CDレヴュー 美しく独創的な音楽を作り続けるデンマークの至宝 Mew Frengers
Mewはデンマークのバンドです。1994年に結成され現在も活動中。2003年に発表された本作"Frengers"は世界中で評判になり、彼らの代表作として認められています。
私は北欧の音楽が好きでいろいろ聞いているのですが、北欧のシンガーやグループが作り出す音楽は、欧米のものと異なっています。分かりやすい例がビョークです。彼女の音楽は独創的で分類を拒否するようなところがありますが、Mewの音楽にもそんなところがあります。
ぱっと聞いた感じでは、レディオヘッドやコールドプレイのようなイギリスのオルタナティブロックに似ています。でも聞き込んでみると、その分類をはみ出してしまうところが多いと思えてきます。私が一番感じるのは、70年代のプログレとの共通点です。目まぐるしく転調を繰り返すメロディーとか、厚みのある音の作りが似ています。さらにヨーナスのハイトーンのボーカルは、イエスのジョン・アンダーソンを思わせるところがあります。
デンマークという場所がプラスに働いているのではと思います。ポップミュージックの中心地であるイギリスともアメリカとも離れているので、その地で流行している音楽に直接の影響を受けずに自分たちの音楽を作り出すことができます。Mewの音楽は1970年代、80年代、90年代などいろいろな年代の音楽の要素が組み合わさったユニークなものです。欧米から離れているので、自由な視点で各年代の音楽組み合わせて、新しいものを作り出せるでしょう。
聞いていると自然と涙がこぼれてくるような深い叙情を感じるメロディーが素晴らしいです。澄んだヨーナスの声と相まって本当に美しい音楽を作り出しています。ただ力強い面もあって、ギターとベース、ドラムの音が一体になって、強力なグルーヴを作り出します。私はハードロックが好きなので、彼らのこんな面も好ましいです。
”Frengers"のなかで私が特に好きなのは、1曲目のAm I Wry No?と最後のComforting Sounds"です。前者は力強いドラムの音とギターのアタック音で始まるダイナミックな曲です。初めて聞いたときに(おっ、これぞ現代のプログレ)と思いました。”Comforting Sounds"は多分私がすべてのポップミュージックの中で一番好きな曲です。物悲しくて、胸に染み入る美しいメロディーを持っています。静かに始まるのですが、徐々に盛り上がって最後にすべての楽器の音は爆音に近いものになります。9分近くあり、まさに音楽による叙事詩です。歌詞のテーマは人間が分かりあえないことの悲しみを描いており、solitude(独りぼっち)というきれいな響きを持った言葉が効果的に使われています。