嘘を言うなっ！

噂の手長くんのレビューを見た。

きたいじゅうしんのあんていか？

言うなれば運命共同体──
(突如銀河万丈のナレーション)

(中略)

嘘を言うなっ！

お前、そう言うトコやぞ？

機体重心安定させたいのに人型ロボの腕長くしてデケェ獲物持たせる馬鹿がいるかっ！(これはレビューした人悪くない)

ガンダム界隈にはAMBACという概念がある。

機動戦士ガンダム 技術研究概論 序説 AMBACという幻

ここでも触れられている様に、現実的には戦闘機動でAMBAC効かすのは無理くさいというか……正確な運動阻害する要因としてこの反動があるんだけど、こんな問題自体は確かに宇宙空間での運動時に発生し、NASAの宇宙飛行士がこの手の反動を活かして無重力状態での姿勢制御してたって話も無いわけではない。
なので、重心安定性に着目するなら

胴体比率を高くして四肢は短く小さくする。つまりSD体型が最適だ。こっちの方が重心は安定する。

なんで水星の魔女系統は科学考証甘いかな？

ワイは訝しんだ。実は水星の魔女のSF考証やってる人(今KADOKAWAでノベライズやってる人)はnoteやってる。

高島雄哉｜note

記事を見る限りかなりロジカルな物の考え方する人の様だが(作家やSFに携わる人間がそうでない方が珍しい)、それなのになんで……

ここで一つの可能性。

SF考証入れてるからって、その人の考証を必ず取り入れる訳ではない。

逆シャアにSFものとして参加してた岡田斗司夫の話なんだけど、SFとしては正しいがそれじゃ盛り上がらんだろう！って筋で敢えてSF的ではない表現を通した話が出てきたりする。富野はガンダム時に高千穂遙から「ガンダムはSFではない」とか断言されたの相当に気にしていたのだろう……それ以降はかなりSFマインドを発達させている。
考証として正しいからって必ずその要素を劇中に入れなければならない訳ではない。また、この方2021年ぐらいからnote投稿停止してるんだが、これって水星の魔女の企画に参加して機密保持が必要だからSNS投稿停止してるんと違うか？
そして更に……水星の魔女ってもっと前から企画進んでたんじゃなかったっけ？

総合すると

1.SF考証が企画参加する前からある程度水星の魔女の基本ストーリーやバックグランドは完成していた。

2.何かの理由(恐らくはスタジオ見学しに来た若い子が「ガンダムとか見ないです」みたいな発言した事件？)で企画練り直しになった際に、SF味を強める目的でSF考証担当が付けられたが、既にある「SF的に残念な部分」はメインストーリーの根幹に関わるから保存された。

(パーメットを「元素」とするとか、私でも代案出せる程度に雑な設定なんだが、水星の過疎化やら身体に通す部分まで設定変更しなきゃならんしなぁ)

3.てーか、監督や脚本がSF考証を余り受け入れたがらない。ウニョニョーとなったSF考証担当は物書きであったのでSF的な話をサイドストーリー側で展開する羽目になった。

4.SF考証担当が小説書き始めた結果、考証が減少して雑になり「短い脚と長い腕は機体重心安定化の為に……」とかトンチキな話する事になった。

恐らくだが。

SFものであるならば、

この手足のバランスは動的平衡を保つ為にクドクド。実際X-29でも空力的な不安定性をフライ・バイ・ワイヤで細かく制御して旋回性能の高さを実現してウニョウニョ……近年ではカナード付けてモソモソ。シェルユニットとガンド技術により高度な姿勢制御を可能とした本機は……

と、早口で丁寧に解説するはずである。これを聞いた非SFものが深くうなづきこう語るワケだ。

「つまり、この体型にすると重心が安定するんだね？」

がくーんであろう。
心の中では失意体前屈であろう。動的平衡だっつってんだろダボがっ！
私も経験があるが、マトモに理論構築しても情報を仲介する人物がアホだとロジックを変に解釈されて

俺、そんな事言ってねーよ！

になる事は「あって欲しく無いが発生し得る問題」である。

最近の富野作品でSFが確かな仕事してるのは富野自身もSFマインドを育み、SF考証担当の意見をSF的に取り込んで行くことが出来るからだろう。考証担当付けるだけではなく、ちゃんとそれを活かせる布陣を敷かなければならんのだ。

そして出来上がりを見る限り、水星の魔女という作品では本筋には関わらない部分ではかなりエスエフ味が強くなり(プラント・クエタって名前とか、ワイもちょっと感心した)、物語の本筋に近いパーメットとかガンドとかは「何故にこんなトンチキが……」と

海のリハクの顔をせざるを得なくなる。

群体制御関係の用語とかも多分氏の仕事であろう。パーメットとかは大河内とか小林辺りの発案であろう。エアリアルに自我があるとかは小林が関わったひそねとまそたん辺りの影響だろうし。パーメットが元素設定は、小学生レベルなら許される。中学生にもなってパーメットは新元素で採掘して集めるんダ☆なんて言い出す様では現代科学教育の敗北であるし、いい大人がそんなん真面目にやる様ではもーなんかなー(てんをあおぐ)であろう。

思うに、水星の魔女の制作体制としては大河内-小林ラインの結び付きがかなり強く、この2人と設定考証の白土氏ぐらいしか「最終的な結末」に至る話知らんと思われる。つまり直前までいかないとスタッフも話を明かされない訳で、事実上こんなん深いレベルでSF考証させるの無理や。(いやー、ちょっとそれはSF的に厳しい！ってなっても、物語の筋が非SF的な展開前提にしてたら修正出来ないだろ)