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Crossing Verse(リンギル舞台作品の脚本)第一部

第一部:「リザと仮面の世界」

1.届けられた扉

リザは玄関のドアを開け、荷物を受け取った。待ちに待った最新のVRゴーグルだ。
「ついに来た!」
ワクワクしながらパッケージを開け、ゴーグルを取り出す。説明書にはこう書かれていた。

“このゴーグルを装着すると、あなたは異世界を旅することができます。”

簡単なセットアップを済ませ、リザはゴーグルを装着した。

瞬間、視界が白く染まり、まるで夢の中に吸い込まれるような感覚がした——。


2.目覚めた世界

リザが気づくと、そこは幻想的な異世界だった。
大きな木々がそびえ立つ。
空には虹色の鳥が飛び交う。
足元にはふわふわと宙に浮く葉っぱが舞っていた。


「すごい……」

驚きながら周囲を見回すと、前方に三体の奇妙な像が並んでいた。
それらはまるで人間のような形をしているが、どこか人形じみていた。 
しかも、全員が仮面をつけている。

ギィィー。

扉の開く音?
その後しばらく静寂が続く。

——カツ、カツ、カツ。

不意に背後から足音が聞こえた。
振り返ると、一人の男が歩いてきた。

彼も仮面をつけているが、そのデザインはどこかミステリアスで、怪しげな雰囲気を漂わせていた。

「これは君のものだよ」

男は、リザに大きなゼンマイを手渡した。そして、真ん中の像を指差した。
そこには、女性の像が立っていた。

3.ゼンマイの目覚め

リザは女性の像に近づいた。
台座にはゼンマイがぴったりと入りそうな穴がある。
「これを……?」
戸惑いながらも、リザは仮面の男を見た。 
仮面の奥の瞳が優しく頷く。

勇気を出して、リザはゼンマイを差し込み、ゆっくりと回した——。

カチ、カチ、カチ……

次の瞬間、像がカタリと動き出した!
まるでオルゴール人形のように、女性の像は優雅に回転し停止するとリザを見つめた。

「そこにある鏡を取って」

リザは指示された通り、近くの鏡を手に取り、女性の像に渡した。

すると——彼女はメイクを始めた!
魔法のように、鏡の前で華やかに変身していく。
そして、ついに台座から降りると、辺りに散らばっていたリングを集め、見事なパフォーマンスを披露し始めた。

手、腰、膝、首、足首、さらには髪の毛までも使ってリングを操る。
まるで生きたサーカスアーティストだった。


それを見た鳥や虫たちが集まり、彼女と一緒に楽しそうに舞い踊った。

「この世界を楽しんで」

女性の像はリザに微笑みかけた。

「次は、あっちのピエロみたいな像をよく見て」

4.笑うピエロと木の目覚め
リザがピエロのような像に近づくと、不意にその像も動き出した。

「おっと、驚かせたかな?」

陽気な声で笑いながら、ピエロの像はリザに草木の束を手渡した。

「さあ、この草木をあの木の像に渡してごらん」

リザは言われるがまま、最後の像に近づいた。そして、リザは木の像に草木の束を渡した。

すると——
像の体がゆっくりと動き出した。
長い眠りから覚めるように、ギシギシと関節を鳴らしながら。

表面に絡みついていたツタがするするとほどけ、木肌のひび割れから小さな新芽が顔を出す。

指先がわずかに持ち上がると、そこから光の粒がふわりと舞い上がった。 
その光を草木の束にかざした。

ポンッ

一輪の花が咲いた。

ポンッ ポンッ ポポポポポ……!

まるで魔法のように、草木の束に花々が咲き乱れる。
赤、青、黄色と…

「わぁ……!」

リザは感嘆の声を漏らした。

木の像がさらに両手を広げる。

パァァァァァッ!!

目も眩むような光が放たれ、辺り一面に花が咲き乱れた!

リザは思わず歓声を上げた。
世界が一瞬で花園に変わったのだ。

木の像が静かに言う。

「生命の舞台へようこそ」

その言葉に、リザはゆっくりと頷いた——。


5.仮面の男の魔法

「さて、そろそろ私も不思議な魔法を見せよう」

最初にゼンマイをくれた仮面の男が、何やら準備を始めた。
魔法を見せてくれるようだ。

しかし後ろで木の像が音を出しながら踊りだす。

「ちょっと待って!今は私の番だから、動かないで!」
仮面の男は慌てて制止する。
しかし、その間にピエロの像が彼の道具にイタズラをしていた。

「さて、気を取り直してもう一度見てごらん。」

仮面の男が魔法を見せようとするが——

道具がない。

「えっ!?どこいった??」

焦る男の後ろで、ピエロの像がその道具をひょいひょいと隠していた。

「この道具がなかったら、魔法ができないでしょうが!」

仮面の男がピエロに怒っている間に、今度は女性の像が別の道具を持っていった。
仮面の男はあたふたしてしまう。

だが、さらにその間にまたピエロが別のイタズラを仕掛ける。

このやり取りが面白くて、リザはついに大笑いしてしまった。

「もういい!」

仮面の男はふくれっ面で言った。

「とっておきの魔法を見せてあげる!」

彼は大きな箱を用意し、リザに入るよう勧めた。

「え……?」

不安になりながらも、リザは箱の中に入った。

——次の瞬間。
身体がバラバラになる感触がした!!

「え!?なにこれ!??」

手が、足が、ふわりと宙を舞い、やがてまた元通りに戻っていく。

「さあ、もう出てきていいよ」

箱から出たリザは、まだ信じられない顔をしていた。

「どうだい?これが僕の魔法さ」

仮面の男はニヤリと笑った。

「君もできるようになるよ。勇気を出して、いろんなことにチャレンジしてみて」

リザはドキドキしながら、ゆっくりとゴーグルを外した。

——現実の部屋に戻っていた。

「夢みたいだった……」

鼓動がまだ高鳴っている。

でも、次は何が待っているのだろう?

第二部へ続く—



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