
シリオンの魔女
シリオヌアという少々発音しにくい辺境の街に、その街の語源となったシリオンの遺跡がある。そう、高レベルの冒険者であれば必ず避けると言われるダンジョンだ。子供の謎謎にも歌われるシリオンが高レベル冒険者に避けられる理由はなんだろう?
……それはレベルドレインであり、レベルドレインを行う魔物、吸血鬼の存在だ。
既に目ぼしいレベルドレインを使う魔物は「ほとんど」居ない。西蓮沼の屍人使いは一昨年討伐された。2名の10Lv冒険者が2つ3つレベルを下げられ、冒険者を引退したという話を聞いたことはあるだろうか? 運悪くレベルドレインを食らっても下がるレベルは高々1つ。しかしその高々1つのレベルを上げる為にどれだけの冒険、財貨が必要になるか考えてみるといい。
初級であればコボルドの3LDKを襲撃した程度でもレベルは上がる。しかし高レベルになると居抜きで地方領主の城を買い取るぐらいの財貨が必要になる。レベルが更に上がれば必要な財貨は指数関数的に上がって行く。レベルドレインは高レベルになればなるほど恐ろしいものになっていく。最も、Lv8の俺にとっては大した問題ではないが。
「キャー! レベルアップおめでとう! 今夜はスキヤキよーっ!」
もう何度目か分からないが、「また」レベル9になった。連れ合いの色白美形の魔法使いは我が事のように喜んでくれる。
「もうねっ! 前から予約しておいたの! スキヤキに赤ワインにお宿はシルバーリーフ! 今夜は寝かさないわよっ♪」
はしゃぐ彼女に性的なものを予想したか? 今夜は寝かさないってのは緩々と味わって楽しむって意味だ。そしてそれは性交より甘美で脳髄が蕩ける。俺も嫌いではない。
今夜、俺が食らうのはレベルドレイン。食らわせるのは愛しの連れ合い、魂の簒奪者。シリオンの遺跡の女主人にして高レベルヴァンパイア。魔女カーミラ。
ヴァンパイアってのはとても魅力的なんだ。そいつはレジスト出来ないからな!
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