【オリジナル楽曲解説】風に願う~小室進行ボカロ曲投稿祭2024秋投稿曲~
こんにちは。ボカロPをしておりますぜろろくと申します。
先日開催された小室進行ボカロ曲投稿祭2024秋、盛り上がりましたねー!
こちらを読んでいただければおおよその投稿祭の趣旨はわかるとおもいますが、簡単に言うとコード進行に小室進行というものを使った曲を投稿しようというお祭りです。
レギュレーションにコード進行を指定するってなかなかマニアックだなぁと思いますが、2日間で100作品以上投稿されるという大規模なイベントとなりました。ボカロPさんの熱量を感じますね。何より主催者であるキンカセンPさんhttps://x.com/KinKasenPの日頃からの活動の成果かも知れません。
本当にあっぱれです。
実は私もこの投稿祭に参加しておりまして
「風に願う」という楽曲を投稿しました。
まだの方は是非お聴きください!!
どうです?良い曲でしょ(自画自賛)
ということで、今回は自身の作ったオリジナル楽曲【風に願う】を解説していきます!
※結構な長文です。時間のあるときにごゆるりと。
この楽曲を作った背景
自分は、純粋にキンカセンPさんの作る曲が好きなんですよ。(熱い告白)
特に2023年春のボカコレで投稿された「なつぐるま」という曲が大好きでして。
ぜひ聴いてみてください。アド街を見たのノリで、ぜろろくのnoteを見たとコメントをしてください。特に何かがお得になるわけではありません。
みずみずしいピアノのサウンドはもちろん、何度も読み返したくなるような美しい日本語の歌詞など、とにかく気に入ってしまったわけです。
(なつぐるまの魅力を語りだすと止まらないのでここら辺にしておきます)
こういう曲作ってみたいなぁと思っていた矢先、第二回の小室進行投稿祭が行われるということを夏頃に知りまして、これはもう出るしかないな!と決意して楽曲制作を始めました。
バラード系でいくのか、ポップソングで行くのか、クールなサウンドで行くのか、色々考えましたが、やっぱりキンカセンさんのようなピアノのサウンドがみずみずしい爽やかでどこか切なさもあるようなサウンドが良いなと思いました。
しかし、ただキンカセンさんっぽい曲を作るだけではただの模倣でつまらない…。
そこでこう考えたわけです。
大好きな「なつぐるま」のアンサーソングを作ろう
風に願うを作る上での思考
歌詞編
ここで題材となるキンカセンさんのなつぐるまの歌詞を見てみましょう。
うーん、良い歌詞。
ここで不粋ながら自分なりにこの曲の歌詞を紐解いてみます。
(キンカセンさん、もしこれをご覧になっていて間違ってたら遠慮無くご指摘ください。)
まずこの曲の登場人物や背景を整理すると
という2者の関係が読み取れます。
歌詞を読み進めていくと「僕」が、「君」のこと忘れられずにいる様子が分かりますね。なんか現代文の授業みたいになってきたぞ。
さらに
水平線で笑う君がいない
なんて歌詞が出てきます。
要するに「君」は「僕」の元をはなれどこかへ行ってしまいました。
しかもただどこかへ行ったわけではありません。
転校をして気軽に逢えなくなったわけでもなく、失恋をし、いつもの待ち合わせ場所に君が現れなくなったわけでもなく、飲みに行ったまま朝まで帰ってこないというのとも訳が違います。
冷たい君に触れ。
この表現は重いです。
亡骸に触れたから冷たかったんでしょう。
つまり、君はこの世からいなくなったということです。
(これは自分の解釈なので間違ってたら本当にごめんなさい)
つまり、全体を通して大切な人を失ってしまった深い悲しみを歌っている歌です。
また時間関係を見ると
過去(君がいた日々)
過去(君がいなくなった日)
現在
未来(現在と地続きの仮定)
の4つが出てきます。
1番では、仮定した未来(仮定)➡現在➡過去(君がいなくなった日)➡過去(君がいた日々)➡現在&未来
という形で動いているのに対し
今度は2番で、君がいた日々の過去を丁寧に描き、そこから現在を丁寧に描くことで、現在と過去のギャップを強く打ち出しています。
この流れ美しい
ほかにも好きな表現があって
11本の向日葵は花言葉で最愛
きっと「僕」にとって「君」は最愛の人だったんでしょう。その思いを他の部分の歌詞でもひしひしと感じますよね。花言葉を本数を指定して表現されるなんてオシャレですよね。
しかも生前の思い出を歌った部分であると思われる
「向日葵のような目で僕を見て」という歌詞から分かるように、君自身が太陽に向かって咲く向日葵のような人だったのかも知れません。
そこを落とし込んでいるのも素敵ですね。
この曲の世界観、自分は米津玄師さんのLemonに近しいものを感じたんです。
どちらも大切な人を失った深い悲しみを描いていますよね。
米津さんのLemonでは
「胸に残り離れない苦いレモンの匂い」
キンカセンさんのなつぐるまでは
「僕はきっと痛ましく回し続けるんだ 壊れたかざぐるま」
どちらもタイトルをうまく組み込んで悲しみを表現していますよね。
しかも一見タイトルを見ただけでは、そのようなことを描いた曲とは思えない感じ。
共通項だなと思いました。
紐解くもなにも、自分自身なつぐるまのたいした解説はできていないですが、こんな感じの解釈をしました。
そもそもなつぐるまの解説をするのが目的ではなく自分の曲の解説をするのが目的でした。熱くなりすぎましたね。失礼。
これを踏まえてアンサーソングを作るとなるならば答えは一つ
「君」の視点で「僕」に対する想いをつづる
となるわけです。なつぐるまと逆の構造になります。
一人称、二人称も変えて
君=私
僕=あなた
とします。
君=私は死後の世界にいる
僕=あなたは現世で私のことを想いふさぎこんでいる
という形になるわけです。
テーマとしては、私があなたに向けて、前を向いて欲しいという想いを伝えることにしました。
しかし、ただ前を向けというのも違うので、私自身も悲しみの中にいるという点は忘れないように心がけました。
また、タイトルの「風に願う」
これは制作の第一段階である程度こういうタイトル、題材にしようと考えていました。
なんせ題材がなつぐるま
かざぐるまが物語のキーアイテムとして出てきます。
かざぐるまを回すものは風。その風に乗せるものは願い。こういう感じで考えたと思います。
とまあ、とやかく言ってもラチが開かないので歌詞見てもらった方が早いでしょう。「風に願う」の歌詞を見てみましょうか。
どうでしょう。なつぐるまとの世界の共通点、および対比を感じていただけるでしょうか。
いくつかポイントがあるんですがそこを抽出して紹介します。
1つ目のポイントとしてなつぐるまと同じ世界であることを強調すること
具体例として。。。
なつぐるまの素敵な表現を引用しながら歌詞を構築していきました。
個人的に3つめの波のところ。自分でも気に入っています。
2つ目のポイントは、主人公が死後であることを強調すること。
・影が消え去ったあの日から
透明な羽は花の香り残して
あなたのもとから飛び立ったの←亡くなった表現
特に死後の世界は「花びらが舞うこの世界」と表現しました。
仏教の話なのか分かりませんがこういう話を聞いたことがありまして、とても素敵だなと感じました。この話をもとに死後の世界をこう表現をしました。
3つ目のポイントとしてはキンカセンさんの過去の作品に出てきたワードなどをちりばめること
ほかにもなつぐるまのワードなど色々入れ込みました。正直見落としてるところがあるかも知れません。これ以外にもいくつかあると思いますので、キンカセンさんおよび、キンカセンさんのファンの方は探して考察してみてください。(丸投げ)
こんな感じで歌詞を作り上げていきました。なつぐるまと地続きであることを常に意識していた感があります。
ちなみにラスサビの歌詞ですが
とありますが本当は
にしたかったんです。ただ、動画師さんにmvを依頼したタイミングでミスに気づいたのでもう修正できなかったんですよね笑
本当は「遠い夏」にしたかった笑
メロディ&アレンジ編
ここまでで約4500文字。。。
書きすぎましたね笑
多分ほとんどの読者の方は途中で脱落しちゃってますかね。すみません。
ようやくサウンドについてです。
アンサーソングを作るとなるなら話は早い。キンカセンさんの作品を聴き漁るぞー!
ということで、過去作全てのみならず、キンカセンさんのXに投稿されていた没作品(本人談)まで聴きました。文字通り夢に出てくるくらい聴きました。ご本人がこれを見たら引いているかも知れません。終止旋が弾かれるかも知れません。
聴いていく中でいくつか楽曲の特徴が見えてくるわけです。
①GarageBand特有の音源の使用
②メロディは16分音符の細かい畳みかけ➡Bメロでテンポを倍に取りロングトーン主体➡サビは再び16分音符の細かい畳みかけ
③サビの終盤でメロディオがクターブ跳躍
④間奏でハミング&ラララパート
⑤オクターブ下でユニゾン
たぶんまだまだありますが、これらの特徴はキンカセンさんの作品を聴いた方が早いので是非聴いてみてください。
こちらも「アド街を見た」と同じニュアンスで「ぜろろくのnoteを見た」とコメントを残してください。別に何も安くなりませんが。というかこのネタ9割の人に伝わらない気がします。
この点を踏まえて作編曲を行いました。とはいえ、自分の作るメロディの手癖ってもんはなかなか染みこんでいるもので、キンカセンさんっぽいサウンドにするのは大変でしたね。でも、ただキンカセンさん風のサウンドを作ってもレベルの低い模倣になるので、自分らしさとキンカセンさんらしさをうまく融合させていきました。(そうせざるを得なかったというのは本音)
とはいえコメントでぜろろくさんワールド全開で好きというコメントを頂いたのには困惑しましたね笑
いろんなジャンル作ってもこのコメント言われるんですよねぇ笑
どんなジャンル作ってもぜろろくさんワールド全開で好きってコメントもらう説って検証しようかな。
続いて調の話、キーはFmaj(ヘ長調)ラスサビがG♭maj(変ト長調)です。
これはなつぐるまがEmaj(ホ長調)だからで、そこから一つキーを上げて物語が進んでいることを示したかったからです。
コードはもちろん小室進行。
イントロから終わりまでずっとDm B♭ C F(ラスサビで半音上がる)
全部同じコードで一曲歌ものを書くのは初めての経験でした。メロディの引き出しの多さが試されますね。
そう考えるとキンカセンさんはほぼ全作品でオール小室進行でメロディ書いているわけですから凄すぎますね。
使う楽器はピアノとギター、オルガン、グロッケンをメインにした形です。完全になつぐるま意識した使い方です。
ピアノに関しては16分音符でひたすら動きまくることを意識しました。リリースカットではなく、ノーマルな形(むしろリバーブが効いている)
これをやるだけでもだいぶキンカセンさんっぽい。
特にオルガン。サビの「この風にまた願う」のところ。
なつぐるまで印象的に何度も出てくる「壊れたかざぐるま(なつぐるま)」と同じメロディを採用してアンサーソング感を強く押し出しました。
聴いていただけるとよく分かると思います。
ちゃんとオルガンが「壊れたなつぐるま~」って歌ってますよね。
そして、アウトロのアコギとピアノのみになってコードを演奏するところは
小室進行祭だぞというところを強調するためのダメ押しです。
野球いうなら、リードして迎えた9回、さらに追加得点を入れて勝利を確実にするあれとおんなじです。
それにしても、歌詞の説明に比べて、楽曲そのものの説明って難しいですね。多分伝わりにくかったかも知れません。すみません。そのぶん歌詞解説より文章量は少ないと思います。
個人的にこの楽曲を聴いてくださったみなさんからいただいたコメントでよっしゃと思ったのが
「ガレバン(GarageBand)でここまでできるんか」
実はこの作品ガレバン使ってません。
Studio Oneで1からつくってます。
ただ、キンカセンさんはおそらくガレバンで制作されていることから、ガレバンを意識したサウンドにしました。それを読み取ってくださったコメ主さん。本当に凄いです。ありがとうございます。ガレバンと見せかけてStudio Oneだなとか言われ無くて良かったです。
ちなみに、ここまでの文章の順番的に歌詞が先なのかなと思うかも知れませんが、メロディ先です。でもサウンドを作るに当たり、「風に願う」というワードは意識していたのは事実ですね。
イラスト編
つぎにイラストについてです。今回イラストは
なむら しゆ さんに描いていただきました。@summ_sleep
素敵なイラストですよね。
イラストのコンセプトとして、当然なつぐるまは意識しますよね。そこで、なつぐるまの女の子をなむらさんにお見せして、こんな感じの顔にしてくださいという依頼をしました。この顔の似ている感じの塩梅が素晴らしい。全く同じだとそれはそれで微妙だなぁと思ったので素晴らしいバランス感になってますね。
なつぐるまのイラストも拝借して貼っておきますね。
素敵な女性。そりゃいなくなっても彼女のことをずっと忘れられないよな。
風に願うのお嬢さんに戻りましょう。麦わら帽子に花をいっぱい詰めています。この麦わら帽子はなつぐるまお嬢さんがかぶっていたものと同じです。
花によーーく着目するとキンセンカ、ひまわり、白百合、カンパニュラなどなどが入ってます。
勘の良い人は気づいたかも知れませんが、キンカセンさんの作品から取ってます。そもそもキンカセンというお名前もキンセンカからの引用だそうです。
キンカセンさんの最初の作品「傷口と嘘」にはキンセンカの花がお供えしてあります。そこから発想を飛ばして、これらのお花は、お供えした花を集めたものという設定にしました。
死後の世界な訳ですから、花は枯れることはありません。
それに、これらの花は咲く季節がバラバラです。
つまり亡くなって1年以上たっている。
また季節ごとの花がお供えされている。
つまり、誰かが亡くなった彼女のことを思い続けている。
ということを表現したかった訳です。
この誰かはもうお察しの通りなつぐるまの僕であり、風に願うの「あなた」である訳です。
また、この麦わら帽子にキンカセンさんの作品の花を詰め込むということは、キンカセンさんの作品の影響を受けて作ったという私自身の行動そのものも表現しています。
また、背景の色は夕方なのは、昨年の小室進行祭でキンカセンさんが出したもみじいろの影響を受けています。
と同時に、なつぐるまは朝、昼っぽいかんじなので、そこからの時間経過的なものも描きたかったからです。
また、なつぐるまでは女の子が左を向いているのに対して、風に願うでは右を向いているのが分かります。
これも対比を強調したかったからです。
私自身、絵がド下手で小学校の図工の時間、いつも居残りさせられてました。
トラウマです。
素敵なイラスト描けるのって羨ましいです。
先日亡くなった西田敏行さんの曲に
「もしもピアノが弾けたなら」
という曲がありますが、まさに自分にとっては
「もしも絵が描けたなら」
です。
どんなに自分の思いを伝えることができるか。
つくづく歯がゆいおもいです。でも、この自分の思いを汲んでカタチにしてくださる絵師さんには感謝してもしきれませんね。
まとめ
ということで長々と書いてきました。ここまでで約8000文字!
まとめまでたどり着いた方。本当にありがとうございます。
多分きっと良いことが起こるはずです。おめでとうございます。
これを読んだ後に拙作「風に願う」を聴くと、また違った感じに聞こえるのではないでしょうか?
今回初めて個人の方が主催する投稿祭に参加しましたし、誰かの作品のアンサーソングを作るというのも初めてのことでした。
とっても制作が楽しかったです!!
自分なりのキンカセンさんへのリスペクトを込めました。
それを感じ取っていただけたら幸いです。
このような作品を作れたのもキンカセンさんの作品があったからです。主催を含め本当に感謝しております。
来年参加できるか分かりませんが、次回の開催も楽しみです
次は11/3ボカロアイドル投稿祭に投稿予定ですのでこちらもお楽しみに。
今後も自分なりに、思いの全てを歌にして誰かに届けていきたいものです。
ありがとうございました。
追記
絵師さんに送った簡単なラフはこちらです。
そして完成したものがこちら
絵師さんってすげえや