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穴部瑠璃

カクヨムとかだと八男が七女になってもパロディではなく創作と取られる様なので、Annabel Leeを「海に面した小藩で」と時代劇に変換しても独自作品扱いされるんちゃうかと。

「昔々のお話です。海に接した小藩に穴部瑠璃という美しい町娘が住んでいました……」

置き換えに過ぎないから簡単にストーリーは進む。少女は町娘で苗字を持たず、ただ瑠璃。江戸川エドガーぁ七郎左エ門(幼名 藍砲ランポー)の幼馴染で、相思相愛。領内で知らぬもの無き睦まじさ。2人が手を繋いで歩けば犬すら喧嘩を止め、2人が蕎麦を手繰れば皆が先を争い勘定は任せろ!と言い出す始末(もちろん江戸川くんは丁寧に謝し、私が瑠璃に食べさせたいのですと32文を支払う) 2人に当てられた領内では空前のベビーブームが。人口増大富国強兵じゃんじゃんバリバリ。
やがて瑠璃は藩主自ら仲人を買って出て、老中穴部の養女として嫁に行くことに。

(だんだんおかしくなって来た)

しかしある日、瑠璃は酷い風邪をひき南蛮の医者に診察を受けてそのまま洋上の南蛮船に拐かされる。

「主命に叛くことをお許しくだされ。拙者江戸川の血涙に応じなければなりませぬ。侍としてではなく男の意地でござる!」
南蛮船に討ち入りをかけようとする若侍(フル武装) そこで藩主が
「血迷うな馬鹿者。二人の仲人たるワシがかような狼藉許すと思ったか! 仲人と言えば親も同然! そうだな穴部!」
「この老いぼれも瑠璃の養父ちちにございます。一時の処遇とは言え、瑠璃は立派な穴部の娘!」
「ことここに至っては、町娘ではなく穴部の娘が拐われ、ワシの娘が拐われたと心得よ! 具足を持てぃっ!」

雄雄おおっ!


日本海の荒波を矢のように八隻の小舟が行く。バイキングさながらに波を掻き分け男たちが船に乗り込みチャンチャンバラバラ。殿様も家伝の鬼包丁でズンバラリ。
「この狼藉者ども、生きて神州から出れると思うなよ!」
「砲助! 船室を改めるのじゃ!」
「御老中殿!」
迫るクロスボウ!
義父ちちと呼ばぬか馬鹿義息子ばかむすこ! 義父は関ヶ原の古兵ふるつわもの、案じるでない!」

おかしい、穴部瑠璃が風邪で死なない……

やはり人質に取られて身動きが出来ないシーンは必須であろう。酷い風邪でぐったりした瑠璃を盾に退去を命じる伴天連男。
当然このようなシーンで必要なのは幕府隠密。忍者であろう。船が波で一際大きく揺れた時、鉤縄を掴んだ黒い影が船尾から飛び立った。
「ドゥリゃぁぁぁあ!」ムーンサルトで華麗に着地!
「むぅぅん!」突き出されたレイピアを手刀で払いつつ、小手返しだ!
「江戸川どのっ!」
「うぬが命運、今尽きたぞ! 耶蘇の神にでも祈るが良い!」

かくして、死んだアナベル・リーの墓に添い寝するメソメソした話は時代劇時空の勧善懲悪メソッドにより暴れん坊将軍並みに天下泰平な話になってしまったンゴ……

昔々のお話です。海に面した小藩で
今日もおそらは日本晴れ。
2人は仲睦まじく暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。

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純戦士のおじさん
方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!