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[処女は恥ずかしい?]処女の歴史⑬日本人の恋愛と結婚・純潔教育から性教育、包括的性教育へ

こんにちは。40代で「彼氏いない歴=年齢」&「おひとりさま」の占い師(占いカウンセラー)・可憐(かれん)です。

現在、占いカウンセラーとして「彼氏いない歴=年齢」・「おひとりさま」の女性のお悩み相談に乗ってます。
「処女であることは恥ずかしいこと?」を検証するために、「日本人の恋愛と結婚・処女の歴史」を執筆中。今回は13本目です(最初の記事はコチラ)。


さて、突然ですが、あなたは学校でどのような性教育を受けましたか?

40代の私・可憐が受けたのは、まず小学校で。1980年代の頃です。
5年生の時、女子だけが教室に集められ、女性の先生や、普段、保健室にいる女性の養護教諭の先生から、月経や初経についての説明を聞きました。
その間、男子は男の先生たちと、校庭でドッジボールやサッカーなどをしていたようです。

ですので、その時代に男子だった男性は、女性の生理について、ほとんど何も知らされていないのです。

次は中学校の保健体育の授業で。1、2時間かそれくらい、あったかどうか。
思春期の体の変化。ホルモンのこと。体の中の「内性器」や、受精のことも習ったかも。
その後、高校の保健体育で。1、2時間かそれくらい。
体の中の「内性器」や、受精、妊娠の仕組み、避妊の方法などを習ったかも。
避妊具について、みんなニヤニヤ、クスクス笑いながら聞いていた覚えがあります。

それだけです。

ほかに、外性器や性交、さらに恋愛や男女が交際することなどについては習った覚えがありません。
そういうことは学校で習うことではなく、友達や先輩などと話して聞いたり、雑誌や少女マンガなどから、「自力で」情報を得て、「自然に」覚えていくのが「当たり前」とされていました。
だからもちろん、理解度や習熟度に個人差がある。

最近でもそんな感じではないでしょうか?
日本では長い間、性については学校で教育されるものではなく、「自然に理解し、習得すべきもの」と考えられていました。
人の尊厳や命にもかかわる大切なことが、学校で、義務教育で教えられていないのです。

性教育とは、性交(セックス)の仕方などを教えるものではありません。いやらしいものでも、いかがわしいものでも、うしろめたいことでも、卑わいで恥ずかしくて、ニヤニヤ、クスクス笑うようなことでもありません。

また、性教育とは、学校で習ったらそれで終わり、大人になったら関係のないことでもありません。
性は生きている間、恋愛や結婚など、人生の大切な場面で意識せざるを得ず、大人の男女も、親や老人になっても、ずっと関わってくることです。

性教育(英語: Sex education)とは、性別や性器、性交、生殖(妊娠や避妊)、男女の体のしくみ、恋愛感情や性的指向、性自認等の自己の性にかかわる事柄に対する考え方、それによって影響される態度や行動の仕方等のセクシュアリティ全般、人間と性について行われる教育全般を意味する言葉である。

Wikipedia

つまり、人が人として生きていく間ずっと、他者と接するとき、異性または同性と関わるときに意識する「性」のこと――恋愛感情や性的指向、性自認、性交。人の尊厳や人権、命にも関わる大切なこと。
また、自分と向き合うとき、自分が自分らしく生きようと、「そのままの自分でいい」と思えて、自分の体を大切にできるように、男女の体や性器の成り立ち、仕組みなどについて、正しい知識を得ること。
 
そういうことを、子どものうちから教えられて、しっかり知ることって、大切だと思いませんか?

でも、私たちの多くが受けた性教育は、時間が短く、内容が不十分であるようです。

日本は性教育が遅れていて、「性教育後進国」といわれているのだそうです。
なぜなのでしょう?

まずは日本の性教育の歴史から見ていきましょう。


純潔教育

戦後、1947年に文部省(現・文部科学省)は「純潔教育の実施について」と通達を出します。
戦後の混乱の時期に、青少年の不良化や男女の不純な交遊の問題があったためです。
その後、「純潔教育委員会」が設置され、1949年に「純潔教育基本要項」を定めて家庭、社会、学校における純潔教育の指導に着手しました。

「純潔」という語句に、聖処女マリアの純潔を大切にするキリスト教が連想されます。それもそのはず、日本のキリスト教信者の間で「純潔教育」を推進する動きがあったようです。

そして純潔教育とは、「結婚前に性交渉をしてはいけない」など、女性に純潔を求める道徳教育という側面がありました。

当時の文部省が作成した「男女の交際と礼儀」というパンフレットには、細かいマナーが書かれており、最後に、
「恋愛から、婚約時代を通じて、特に要望したいことは、結婚までは、お互に純潔を守るというはっきりした心構えであります」とあります。

つまり、交際をしても結婚するまでは性交渉をするな、ということ。

また、その数年後に、文部省から発行されたパンフレット「性と純潔:美しい青春のために」も、なぜ結婚前にしてはいけないのか、しない方がよいのか、という科学的な理由もなく、「するなら安全に」でもなく、「とにかくするな」という内容でした。

このように、性道徳を教え込んで、「性行動は抑制すべきもの」とする「純潔教育」は、1960年代末まで続きました。

(この項の参考と引用:
酒井順子『処女の道程』新潮社 2021年「女の情欲への恐れと制御」
Wikipedia「純潔教育」
四 社会教育の諸活動:文部科学省 (mext.go.jp)

純潔教育から性教育へ

70年代に入り、アメリカから広まった女性の権利拡大を目指すウーマンリブ運動が日本にも波及。
学校教育もそれに呼応したのか、名称が「純潔教育」から「性教育」へと言い換えられます。

80年代にはエイズが世界的に流行し、感染防止の観点から学校での性教育の必要性が増します。
この頃は、死に至る病である性感染症(エイズ)の恐ろしさを伝えたり、妊娠や中絶なども罰のようにとらえて、「脅す」ように性の恐怖を伝えて、「性行動は抑制すべきもの」と教えていました。

性の教科書=AV

学校の性教育がそのような状況なので、人はどこから性を学ぶのかというと。
80年代頃に家庭にビデオデッキが普及すると、大人はアダルトビデオ(AV)から性や性行為についての情報を得るようになります。

その頃から現在まで、私も含めた今の大人たちや子どもたちはみんな、性についての知識や情報の入手先は、友達や年長のきょうだい、先輩から聞いたり、雑誌やマンガ、エロ本やアダルトビデオ。

そして、今の子どもたちの情報源のトップは、「友達や交際相手」「インターネット」とのこと。
インターネット上の情報はまちがったものもあります。刺激の強いアダルト・ポルノ動画なども見られます。そういう動画はたいてい男性が支配的、暴力的で、女性が受け身になる、男尊女卑的で、非現実的、ゆがんだ「妄想・ファンタジー」的なものが多いです。
現在は、スマホやパソコンで、子どもでも無修正の写真や動画をカンタンに見ることができる時代です。

しかし、日本の学校では性、特に性行為については教えてくれない。
長年、日本では長年、大人も子どももアダルトビデオ・動画を「性の教科書」にせざるを得ない状況が続いています。

そして、世界のポルノの約6割が日本1国で作られていて、日本は「性産業先進国」と呼ばれているのだそうです。

学校では性教育がほんの数時間しかされていない「性教育後進国」なのに。

では、なぜ日本では性、特に性行為、性交について学校で教えないのでしょうか?

「性教育元年」は92年

1992年に、文部科学省の小・中学校の学習指導要領が改定。ようやく性に関する指導内容が含まれます。
小学5年の理科の教科書に「ヒトのたんじょう」として、性器が図式化されて載りました。
小学5、6年の保健体育の教科書にも「月経・射精」が登場しました。

92年は日本の「性教育元年」といわれるそうです。

このまま学校での性教育が進み、日本人は正しく、豊かな性の知識を得られるのかと思いきや。

「歯止め規定」

98年、学習指導要領がまた改定されます。

小学5年の理科に、「人は母体内で成長して生まれる」という内容で性のことが含まれます。
しかし、そこでは「人の受精に至る経過は取り扱わないものとする」という「歯止め」がかかりました。
精子、卵子、受精卵は扱うけれど、受精に至る過程、つまり性交は扱わない、ということです。

そして中学の保健体育でも「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という「歯止め」がかかっています。
受精や妊娠、性感染症の予防にコンドームが有効と教えるけれど、妊娠の経過、つまり性交は扱わない、ということです。

現在も、中学校までは性交や避妊は、授業では取り扱わないことになっています。

性交やセックスという言葉すら使えず、正しい知識を教えられなければ、性暴力や性被害について伝えることもできません。

では、本当に、なぜ日本ではこんなに性についての教育が行われないのでしょうか?

日本の性教育の経緯

ここからは、専門家の話を引用します。
以下は、図書館にあった性教育の本から。

 性を語ること――それは、長い間「はしたないこと」としてタブー視されてきました。
 「性教育」といえば、小学校の修学旅行の前に女の子だけ特別教室に集められ、養護の先生がスライドで月経指導(といってもほとんどが月経の手当中心の話)をするといったようなものでした。教師の表情は固く、説明を聞く女の子たちも不安と緊張でコチコチです。一方の男の子は、「サッカーやっていいぞ」の教師の声で校庭に飛びだしたものの、女の子たちの教室が気になって気もそぞろ……。
 では、中学校ではどうだったのか。雨が降ったときだけ授業をする“雨降り保健体育”が主流です。「性教育の熱心」な高校というので聞いてみると、なんのことはありません。産婦人科のお医者さんが人工妊娠中絶の恐ろしさを話す「性脅育」であったりします。
 1992年、ようやく学習指導要領(文部科学省が告示する教育課程の基準。これによって学校の教育の計画や教科書がつくられる)の改定によって、小学5年の保健体育に「二次性徴(月経・射精)」、理科に「ヒトのたんじょう」が登場しました。
 しかし、教科書の記述は「尿の出るところの近くから」「精子は女性のからだの中で卵子と出会って」などと、性器や性交には触れない非科学的なものでした。それでも長い間、性を学ぶことから排除されつづけ、ポルノ情報に頼るしかなかった日本の子どもたちにとっては、男女がおなじ教室で担任の教師から「性を学ぶ」得難い土俵となりました。
 当初は腰の引けがちだった教師たちも、子どもや親たちにプッシュされて性教育の実践力を身につけ、独自のカリキュラムを組んで小学1年生から性教育に取りくむ熱心な学校がふえてきました。
 ところが、2002年、学習指導要領の改定によって、小学5年の理科「ヒトのたんじょう」がけずられ、かわりに調べ学習として、「メダカの発生」「母胎内で赤ちゃんが成長していく様子」のどちらかを各自で調べるということになったのです。しかも「受精に至る過程は取り扱わない」との歯止めがかかってしまいました。さらには、いままで「ヒトのたんじょう」の授業で使ってきた人形や絵本、ビデオなどの教材や性教育副読本は「不適格教材」として廃棄処分。性器、性交を授業でとりあげた教師は、「指導要領」違反として処罰されることになったのです。
 一方、巷にはポルノ情報が野放しであふれかえっています。「子どもに本当のことを教えないで、責任だけを要求することはできない」とは、スウェーデンの性教育の関係者の言葉ですが、まったく同意です。
 「性教育後進国・性産業先進国」のこの状況の中で、では、だれが本当のことを子どもたちに教えるか――それは、子どもの父であり母であるあなた自身です。いまこそ、親の出番が求められるときはありません。
 子どもの性の悩みをうけとめ、その疑問に的確に答えるには、どうすればいいのでしょう。
 それにはまず、親自身が自分のからだや性について、ただしい知識をもつことです。

高柳美知子(社)“人間と性”教育研究所所長・編/“人間と性”教育研究所・著
『イラスト版 10歳からの性教育 子どもとマスターする51の性のしくみと命のだいじ』
合同出版株式会社 2009「あとがき」

 性教育をしたいと思って産婦人科医師になり、もうすぐ20年になります。教育のプロとは到底言えませんが、学校における性教育外部講師の立場から日本の性教育を取り巻く現状を眺めてきました。
 日本の性教育は、世界的に見てかなり後れていると言わざるを得ません。1992年に学習指導要領に「エイズ」が記載され、日本における「性教育元年」を迎えたものの、2003年には七生(ななお)養護学校で行われていた性教育に関してバッシングが起こり、七生養護学校側が最高裁で勝訴するまでの10年間、とりわけ東京都では性教育を行うことが難しい状況でした。そして2018年には、東京都の公立中学の性教育に対するバッシングが再び起こっています。
 現在日本の学習指導要領では、中学3年生に、性感染症予防としてコンドームについて教えることになっていますが、「受精に至るまでの段階は取り扱わないものとする」という歯止め規定があり、つまりセックスを教えずにコンドームについて伝えなければならないのです。そのため生徒が性感染症を自分事だと思えるような授業を展開することができず、現場の先生方も歯がゆい思いをしています。なかには学習指導要領に縛られない外部講師を活用して性教育を行う学校もありますが、そうした性教育を受けられない多くの若者たちが、インターネットやアダルトビデオからゆがんだ情報を取りこんでいるのが現状です。

エレン・ストッケン・ダール、ニナ・ブロックマン著『世界中の女子が読んだ! からだと性の教科書』
高橋幸子(産婦人科医)・医療監修 NHK出版 2019「監修者あとがき」

まとめると、次のようになります。

純潔教育は道徳教育だったので、「性行為は抑制すべきこと」と、性はまるで不道徳なことのように語られてきた。「性について話すことはわいせつ」という意識は、この頃から植えつけられたのかも。

その後は、エイズなどの性感染症を死と結びつけたり、中絶を罪の行為のように扱ったり、性を危険なこととして「脅す」ように教え、「性教育」ではなく「性脅育」のようになっていたこともあった。

子どもは自分の性器を含めた体のことも、「赤ちゃんがどこから来るか」「自分はどうやって生まれたのか」もまともに学ぶことができない。大人もアダルトビデオなどのポルノ情報に頼るしかなかった。

1992年に、ようやく小学5、6年と中学生に、性器や性交について正しく学ぶ機会が得られたが、98年に「性交については扱わない」という「歯止め」がかかる。

なぜ「歯止め」がかかったのか?

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が純潔を重んじ、政治家や文部科学省に働きかけて、性教育を行わせないようにしたからです。
(この辺について、ネットで「性教育 統一教会」などで検索すると、わんさか出てきます。くわしく知りたい人は調べてください。ここでは書き切れないので)

参考になるのはこちらなど
日本の性教育の遅れの裏に「自民党と旧統一教会」 足かせ「はどめ規定」が生まれた背景 | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)

性教育バッシング

先の引用文にあった「七生養護学校事件」とは。
2003年、七生養護学校で知的障害を持つ児童に対して行われていた性教育が「指導要領に沿っておらず不適切」として、保守系の都議会議員が問題視。東京都教育委員会が当時の校長及び教職員に対し厳重注意処分を行います。
元校長は処分取り消しを求めて都教委を提訴。裁判になり、最高裁判所までいき、2013年に学校側が勝訴します。

この事件は国政まで及び、自民党は2005年に安倍晋三幹事長代理(当時)を座長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を発足させます。同年、萩生田光一を責任者とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育を考えるシンポジウム&展示会」も開催されました。

そしてまた2018年に、性教育に対するバッシングが起こりました。
足立区の中学校で3年生を対象にした総合学習「自らの性行動を考える」という授業が行われます。この内容が「学習指導要領を逸脱しており不適切」として、都議会議員から批判を浴びたのです。

この授業を行っていた教員は、
「若年層の望まない妊娠が貧困につながることや、高校1年生の中絶件数が中学までの総数の3倍に跳ね上がる実態があることから、生徒たちに性の正しい知識を身につけてもらう必要があると考え、授業を行いました。生徒たちの自由な話し合いを大切にし、「自分で子どもを育てられる状況になるまで性交は避けた方がよい」と話したうえで、避妊の方法や中絶が可能な期間が法律で決まっていることなど、より踏み込んだ知識を伝えました」
「授業の前のアンケートで避妊や人工妊娠中絶についての知識を問うと、ほとんど不正解。 
一方で、生徒の3割弱が「中学でも同意すれば性交してよい」、4割以上が「高校生なら性交してもよい」と答えました。性への関心は高いのに、自分を守る術や情報を持っていないことが明らかになりました」
(引用:学校の性教育で“性交”を教えられない 「はどめ規定」ってなに? | NHK

10代の妊娠・中絶の件数は以下のとおり。

10代の妊娠する人の数は、国で把握している総数ですと、中絶が一年間に約1万1000件、出産が約7000件なので、10代の女の子たちのうち、約1万8000人が妊娠をしているということです。
厚生労働省HP「令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について」「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況」より

『ラジオ保健室 10代の性 悩み相談BOOK』NHK「ラジオ保健室」制作班 リトルモア 2022

本来は、各学校が学習指導要領より進んだ内容を扱っても問題ないはず。
けれども、避妊や中絶について教えた中学校を、一部の議員が「不適切」と批判したケースもありました。
批判する人たちは、避妊や中絶について教えると、子どもたちが性交をすると思いこんでいるのかも知れません。
でも、事実は逆です。
 
秋田県は、2004年度から中高生に対して、妊娠・出産や避妊、性感染症などに関する性教育をスタート。
2011年度には人工妊娠中絶率が3分の1にまで減少しました。
きちんと性教育を受けた子どもは性行動に慎重になるというあらわれですよね。

上村彰子:構成・文 田代美江子・監修『1時間で一生分の「生きる力」 安全、同意、多様性、年齢別で伝えやすい! ユネスコから学ぶ包括的性教育 親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育――ユネスコ国際セクシュアリティ教育ガイダンスが教えてくれる5歳~18歳のためのはじめて性教育』講談社 2022「大事なとこヌキの性教育、学校現場」

なぜ、性や性交について学校が正しい知識を教えようとすると、政治家から「性交は取り扱わないものとする歯止めがかかっている学習指導要領を逸脱しており不適切」などと、イチャモンをつけられるようにバッシングをされるのでしょう?

どうして子どもや私たちは、自分たちの大事な体の一部である性器や、自分自身を大切にし、相手も尊重し、人と豊かな関係をはぐくむために必要な性交を、正しく学ぶことができないのでしょうか?

日本の性教育

これまでの「処女の歴史」の記事で書いてきましたが、日本は古代から、豊かな性を楽しんでいました。
しかし江戸時代に、古代中国が発祥の儒教の道徳を盛り込んだ「女大学」が出回り、女子に男尊女卑的な道徳教育がほどこされるようになります。

その後、明治民法でも「家父長制的な家制度」のもと、結婚についての法が女性を抑圧します。

戦後は、純潔を重んじる西洋のキリスト教的な「結婚するまでは処女」という、禁欲的、抑圧的な性道徳が、「純潔教育」として主に女子に対して行われました。

80年代以降は、韓国発祥の新興宗教である旧統一教会の教義にもとづいて、文部科学省は「性交は教えない」という歯止めをかけています。

宗教にほんろうされる日本の性教育は、現在、世界の中で相当遅れていて、先進国の中では最も遅れているといわれています。

では、世界のほかの国の性教育はどうなっているのでしょうか?
日本の遅れっぷりを見てみましょう。

世界の性教育

世界の他の国々では、学校教育の全学年を通じて、性の知識・意識を深める取り組みが行われています。

◎授業時間のちがい
中学校での性教育の平均授業時間
フィンランド:17時間/年
韓国:10時間/年
日本:3時間/年
※『こんなに違う! 世界の性教育』(2011)より

アジアの中でも、中国や韓国の方が意欲的に取り組んでいる。

日本では「保健体育」や「家庭科」などで扱われることが多い。道徳教育として取り上げることも。
ヨーロッパ諸国では、「生物学」や「科学」「人間関係」「健康」などの学びとなっている。

◎教わる内容
日本の学校で教わる内容は主に、月経や射精といった「思春期の体の変化」
受精、妊娠、出産にまつわる「妊娠・生命の誕生」
「性感染症」は脅すように伝える

月経や射精、受精や妊娠は教えるが、「歯止め規定」があるので、性交(セックス)については扱わない。
受精・妊娠のために性交は必要なのに、それを教えられず、教えたら、「文部科学省の指導要領に沿っておらず不適切」と批判される。

※2023年度から性犯罪、性暴力防止を目的として「生命(いのち)の安全教育」(性教育としてではなく)が実施されることになった。

◎避妊について
オランダ:初等教育の最高学年(12才)頃に
イギリス:中等教育(11~14才)の「生物学」で
中国:小学校6年生で(正式な教科ではないが、性健康教育の教科書を貸し出している)
韓国:中学校の「技術家庭」で
日本:高校の「保健体育」で

フランスでは、科学や生物の教科書を通して性について全面的に教えようとし、将来に必要な共通の基礎知識や性行動についてしっかり学びとるようになっている。

オランダでは、生物の学習の中で受胎調節(避妊)について詳しく学び、責任ある関係作りや性暴力について考える時間なども設定されている。
性について知ると早くから行動に移すかというと、そういうわけでもなく。性教育に力を入れているオランダでは、15歳までの性交渉体験率が低い、とのこと。
正しい知識を学ぶことで、自分で判断することができるのでしょう。

(この項、参考・引用は、
村瀬幸浩、フクチマミ『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』カドカワ 2022
村瀬幸浩、フクチマミ『おうち性教育はじめます 一番やさしい! 防犯・SEX・命の伝え方』カドカワ 2020)

 2019年7月に視察をしたスウェーデンでは、日本で私が外部講師として中学3年生向けに行ってきた性教育の内容を、小学6年生で、生徒同士でディスカッションしながら学んでいました。避妊や性感染症、性的同意や性の多様性について、テレビの教育番組を使ってディスカッションする授業も盛んだそうで、日本との差を痛感しました。

エレン・ストッケン・ダール、ニナ・ブロックマン著『世界中の女子が読んだ! からだと性の教科書』
高橋幸子(産婦人科医)・医療監修 NHK出版 2019「監修者あとがき」

性交同意年齢は16歳

義務教育では性交について教わる機会がなく、避妊は高校で学ぶ日本。
一方で、性行為をすることに同意できる年齢、「性交同意年齢」は16歳となっています。

知っていますか? 性交同意年齢が13才ということ
学校で教えていないのに
「性交」についての学ぶ機会のない13才が判断を求められている
 性交同意年齢とは、性行為について同意能力があるとみなされる年齢の下限のことです。アメリカでは16~18才(州によって異なる)、イギリス、カナダ、韓国は16才、スウェーデン、フランスは15才、ドイツは14才、日本では13才とされています。この年齢が意味するのは、日本の場合13才未満の子どもとの性行為は全て犯罪とされるのに対し、13才以上になって、成人から性被害を受けた時、暴行強迫があったと認められなければ有罪にならないということです。そのために「暴行強迫があったかどうか」や、「どの程度抵抗したのか」ということを被害者は説明する責任を持たされることになります。
 13才の子が自分の性行為について判断できる力があるのか、ということを私たち大人は考えなければなりません。と同時に、そうした力を育てているか、ということに向き合う必要があるでしょう。
 例えば学校の性教育ではどうかというと、中学校の学習指導要領、保健体育編には「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という歯止めの規定があり「性交」についての学習を除外しています。性交とは何か、それはどういう意味を持っているのか考えさせ、学ぶ機会が設けられておらず、一方で13才の性交同意年齢は引き上げられていないのが現状です。
 また、先に述べた13才以上になった人が性被害にあったとき、抵抗しがたい程の暴行行為があったと認められなければ有罪にならないという問題は、すでに欧米諸国を中心に撤廃されつつあります。そして逆に性行為を働きかける者が相手の同意を得るために何をし、どのような言葉をかけたのかなどを問う、「同意のない性行為をすることを処罰する」方向に変わってきました。性を人権として捉え直す取り組みが、世界的にも重視されるようになってきています。

村瀬幸浩、フクチマミ『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』カドカワ 2022

※2023年7月に16歳に引き上げられました。それまでずっと13歳だったのです。

しかしなぜ日本の学校では、性教育がここまで教えられないのに、性的同意年齢は16歳と定められているのでしょうか?

ぜんぶ、政治がかかわってます。
「個人的なことは政治的」なのです。

長い人生を生きる上で、自分や他者の尊厳や命にもかかわる大切なことを、義務教育で正しく教えられず、「自然に、自力で」身につけなくてはならない、現状がおかしいのです。

学校教育は終えたから、もう大人だから関係ない、ということはありません。性は生きる上でずっと関わってきます。
今回、私は40代でこのことを知り、10代の思春期や、20代の恋愛や結婚を考える時期に知っておくべき大切なことを学ぶ機会を奪われていた、と憤りを感じています。

政治は、男のもの、オッサンやおじいさんたちのものではありません。
18歳以上の有権者のみなさんは、選挙があったら必ず投票に行ってくださいね!

あなたにとっても、だれにとっても、いくつになっても、暮らしやすい社会になるように。
あなたの1票は日本を変えないかもしれない。けれども、投票をしない人が多いことで、宗教票や組織票が威力を発揮している。
政治は自分事なのに、無関心でいると、知らないうちにとんでもないことになるかもよ。

包括的性教育へ

インターネットの急速な普及で、子どもたちがゆがんだ性情報にアクセスできるようになり、世界各国で国際指針を取り入れた性教育の必要性が高まりました。

 世界的な動きを見ると、性教育の目的や内容を示すガイドラインが、1990年頃から発表されています。2009年には、国際的な教育の専門機関であるユネスコが、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』を発表していて、2018年にはその改訂版も出されています。こうしたガイドラインを参考に、多くの国々が、その国独自のガイドラインを作ったり、性教育を義務教育の中に位置づけています。でも、日本は…残念ながらまだまだです。

上村彰子:構成・文 田代美江子・監修『1時間で一生分の「生きる力」 安全、同意、多様性、年齢別で伝えやすい! ユネスコから学ぶ包括的性教育 親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育――ユネスコ国際セクシュアリティ教育ガイダンスが教えてくれる5歳~18歳のためのはじめて性教育』講談社 2022「はじめに(おとなのみなさんへ)」

ユネスコの『ガイダンス』が示す主なコンセプトは、以下の8つです。
①人間関係
②価値観、人権、文化、セクシュアリティ
③ジェンダーの理解
④暴力と安全確保
⑤健康とウェルビーイング(幸福や喜び)のためのスキル
⑥人間の体と発達
⑦セクシュアリティと性的行動
⑧性と生殖に関する健康

これらを5~18歳まで、段階的にくりかえし学び続けていくのが、「包括的性教育」です。

こういうことの知識だけでなく、スキルや態度、価値観などは、子どもだけでなく大人も、いくつになっても必要だと思いませんか?

性教育は、「生命の誕生」「月経と射精」「思春期のからだの変化」「避妊」といった内容だけでなく、また性交の仕方を教えるものでも、卑わいでわいせつなものでもありません。
自分自身を大切にし、相手も尊重し、人と豊かな関係をはぐくみ、安全を確保しながら健康にこの社会で生きるために必要なことです。

いくつになっても学び直しはできる

男女問わず、もう学校教育はとうの昔に終えてしまって、性教育を受ける機会がなかった大人のみなさんの中に、こんな人はいませんか?

思春期や若い頃に、性的なことで失敗をした。
自分の体についてコンプレックスを持った。
友人や知人、好きな人に性的なことでからかわれたり、恥ずかしい思いをさせられた。
性に関することや、異性との関係でトラウマを抱えてしまった。
それらをこじらせて、大人になってもまだ引きずっている。

それ、性教育を学び直したら、乗り越えることができるかもしれません。

大人の学び直しに、以下の本をおすすめします。
(私はこの夏、性教育関係の本を、幼児~大人向けまで、30冊ほど図書館で借りて目を通したのです。3市連携して借りられるようにしているので、30冊になりました)

以下はすべて図書館で借りたもの。児童書コーナーは大人も入れます。取り寄せ・予約も可能(私、図書館に勤めていたもので)。

▲日本の性教育の第一人者、村瀬幸浩先生の本。
アマゾンでも売れ筋ナンバーワン。
手軽に読めるコミックエッセイ。

ただし、これは「思春期の子どもに向けて、親が家庭で性教育をするために、知識を得るための本」なので、「自分が思春期の頃、親はこんな風に接してくれなかった・・・」と、毒親トラウマを発症する危険性もあります。

▲こちらは図書館になく、私は読んでいませんが、村瀬幸浩先生の本なのでおすすめできます。
大人にはこちらがいいかも。

▲図書館に置いてある率が高い。こちらもアマゾンで売れ筋のロングセラー本。
見開きで1つのトピックについて書かれているので、知りたい項目のみ、辞書的に読むこともできる。
特に「彼氏いない歴=年齢」「恋愛経験ゼロ」、性体験がないなどの女性のみなさんで、性行為に不安がある場合、「男女の性器」などについて、図解で正しい知識を得られるので、正しく知ることで不安や恐れを軽減できるかもしれません。

こころとからだの不安によりそう性ってなんだろう? だれもが安心して幸せに過ごすための性教育 セット全5巻 | 北山 ひと美,青野 真澄 | 絵本ナビ:レビュー・通販 (ehonnavi.net)

▲幼児~小学校高学年向けの絵本。5冊セット。
絵本といえどもあなどれません。
「人の誕生」「性器」「性交」「妊娠」から「恋愛」「性的同意」「LGBT」「ジェンダー」「人の死」まで、包括的にまとまっていて、おそらくユネスコの包括的性教育を網羅しています。
絵本なので、すぐカンタンに読めます。
私のイチオシ。日本中の学校図書館・図書室に置いてほしい。


ネットの情報は玉石混交ですが、こちらはわかりやすいです。
大人が学ぶ性教育 自分や相手を守る知識を - ジェンダーをこえて考えよう - NHK みんなでプラス

包括的性教育とは 日本の性教育の現状と課題<用語解説> - 性暴力を考える - NHK みんなでプラス


処女であること、「彼氏いない歴=年齢」や「おひとりさま」であること、性体験がない、などでお悩みの女性の方、よろしければご相談ください。
そのお悩みを軽くするために、あなたに合った処方箋を、占い相談でお伝えできるかもしれません。


さて、長くなりましたので、今回はここまで。
つづきはコチラ

●参考文献
酒井順子『処女の道程』新潮社 2021年
村瀬幸浩、フクチマミ『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』カドカワ 2022
村瀬幸浩、フクチマミ『おうち性教育はじめます 一番やさしい! 防犯・SEX・命の伝え方』カドカワ 2020

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龍泉寺可憐|40代で「彼氏いない歴=年齢」&「おひとりさま」の占い師(占いカウンセラー)
新卒で出版社に勤務
親の介護&コロナで働けなくなってから派遣で図書館に勤務
ライターとしても活動
電話占い師として1年で老若男女のべ750人鑑定
現在、占いカウンセラーとして「彼氏いない歴=年齢」・「おひとりさま」の女性のお悩み相談に乗ってます

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