情熱のRed
『レッド』はテイラー・スウィフトが2012年に発表したアルバムです。彼女が出したアルバムはすべて傑作・名作と言えるのですが、その中で私はこれが一番好きです。次のアルバムからテイラーの作品はカントリーの要素がなくなってポップになります。それらのアルバムも悪くないのですが、私はカントリーが好きなので、カントリー色がなくなるのは残念でした。
このアルバムでは12曲目のSad Beautiful Tragicや最後のBegin Againに彼女のルーツであるカントリーが感じられます。切ないメロディーと楽器のアコースティックな響きを生かした曲でしっとりとした雰囲気がたまりません。
次のアルバムのポップの要素が一番感じられるのは8曲目のWe Are Never Ever Getting Back Togetherです。これは大ヒットした曲なので聞かれた方も多いでしょう。自分の失恋らしき経験をテーマにしているので結構つらい気持ちもあったかもしれませんが、それを感じさせない明るくてポップなメロディーが印象的です。
6曲目の22もそんな感じの曲で、吹っ切れたような明るさを感じます。カントリー出身の自分のことを自嘲したユーモラスな歌詞も好みです。この曲は歌いやすくて、カラオケで時々歌うことがあります。
このアルバムにはオルタナティブ・ロック的なところもあります。その部分とカントリーの部分がうまく噛み合っているところが、私にとっては一番の魅力です。オルタナティブ・ロック的な要素が特に感じられるのはスノー・パトロールのギャリー・ライトボディとデュエットする10曲目や、エド・シーランとデュエットする14曲目です。カントリーをベースにしながらいろいろな種類の音楽を取り入れていく手法は昨年発表されたFlolkloreで結実します。
カントリーとオルタナティブロックは水と油のように感じますが、異質なものを組み合わせると不思議な化学反応が起きることは多いです。さらにテイラーの親しみやすいメロディーを書く才能が加わるので、このアルバムが名作になるのは自然な流れだったでしょう
テイラーは初期のアルバムでは自分の戸惑いや失恋の悲しみを歌い上げることが多かったです。そんなナイーブで初々しいところが好きだったのですが、ここでは成熟した一人の女性としてリスナーと向かい合います。それが特に感じられるのは1曲目のState Of Graceです。アップテンポで力強い曲で、このアルバムで私が一番好きな曲です。歌詞の中で恋することに真摯に向き合うと宣言されて、何度聞いても心揺さぶられます。ロック色の強い曲でもあります。
このアルバムのタイトルRedは恋の情熱を指していると思うのですが、同時に音楽に対する彼女の情熱も表現している気がします。なんといってもテイラーは曲を書くことが好きなのです。そんな情熱を持っているからこそ
毎年のように質の高いアルバムを出せるのでしょう。