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「シャーリー・うちの小さな女中さん」 召使と女中が織りなすほのぼの漫画

私は絵の美しい漫画が好きである。森薫の「乙嫁語り」はその絵画のような美しさに圧倒される。

「乙嫁語り」より

森薫には「シャーリー」という作品がある。彼女が公言する大好きな召使の話である。「エマ」はその召使の階級を超えた恋の話。嫌いなわけではないが、どちらかというと「シャーリー」の簡潔さが好きである。しかしこれが2巻しかない。シャーリーがこの後どうなるのか気になっていた。

その後単発の連載で元気そうであったこと、孤児院での幼少期の話が聞けて安堵した。


そこでこの 長田佳奈である。一目みて絵の細やかさに惹きつけらえた。そしてこれが「シャーリー」そっくりだと思い至った。この作品も大好きになった。うちの小さな女中さんのストーリーとキャラクターを説明しながら、シャーリーとも比較してみたい。

シャーリー13歳と主人ベネット・ハナ14歳と主人令子
「シャーリー」「うちの小さな女中さん」より



「シャーリー」はヴィクトリア朝時代のイギリスの風俗が事細かに描かれている。一方「うちの小さな女中さん」でも登場人物の表情の機微が実に上手く表現され、昭和初期の日本の家庭や生活、風物が繊細に描き込まれている。

「うちの小さな女中さん」より


「この世界の片隅に」でも戦争中の生活が鮮やかに描かれていたが、この作品では昭和初期の日本が実に生き生きと描かれているのである。(砂糖壺にアリが寄ってくるエピソードはとても似ている)

「この世界の片隅に」は原作も良いが映画が大好きである。「この世界の片隅に」より
砂糖壺にアリを寄せないやり方が描かれる「うちの小さな女中さん」より


かつて洗濯機も掃除機も冷蔵庫(電気の)もない時代、家事は一日かかる大仕事だったことがわかる。

「うちの小さな女中さん」より


蓮見 令子は童話作家である。数年前に夫を亡くし、作家稼業に没頭することで亡き夫への思いを忘れようとしているものの、未だに結婚指輪を外すことができず、それから離れることはできない。

「うちの小さな女中さん」より

一方ベネットは婚約していた男が自分を顧みなくなったことで別れていた。彼は未だに未練をもって彼女を追いかけている。

「シャーリー」より
双方ともに見合いを進められるが断る 「うちの小さな女中さん」「シャーリー」より

シャーリーの主人ベネットは喫茶店を運営している。これは喫茶店のおみつを思い起こさせる。

喫茶ミチクサは令子行きつけの店・ベネットの喫茶店は何故か年寄りばかりが来る
「うちの小さな女中さん」「シャーリー」より



14歳の野中ハナは実直な女中である。否、そのような生き方しか知らないと言ったほうがいいだろう。

普段は表情に乏しいがそれが逆に魅力「うちの小さな女中さん」より

両親を早くに失くし、幼い頃から山梨の邸宅の女中として奉公しか知らなかった。自分を出すことを抑えてきたハナは令子宅の女中の話が出ると自ら立候補する。彼女の手元にはいつも令子の本があったのだ。

「うちの小さな女中さん」より

シャーリーは13歳。ベネットの家に召使としてくる。ハナ同様天涯孤独であり、求人広告に年齢を書かなかったために応募した。

「シャーリー」より

令子もベネットも若すぎる召使(女中)に驚く。

「シャーリー」より
「うちの小さな女中さん」より

令子もハナの紹介者(叔父)からの年齢に関する文面を読んでいなかった。

夫を亡くした令子と身寄りのないハナが出合い、令子は妹のようなハナに世話をされる。日々を真摯に生きるハナにとって東京の毎日は驚きに満ちていた。

「うちの小さな女中さん」より

令子はハナと共に暮らすことで輝きを取り戻し、ハナは令子の優しさに触れ、二人の絆は深まっていく。ベネットにとってもシャーリーは有用なメイドからかけがいのない人物になっていく。

「シャーリー」「うちの小さな女中さん」より
シャーリーは忘れ物を、ハナは傘を届けに喫茶店へ。
「シャーリー」「うちの小さな女中さん」より


と言うわけで、これはまさに読みたいと思っていたシャーリーの続編ではなかったか。
同じようなエピソード、人間関係等。長田佳奈が「シャーリー」から影響を受けていることは明らかだが、ここまでくると模倣ではなく、オマージュであり、れっきとした一つの別の作品であると思う。 読者にとっては大歓迎である。シャーリーがいつか再開するかもしれないが、まずはハナの活躍を期待したい。

とにかくハナの描写、キャラクター設定が面白い、秀悦!「うちの小さな女中さん」より

でもって病気から回復されたという森薫さん!せかすようで申し訳ないが、早く「乙嫁語り」15巻をお願い致します。ファンは待っていますよ!!!
でついでに「シャーリー」の3巻を出してください。シャーリーがエマのような恋をするまえまでの話しを。

とまあ、一ファンの自分勝手なお願いでした。


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