弓は常に引かれている

熊みたいなんだ、刀禅の先生や先輩方は。

蜂蜜食べたり、居間のお父さんみたいにだらけている熊じゃなくて

獲物と対峙している熊。

一撃を繰り出す寸前の熊。


熊体勢って、世間で言ういわゆる「良い姿勢」には
見えない。

ダンスの決めポーズみたいな格好良さはない。

「良い姿勢」が良い姿勢なんでしょ?

と思って生きてきた私は、ついつい「良い姿勢」をとってしまう。


でも、同好会の先生の説明で少しわかった。

熊さん達は、常に動きの前にいるんだ。
常に、動き始められる場所にいるんだ。

弓を引いた状態を保っている。


ダンスの決めポーズは、動きの終わりかけにいるの。

終わらせてしまうことはないんだけど
桜の蕾が花開いて散る直前、その最も華やかな瞬間を
見せている。

弓から矢は放たれて、
矢が対象に当たるクライマックスの瞬間を
お客さんが味わえるように提示しているんだ。


修行中の仔熊は、ずっと不思議に思っていた。

なんで、この地味で弱そうに見える熊さん達が
強いんだろう?


それは、弓を引き絞っているからだった。

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