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CDレヴュー オアシス 『モーニング・グローリー』

「モーニング・グローリー」は1995年に発表されたオアシスの代表作です。20年以上前の作品ですが、いまだによく聞いています。

このアルバムの一番の魅力はノエルのソング・ライティングです。「ワンダーウォール」と「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」の2つの代表曲を聞くと、そのことがよく分かります。

彼の書く曲は叙情的で力強く、心の深いところに届きます。「ワンダーウォール」と「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」の2つの曲は初めて聞いた時から耳を離れません。

ノエルのバラードを書く才能は、彼が影響を受けたポール・マッカートニーに匹敵すると言っても過言ではありません。ノエルのこの作曲能力は全く衰えておらず、ソロになってからも素晴らしい曲を作りづけているのが驚きです。

このアルバムに入っている曲は全部名曲と言ってもよくて、シーズ・エレクトリックのような小品にもオアシスの魅力が凝縮されています。シーズ・エレクトリックはビートルズを思わせるキャッチーなメロディーが印象的で、
オアシスはブリティッシュ・ロックの伝統を引き継ぐバンドであることが分かります。

ファーストでは肩に力が入りすぎていた感じのリアムのボーカルもここでは伸びやかです。さらに力強さを増して、ノエルのメロディーの素晴らしさを引き立たせており、オアシスはノエルとリアムがいてこそと思わずには
いられません。

ファーストアルバムがロックンローラーとして成り上がるためのアルバムとしたら、このアルバムは過去を肯定して、前へ進むためのアルバムです。それが分かるのは、「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」です。「怒ったままで過去を振り返るな」というこのタイトルに、ミュージシャンとしてのノエルの決意が込められているような気がします。

最近、私は9曲目のキャスト・ノー・シャドウ が気に入っています。このアルバムの中では地味な曲かもしれませんが、アコースティックなバラードで聞き込むほどに味が出てきます。これはザ・ヴァーヴのリチャード・アシュクロフトに捧げられたそうです。この曲の中では”cast no shadow"というフレーズが繰り返されます。影がないといった感じで、肯定的なイメージを感じる歌詞です。

過去にいろいろあって辛いこともあったが、これから前を向いて生きていくというノエルの意気込みを感じることがあります。ギャラガー兄弟の少年時代は悲惨なものです。父親から暴力を振るわれたり、警察のやっかいになったりしています。

ファーストではとにかく自分たちの音楽を作り出すことに心を砕いた彼らが、セカンドになると、これまでの人生を振り返り内省的になっていることが分かります。

英国の社会の鼻つまみ者だった男が、Don't look back in anger (「怒ったままで過去を振り返るな」)と曲の中で堂々と歌うことに、感動せずにはいられません。良い音楽には、このように人を救って、前を向かせる力があります。

私は死ぬまでこのアルバムを聞き続けると思います。一つだけ残念なのは、オアシスが解散してしまったことです。兄弟喧嘩が原因です。6枚目のドント・ビリーヴ・ザ・トゥルースのレット・ゼア・ビー・ラヴのようにノエルとリアムが共に歌う曲をまた聞きたいです。


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