
小ネタ
料理描写がメインに近い話なのに、料理描写が惜しい作品なんかがあったりします。
辺境の老騎士という作品では、作者さんがホテルの料理人を良く知ってるせいか……異世界の食材に入れ替えられてるが、現実世界の料理に良く似たものが作中に出てきたりするわけですわ。この辺、推論すると元の料理の姿が垣間見えて大変楽しいのであるが……漫画版で前に惜しい絵を見たである。
それは焼き魚かなんか食ってるシーンだったのだが、骨から身が剥がされた「食い掛け」のシーンで、内臓の入ってるべき所が描写されてなかったのだ。
知ってる人ならすぐにわかると思うんだけど、魚はエラの辺りから全長の1/2〜2/3辺りまで、体内下の方に内臓が入っており、骨は前から見ると逆向きのY字形状になっていて、骨と骨の間(人間で言うと肋骨部分の内側に当たる)に内臓が入ってる訳ですわ。釣りして魚焼いたりするマンなら常識だし、内臓を抜かないと味が悪くなるみたいな話もご存知であろう。魚釣らなくともサンマの丸のままのやつ塩焼きしたりすると自然と構造は頭に入る(入ってないヤツァーぼんやり生き過ぎであろう……)
魚の骨とか模式的に尾部と変わらぬ形状に描いてしまう事例もあるから
漫画表現的にはアリと言えばアリなんだが、「料理描写にこだわってる作品」でアレは無いと思うの。ギャートルズの肉を鉄鍋のジャンで出したり、将太の寿司でお魚ちゃんが謎生物になってはイカンであるよ。大変些細な小さなコマでの出来事であるが、実に惜しかったのである。
例えば、鉄鍋のジャンなら監修のおやまけいこ氏が「あのデブ、魚食った事がないのか?」と締め切り無視して修正させるだろうし、そも西条氏もそのレベルでは間違わんであろう。チャンピオンは今でこそアレだが、一度は覇権を争った名家である。日本の中華料理屋ではあまり見ないが、実は魚の蒸し焼きとか中華の食卓では割とデフォである。台北にあった昔の職場の本社では、社食でほぼ毎回蒸し魚出てた。後から考えると身肉の中心部近くが微妙に生に近いミディアムレアだったのも「鉄鍋のジャン読んだ限りでは」卓越した職人技で、加熱時間が足りないとかそーゆーんではないと「今なら」判る(当時は手抜きだなーとか思ってた。すまぬ)
おせんなどで料理描写にこだわり、自らも料理をするきくち正太も、魚の描写は間違うまい。生物学に詳しいさかなくんさんあたりだと、肋骨の本数まで合わせてくると思う。蜂の翅の模様やある特定の植物の葉脈パターンを正確に記憶している「生物学者」と言う生き物は実在するのである。
何かの創作やってると、自分がそれまでいかにぼんやり生きてたか思い知らされる局面が多々ある。例えばガンプラでも……
スカート裏にトラス構造を作るなんてのが流行ってたりするが、個人的には全高18mの鉄の化け物の内側がこんな形になるかなぁ……と疑問を持っている。つうか三角形にしないと強度出ないし、この様な板で強度が出るのは面に対して水平方向であり、垂直方向からの加害に対して脆弱過ぎんだろか? 装甲を固定するインナーフレームだとしても、平面ではなく構成面に対して垂直の桁を組まねば面歪むんじゃ無いかなぁ……? リアルっぽく見せたいだけで実はアンリアルな描写になっている実例だが、トラス構造の用いられ方や「何故そうなってるか」を知ってれば、この様にはしないのではないか。私はこの辺の話を小学生時代の夏休みの自由研究で提出し、うっかり埼玉県の理科学研究発表会に行かされた。逆に言うと小学4年生でも気付く奴は気付くネタを「他者の模倣」として無批判に真似したと言う事例が蔓延しているのである。意外と昨今のモデラーは機構設計とかガバガバ気味だ。
人生、色んなところで学びがあり、そして多くの人はその学びに気付かずスルーしている。例えば……
何でかガンダムの胸部にドラゴン頭を付けたくなったとする。ドラゴンの頭ってどーだったか……とか悩むと思うじゃん?
資料は年中膝の上に乗りたがるジンくんさんだ。四六時中ジンくんさんの頭を撫で回している私、或いはもう30年以上前からこのタイプのイッヌの頭を常に見続けていた訳で……形は既に手が記憶している。
きちんと記憶しているか、そしてそれを適宜出し入れできるか。
日常の生活で飽きるほど見ている筈の事物を、我々は意外と薄らぼんやり眺めている。
およそ人間社会に生きてればリアルな人間の顔など飽きるぐらい見ている筈なんであるが、実際に人の顔を描いたり作らせたりすると「如何に自分がテケトーにモノを見ているか」気付かされるである。
絵でも文章でも彫刻でもいい。貴方はラーメン……普段食べているラーメンを正確に描写できますか?
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