二人のバランス

(この型は面白いな)

新陰流の型だった。

面白いなって言ったって、私 武術のこと全然知らないから比較の仕様がないんだけどさ。

でも面白かったんだ、型の構造が。


二人で型をつくりあげている。
勝つ役と負ける役がいる。

型って 須(すべか)らく そういうものなのかも
しれないんだけど

二人のタイミングがピタッと合わないと
この型は、ガラガラ崩れ落ちていく。

最初から最後まで、相手と呼吸がつながっていないと
成立しないみたいだった。


型の練習ってさ、
一人で黙々と形を稽古するイメージがあったんだけど

この型では、私は半分の構成要素でしかないんだ。

もう半分の構成要素、相手と有機的につながらないと
この型には ならないんだ。


なんかさ、全然詳しくないけど
武術の演武とかって、やられる人は時代劇の切られ役みたいな、割とどうでもいい役割に見えるじゃないですか。

勝つ人に、スポットライトが当たっています的な。


でもさ、この型だと、
やられる人 刺身のツマじゃなかったんだよね。

あとさ、演劇も相手役とつくりあげていくものなんだけど

演劇って、自分を見て欲しい人が多いからさ
意外と相手と絡めてなかったりするんだよね。

舞台の上に複数人いても

一人相撲を取っている人が複数人だったりしちゃうわけ。


だから、余計に面白かったんだ。

(面白いな、この型)って思ったの。

だってさ、

一人相撲では決して成り立たないように

巧妙に仕組まれていたから。


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