心の震えを写し取った繊細なボーカルが魅力 ニール・ヤング「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」
ニール・ヤングは本当に素晴らしいミュージシャンです。冒険を恐れず、絶えず変化して、社会に対する真摯なメッセージも歌詞の中に織り込みながら、心に残る作品を作り続けています。多くのアルバムを出しているので、すべてを聞いたわけではないのですが、70年代に出された彼の代表作と呼ばれるものは凄く好きで、繰り返し聞いています。
1970年に発表された『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』は彼の代表作の一つで、ロックの歴史に残る名作と言われています。初めて聞いたときにすぐに好きになり、それ以来繰り返し聞いています。これは個人的な意見なのですが、このアルバムは春にぴったりだという気がします。この時期は気候が不順で、仕事や生活でも変化があって、心や体がついていけないことがあります。そんな時の支えになってくれるのがこの作品です。
このアルバムのニール・ヤングのボーカルは繊細で儚げです。人間の心のひだにすうっと入ってきて、その部分にある傷を癒してくれるようなところがあります。男としての強さを出さずに、あえて自分の心の震えを声で表現していこうとする姿勢に共感します。ある意味で弱々しく無防備なのですが、
その無防備さと率直さに勇気を感じずにはいられません。
カントリーを基調にしたフォークロックで、メロディーの美しい曲が多いです。私が特に好きなのは2の「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」です。
繊細で美しいメロディーを持った曲です。この曲には深い喪失感が漂っていて、それは60年代のヒッピー・ムーブメントの挫折から来るのではないか
と思うことがあります。尊敬するレディオヘッドのトム・ヨークがこの曲をカバーしていて、嬉しかったです。
4の「サザン・マン」も好きな曲です。この曲はアルバムでは異色なもので、ギターが激しく掻き鳴らされアメリカ南部の人種差別のことが批判されます。後年のグランジを思わせる曲で、ニール・ヤングの激しい一面を知ることができます。