんとかするから……」
「……いや、犯行声明的に政府には話通しとくか」
「地球は今、狙われているっ!」
「今夜練馬でウサギちゃんに数人殺され、更に人質取られてるんだなこれが」
「で、駿河湾沖で日本が誇る超天才科学者のワシらが作り上げたスーパーロボットとUFOの交戦が起きた。ワシらのスパロボをしても事態の「穏便な」解決は不能……覚悟を決める時が来た。坐して死ぬか、戦って死ぬか、決めてもらおうか」
「……漫画の読みすぎでは?」
「シンゾー、多分これはリアルだ。ちょっと回線切るぞ」
「了解!」ポチ。
〈…いや、すまん。どうもボイジャーが異星人と物理的接触をしたらしくてな…〉
〈ちょっと何を言っているのか分からない訳でありますが……〉
「……切れたと思い込んどるね」
「当然盗聴は仕込むよな。端末特定出来たら」
「ワキがまだまだ甘いのぅ……」

〈大統領の解説傍受中……〉

「……なんて事だ……」
「外征能力持った宇宙人が来るか……」
「圧倒的にあっちの方が有利だな。こっちは防戦しかできん」
「ワープの実用化に成功したばかりと言うのが救いか。船と装備を整えてからこちらに向かうとして何年時間があるかだな……」
「処女航海で艦が大破という事故が起きていたなら5〜6年は先か? それまでに人質を取り返してエイリアンクラフトの解析して……」
「ただまぁ、今回の戦績見る限りは絶望的ではあるまい。ゼロで十分やれる」
「星対星だぞ?」
「星対星だからさ。例えば人類は随分昔に月まで行ける科学力を得た。今、月はどうなってる?」
「遠すぎる、か……」
「ワープがどのようなものであれ、楽に出来るとは思えんな。エネルギー的にもリソース的にも多発はできまい。あちらにこちらを滅ぼす意思や一発仕返ししたいという気持ちがあっても、政治的・経済的理由がそれを許すまいよ」
「二波目は無いと?」
「1回目で『あ、これは相手にしちゃいけない奴だ』と思い知らせればいい」
「うむ、今回の戦いでも分かったが、どうやら技術というものは同じように発達する訳ではないようだ」
「あっちは寧ろ物理攻撃と物理防御に兵器技術割り振ってたな……」
「宇宙人は怪光線だと思ってたんだがなぁ」
「正直重力制御や磁界制御とか我々の想像を超えた技術だが、ゼロのブラックホールエンジンやPNGZ合金の様な技術もまた、あちらにはあるまい。これをハッタリ聞かせて『高く買わせる』事が出来たら、或いは……」
「先ずは異星技術の解析と人質の奪還か」
「ここらか出入りは余りに耳目を集め過ぎる。何処かに前線基地があるのだろうな」

「あー、もしもし。内閣総理大臣であります」
「終わったのか?」
「とりあえずの処遇として練馬駐屯地にお越し頂きたい。あと、自動操縦できますか、それ」
「可能だが……」
「これから閣僚会議を開きますが、それは謎のロボットとします。パイロットは一人ダミーを設定して誤魔化します。可能であれば直接お話をお伺いしたい」
「下手に動かん方がいい。話をするとしてどこに行く?」
「今そちらにオスプレイを向かわせています。皆さんには政府が召喚したロボット工学権威として謎のロボットの解析をお願いします」
「ほほう?」
「乗った。面白そうなシナリオ書くじゃないか」

「面白がっている場合ではございません、明日以降相手をすべき敵は宇宙人以上に物分かりが悪い人々です」


次回、ソーリのスルースキルが怪しく輝く!

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純戦士のおじさん
方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!