こんなタレコミがありました
アーサー王検察の(以下略)
ガンド天狗でこんなコメントが寄せられていた。
うむ。ありそうな話だ。そういう創作やっちゃう人は実際居る・居たかもしれない。そこで中世ヨーロッパ警察にも話に加わって頂き「それはあかんのちゃいますか」という物語の考証をしてみよう。
先ずですね、西洋世界には数多くの魔剣とか聖剣がある訳だが……騎士が持つ武器で魔法がかかっているのは稀である。
騎士とはキリスト教圏化したローマで発生した爵位であり、つまり必然的にキリスト教徒であるからだ。(ナーロッパなどが舞台の場合は無視してよい)
で、中世ヨーロッパ警察記事でも書いたがキリスト教的に許される超自然的な出来事というのは、全て神の奇跡じゃないとダメなの。その他の超自然現象はキリスト教だと「悪魔のわざ」という括りになってしまうし、実際中世ヨーロッパから近世〜近代初頭辺りまで信じられていた悪魔の何割かは異なる宗教における神様だったりする訳だ。アブラハムの宗教と呼ばれたりする中東起源の一神教では、実はユダヤ教徒もキリスト教徒もイスラム教徒も同じ神を信仰してる。神様としては同一なの。
という事で、キリスト教が浸透した後に成立した騎士道物語には聖遺物を納めた剣とかはあっても魔力を帯びた剣が極めて少ない。魔法がかかってる武器使うのは悪魔のわざを振るう事になり背教者と看做されてしまうから不味いのだ。
この様な理由でなんかやたら頑丈な剣ばかりになる訳。これは逆に言うと「当時の剣」がフルパワーで敵ぶん殴ると曲がったりポッキリ折れてしまう「鍛鉄を焼き入れ硬化しただけの剣」だった事の証左である。また、騎士の剣がいかに凄いかを描写をする際には「固いもんに打ち付けても折れなかった」という描写がよく出てくる。
更に言うとイギリス王家の剣である慈悲の剣「コルタナ」は先がポッキリ折れて短くなっていて、上記の騎士の剣は現存する王剣より頑丈なのであろう。
アーサー王物語辺りだと、多分成立初期に書かれた物語には魔法というかケルト系のモチーフが結構出てくる。魔法で誘惑するとか、そんなのな!
だが、後期に成立したというか……エピソードが盛られた部分はキリスト教に合致した筋になっていく。明らかにドルイドであろうマーリンは封印されてしもたり、聖杯探索しに行ってロンギヌスの槍見つけたり、13番目の騎士が不吉だとか言われたり(無論、ユダの裏切りが関係している)
という事で、選定の剣がポッキリ行って治して魔力付与って筋は後世の追加創作だってはっきりわかんだね。
非キリスト教圏で発生した与太であろう。つか古典に記されてない記述だし、これだけで「あ、成立年代とか知らないガバい奴がガバったな!」というのがすぐ分かる。
また、選定の剣というとアーサー王のが有名だが、ランスロットの子であり完璧超人であるガラハードも「また別の選定の剣」を抜いており、その剣抜いた奴は聖杯見付けるだろうと書かれてた。ちょっとワンパターン過ぎないか?(真顔)
なおこの剣その他の活躍確か無く、ガラハードは更にまたまた「誰にも抜けなかった」ダビデ王の剣も鞘から抜いている。抜けない剣があったらガラハードに任せると大吉だ。多分奴は女神から封印解除スキル貰ったなろう主人公だよ。