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スノースクートと新雪と

早朝、まちは白くなっていましたが移動するにつれ山あいでは雨に変わってきました。現在の気温は雨と雪の境目0度というところでしょうか

今日はここから標高が600メートルあがるので、ざっくりですが気温はマイナス3-5度ほどになりおそらく天候は雪。昨晩の降雨量から推測するに10〜20センチほどの新雪が積もっているはず

ウインタースポーツにとって新雪を滑るという行為はいつも特別な時間

それはスノースクートも同じ事ですがスノースクートで新雪を滑る楽しさが解放され始めたのは意外とここ15年ほどのことです

自転車のようなもので雪上を滑りたい、走りたいと考えた人は歴史上多くいたはずです。実際の自転車のフレームを流用してスキー板を取り付けた人。三輪のようなスキーバイクともいえる形で挑んだ人。
コロラドではタイヤに板をはめて走るバイクボードクルーと峠でセッションしたこともあります

スキーヤーやスノーボーダーは自分のお気に入りで滑るのがもちろん1番ですから、自転車で雪山の発想はどちらかといえば乗り物好きが考えるハンドルスポーツよりのアプローチになることは想像しやすいです。

世界中でそういったムーブはありました。1990年代にBMXプロだったフランクペテュー氏が当時レーシングBMXで名を馳せていたフランスSUNN社に独自のアイディアを持ち込みついにスノースクートが形になります。

オリジナルスノースクートは現在のモダンスクートフレームと基本設計は同じですが、トップチューブが簡略化されていたりしてキックスクーター(キックボード)に短く切ったスノーボードを2枚つけたような形になっていました

スクートが過去の雪上自転車と違うのは細身のスキー板ではなくスノーボードサイズの太さのあるボードをとりつけたところ。これだけで雪面での安定感が増し直滑降が可能になります

自転車のような操作感のフレームに四角いフロントボード、リアには短いスノーボードのような板、そのサイズ感はまさにBMX 20インチに近い操作性で軽快にゲレンデを滑り細かなジャンプ、トリック。ターンをきめてときに大きなジャンプもおこなえるまさに雪上BMXといったものでした

フランクの設計した操作感は直感的にわかりやすく、今もブラッシュアップは続き、現在のスノースクートでも入門機種では積極的に採用されています。ウインタースポーツをやったことがない方でも自転車に乗れれば楽しめる雪上自転車の基本といえます。

しかし雪山全体を滑るというと不足と思われる部分もありました。
それは深い新雪を切り開く絶対的な浮力が足りていないということでした

もちろん新雪を滑ることはできますが、とても深いパウダーとなると技術が必要となり気を抜けばスクートとともにうもれて転倒

スキーやスノーボードでも新雪滑走に向いた板は開発されていますがスノースクートにもいよいよその必要が迫られ、日本を中心に何人かのライダーが板部分をハンドメイドしたりスノーボードを加工したりと新雪にフォーカスしたボードを試し始めます

その初期の段階、リサイクルショップで買った「THE END」という名のフリースタイルスノーボードを半分に切って自分のスクートのフロントボードの代わりにとりつけることに

前後のボード形状のマッチングははちゃめちゃですが今までのフロントボードの三倍はあろうかという長さに興奮

テストにわくわくしながらハイクアップして上り切ったピークからの初ドロップ、新雪で充分にフロントボードに加重しても埋まることのない安心感、一つ解放された瞬間でした

その辺りから世界中のスクートフリークの間で自転車で雪上を走るというコンセプトに加えてウインタースポーツの基礎とも言えるスキースノーボードの「板」で滑るアプローチが濃くでてきます

新雪を気持ちよく滑るにはいくつかシェイプのポイントがあり、フロントボードの長さ、ノーズの形状、全体的な幅、よこからみたときのボトムライン、フロントとリアの繋ぎの形状、踏み込んで加速に繋げれるフレックスの良さ、リアボードのテールの形状と長さなどなど

しかしながら、単純に浮力という面でみるとポイントは案外少なくて、それはフロントボードが長いこと、もしくはリアボードが短いこと。
この2点が重要でした。
つまりはスクート本体に対してのボードの位置(セットバック)長さのバランスが重要だったのです。

上記を研究した新雪向けのボードは、その後一気にバリエーションが増えていまではスノースクートで充分にディープパウダーを楽しめるようになってきました。

新たな発見もあります。ハンドル操作で容易に板を立てれるスノースクートはときに前後で長さ180cmを超えるようなスノーボード、スキー以上のサイズのボードも操ることができます。

しかしここで次の課題です。
スキーやスノーボードと同様の新雪パウダー滑走を楽しめるようになったスノースクートですが、どうしても物理的に雪とボード、体までの間にフレームや取り付け部分が存在します。

おいらの雪上自転車
フレームとハンドルがぴかぴか
それが自慢
でも今
そのアイディンティティが
行手を阻む

新雪を滑って滑って気づく、心から湧き上がるような欲求、もっと雪を感じたい。

なんなら道具無しでハダカで飛び込みたい

ベテランスノーボーダーが里山を雪板で滑るように。
レースを引退したアルペンスキーヤーがテレマークに転向するように。
シンプルにすることでより感動を得ようとしているのか

足の裏から伝わるダイレクトで生々しい新雪の感触、雪の無抵抗ななかでもわずかに感じるボードウッドのしなり

それをもっと味わうにはスノースクートはもう少しの進化が必要なのかもしれません。

そうなれば、そこに板と体を固定していないウインタースポーツ(ギア)としてのスノースクートのシンプルさが加わりまだ誰も体験したことのない感動が待っているはずです。

スノースクートで新雪を滑ること、登ること、たのしさ、危うさ。
まだまだ語り尽くせないので新雪シリーズは今後わけて紹介していきたいと思います。

山は予想通り20cmの新雪、マイナス3度、晴れてきました。今日も静かなパーティのスタートです。


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