「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」と戦争
映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を見ました。
ゲゲゲの鬼太郎は小さい頃に昔のアニメを見た記憶があり、思い入れのある作品です。
同僚から勧められ映画化していたとは知らず、サブスク解禁されているとのことで、その週末に早速見てみることにしました。
土曜の朝。
洗濯機を回してコンビニで朝ごはんのパンを買い、戻ってきて洗濯物を干して万全の状態でさて見ましょうかと。
まず事前情報としてわかっていたのは、メインのキャラが二人いること、その片方は「水木」と言う名前であること。もう片方が鬼太郎というわけではなさそうだということ。(絵を見た感じ)
まず冒頭。
猫娘が美人すぎてびっくりしました。
私の知ってる猫娘は刈り上げの細目です。鬼太郎より背が高った記憶はあるのですが、ここまでか……!?
でもこの可愛さでまたウケたり支持層が広がるなら…ウンそれは良いことダヨね……と受け入れておいて、ひとまず忘れることにしました。
昭和30年代日本。
高度経済成長期でしょうか。
私は「血液銀行」の存在を初めて知りました。なんなら映画を見終わってもなお、そういう名前の銀行なんだろうな、と思い込んでいましたが、実際に血液を保管する銀行だったんですね。
献血の前身ということで、大昔というほどではない日本のことを私はあまり知らないんだなと感じました。
水木の仕事への情熱も凄まじいな、というのが第一印象ですが、これもまた時代がそうさせるのだと思うと辛いです。
いっぱしの社畜として日々を過ごす私は水木の仕事への執念とも呼べる程の情熱に序盤から圧倒され、これくらいの気持ちで働かなければな……と思いましたが、戦争兵を経験した水木と私では心構えが違いました。
命の重さを知る水木の生きることへの執着。すごく説得力がある。
もともと水木先生が元戦争兵の漫画家ということもあり、その辺が反映されてるのかなと思うと生誕100年の作品ということでめちゃくちゃ先生へのリスペクト感じました。(後で調べるとやはり先生の戦争体験漫画のシーンから取り入れてるそうです)
圧倒されているうちに沙代さんが登場しました。
なんてカワイイ……!!と思っていたらとんでもない運命を背負った人だったんですね。
因習一家に生まれて逃げ場もない。そりゃぁ東京から来たのが水木であろうがそうでなかろうがチャンスに縋りつきたくもなります。
ここから次々と龍賀一族が亡くなっていくわけですが、終盤でこれは全て沙代が取り憑かれてやった事だとわかってなお、一緒に東京へと言った水木は、沙代をどうするつもりだったのか。
ゲゲ郎を助けに戻ってきた時に、「なるほどそのために沙代を……」と思いましたが、どうやら回想シーンによると本当に東京へ戻ろうとしていて、でもゲゲ郎をほっとけなくて折り返していました。
つまり本当に沙代を東京に連れて戻ろうとしていた。取り憑かれた沙代を、何故。
これもやはり、戦争兵の経験がそうさせるのかと思いました。
目の前に救える命があって、置いていく理由が何一つ無かったのだろうと思います。沙代に恋愛感情が湧いたわけでもなく、囚われのその身を案じたわけでもなく、救える命だったからじゃないでしょうか。
沙代が命を落として水木は叫び愕然としますが、ゲゲ郎の一言で「遅くなってすまない」と平常心を取り戻します。
この切り替えこそ、水木の経験がもたらせたものなのではないかと思いました。
死への最前線に立っていた水木は、命の重さを知ると同時に、己の意図を汲まない判断力や割り切る力を身につけていたのではないかと思います。
当然のようにゲゲ郎の妻にちゃんちゃんこを着せた水木は、他者に対して愛情の溢れた人。でもそれが大袈裟に描かれる事もなければ、本人によるそう言った発言もありません。それが水木の当たり前なんだと思うと、水木が他者を、ひいては命を想う気持ちの深さや重さが胸に刺さります。
乙米が水木に対して「大義のための犠牲」を語るシーンがありますが、ここで戦時中の記憶が蘇る演出も非常によかったです。
「ゲゲゲの鬼太郎」と先生が体験した「戦争」が重ねて描かれていて、この映画は水木しげる先生生誕100年の作品として、本当に意味のある超大作だと感じました。
大人になって触れる機会が減っているのもありますが、やはり年月ともに戦争のことを語られる作品や場が減っていってるような気もするので、令和の時代だからこそ伝えるべきメッセージが込められた作品だと思えました。
そしてこの映画を見て、祖父のことを思い出しました。
祖父も戦争兵の経験がある人だったのですが(幸いにも国内の配置だったようです)、死と直面した壮絶な時代を生きただろうに、たかだか就職難の時代を生きる孫の私に「可哀想に、今はツラい時代やなぁ」と言ったのを覚えています。
どう考えても戦争の方がツラいのに、そうやって孫に言える祖父はとても強い人なんだと思ったのを覚えています。その時の思い出が、水木の強さと少し重なりました。
最後に余談ですが、見終わって色々世間の感想を見たのですが、乙米と長田の関係もすごく深みがありそうですね。
作品を見ただけでは私は「この人義姉に尽くすなぁ」くらいにしか思わず深く察することはできなかったのですが、純愛のような感情が互いにあったのかと思うと、またそこも注目して見返したくなりますね。
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