弦が鳴る
ミキサーで身体の中を撹拌されているみたい。
壁に手をついて練行していると
身体の中がドロっとしてくる。
私、普段乗り物酔いしない人なんだけど
車の中で本読んでも酔わない人なんだけど
酔った。
船酔いした。
だって、内臓が嵐の海にいるみたいなんだもん。
「大丈夫ですか?」
「ゲロゲロゲーって感じです」
先生に心配していただきながら、思った。
先生が以前おっしゃっていた「身体の中の粘度が増す」って、この事かな?
手の指先で壁を押す。足元と指先をつなぎながら。
散々身体の中を撹拌したからかな?
手から足がつながった気がした。
身体の中の弦が張れた気がした。
この状態で、先生の指示する動きを加えると
張られた弦が振動する。
弦が振動すると、身体の中で音が鳴る。
今、手は壁を押しているけど
この手に木刀を持っていたら、木刀にその音が伝わるはずだ。
木刀がその音の動きをするはずだ。
手に持つものが人形ならば、人形がその音の動きをするはずだ。
弦が鳴る動きは、内動由来の動き。
弦が張れていないと、外動由来の動きになる。
外動由来の動きだと、この音はしない。
身体の中の音はしないんだ。
足元、指先、1mmでもずれてしまうと、すぐ弦はダランとしてしまう。
音が鳴らない状態になってしまう。
弦が張れる状態を なんとか保ちながら、私は思った。
私が鳴らしたかったのは、この音だ