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Johnny, Be Good! (8)

まえじゃなくていまをいきるんだ!

「土台は良さそうなんだがねー……鐘楼周りがちょーっとなー」
 朝日を浴びながら髭大工(でぇく)がボソリと呟く。Hi みんなGood morning! 起きた? ちゃんと朝ご飯食べた? 今日も元気溌剌ジョニーさんでっす! 昨晩の騒ぎは結局でぇくのおじさんに有耶無耶にされました。普通に考えて深夜の神殿に大工がナンデ? なんだけど、何だろうねぇ? 雰囲気? おじちゃんの醸し出す謎のアロマが強制的に場を和ませた的な? そうだねー、文字通り「毒を抜かれた」って表現がしっくりくるね!
 で、早速ジャンヌちゃんとジョニー君従えて教会眺めてます。
「上がダメですか」
「上がダメだねぇ」
「作り直しですか?」
「作り直したいのかい?」
「たくさん直すの?」
「おじさん大工(でぇく)だからさ、中の人がどうしたいかを重視したいな! さ、朝ご飯食べよっか!」

「さあ、神様に感謝してもりもり食べようねぇ!」

 でぇくのおじさんは勝手にパンや焼き魚を配り始めた。バスケットに手を入れてはパンをちぎり、魚を掴んでは皿に盛る。
 ……なんかその、どっから出て来てるのそのパンと魚?
「最近は無限収納袋とか流行りなんでしょ? ほら僕元祖だからさっ☆」
 何が何やら。

 結局ジョニー君は家に帰れなかった。ジャンヌちゃんやでぇくのおじさんがかなり食い下がったんだけど、枢機卿が「また取り憑かれるかもしれない」の一点張りで妙に頑張ってたのが印象的だ。多分、だけど……この枢機卿、みんなから信頼されてない。今回の顛末も皆から聖女と慕われているジャンヌちゃんが目立ちすぎない様に牽制しに来た気がする。そりゃあ何か事件が起きて「他の誰かが」上手く解決したら上層部的に美味くないんだろう。自分が解決し、自分が処理したから丸く収まった「という事にしたい」んだと思う。なるほど謀略脳。
 当のジョニー君は、受け入れた。というか、お母さん亡くなってから色々ゴチャゴチャし過ぎた。受け入れたのではなく流されたというか、無力感が身体を満たしているというか。

(良くないわよねぇ)
「良くないね」
(どうするのさマリーアちゃん?)
As time goes by. 時の流れるままに、さ」
 カサブランカと来たか。なんで自然に混じってくるの? でぇくさん?
「出来るだけ皆と共に歩きたくってね。でもそれが必ずしも叶うとは限らない。もしかしたら君はその為にそこにいるのかもしれない」
「大工さん何言ってるの?」
 ジョニー君は小首を傾げて尋ねるが、でぇくは中々答えない。
「……いいかい、坊や。人はみんなね、心の中に色んな気持ちを持ってるんだ。もしかしたら、君の中には君の嫌いな気持ちがあるかもしれない。でも、それもまた君自身なんだよ。仲良くしてあげてね」
「……悪魔でも?」
「悪魔なんて居ないよ。天使も神様もいない。もしも神様が居たとして、なんで神様は君のお母さんを召したんだろうねぇ?」
(なんで?)
(いや、私に聞かれましても……)
「悪い子だったから?」
「そんなことはないよ。いいお母さんだったじゃないか。最後におじさんが会った時も、君や弟さんの事心配してたよ」

「神様の指示に従って僕らは生きるんじゃない。確かに啓示や神のご意志はあるかもしれないけど、僕らはそれとは無関係に自由に生きる事ができる。その上で……
良い子におなり、ジョニー」

 どこに落ちても雨粒は最後には大海へ注ぐ。その雨粒の一つとして、ジョニー君は修道会の孤児院に入ることになった。


【続く】

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純戦士のおじさん
方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!