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kazehukaba
創作メモ 穴部瑠璃
「人攫いの噂はどうであったかな、山伏殿」
「攫っておりましたな。小藩領主殿が退治しましたが。それと……「傾国」を見ました」
「噂の瑠璃か。美しいのか?」
「美しゅうございますよ。顔形は元よりその心根が。娘を悲しませぬ様皆が幸せを作ろうと尽力する様……傾国ではなく盛国聖(ひじり)ですなぁ」
「側室に欲しいものじゃが……」
「ははは、お戯を。娘が最も輝くのは好いた男の傍にいる時に御座います。奥に隠しては輝かず、民に恨みを買いましょう。神仏のバチが当たりますぞ」
「そうだな。ワシも娘を輝かせたい。帯の一つも贈るとするか。ところで、人攫いは?」
「竜宮城にございます」
「何? 竜宮?」
「土地のものに依れば、その男よく見たら竜宮城の元衛兵で、竜宮のヒラメが探していたとか……」
「面白いことをしとるのぅ。斬首しなかったのか」
「石を抱かせて簀巻きにした上竜宮城に向けてドボンにござる。今頃タイやヒラメと仲ようしとるでしょう。山に万物がある様に、海には万物が眠っております」
遠乗りに来た藩主は茶屋の団子を齧りながら微笑み、山伏は恭しく熱いお茶を淹れた。
昔々のお話です。海のほとりの小領に、穴部瑠璃と呼ばれた美しい娘が住んでいました。娘の想いはただ一つ、夫の江戸川と愛し愛されること。
天使も羨むその愛を、神仏は愛でて良しとされ、今日も当地は日本晴れ。
2人は末永く楽しく暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
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