虎になりたい

「なんて協調性のない奴なんだ」

「ちったあ周りの言う事を聞けよ」

「あんたのせいで、私は虎になれなかったのよ!?」


私は、自分の腕に対して腹を立てている。
なぜかって?

腕がワンマンプレイヤーであるが故に、虎になれなかったからだ。


刀禅同好会のお稽古は、虎になるお稽古だった。

虎になるには、まず芋虫になる必要があって、
だから芋虫になる練習をしていたの。

(詳細は同好会の先生にお尋ねくださいませ)

芋虫を目指していたら、

腹腔がアコーディオンの蛇腹みたいな気がしてきたり
薄氷上を歩く感覚が湧き上がってきたり

いろいろ良い感覚が生じてきたわけですよ。


よっしゃ、虎になるぜって思うじゃないですか?

それなのに、腕が邪魔をして私は虎になれなかった。


腕って、体幹と分離して勝手に仕事をすることに
慣れている。
ワンマンプレイヤーなんだよ。
勝手に先走って動いちゃうの。

お腹の中で生まれた内圧、それに押し出されて動いてほしいのに
私の腕は、単独で勝手なことをしている。
独りよがりな動きをしている。

「あなたは体幹の部下なのよ。
体幹の言う事を聞きなさい」って言っても
耳を貸さない。

腕が そんなだから、虎のガオーッて飛びかかりに
ならない。
腕だけが掴みに行く動きになっちゃう。

本当は身体全体で飛びかかりたいのに。


ああ、虎になりたい。

虎になったら、きっと身体全体が 大きな手のひらに
なる。

大きな手のひらが、投網漁の網のように獲物に
飛びかかるんだ。


虎になりたいな。

『山月記』の李徴(性格に問題があって虎になっちゃった人)は、虎から人に戻りたくて慟哭していたけど

私は、人から虎になりたくて身悶えしている。

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