風船をふくらます
能の謡
「あーずーまー」と音を伸ばすのと
「ああずうまあ」と音を伸ばすのとで
聞こえる印象が だいぶ違うんだ。
前者は、ふくらまない風船
後者は、ふくらんで どんどん大きくなっていく風船
母音が音を豊かにしていく。
能では、この「あー」から「ああ」にする事を
「わる」と言うらしい。
支えがきちんとしていないと風船はふくらまない。
最初の「あ」だけ出しゃいいんでしょ という身体だと、あっという間に失速する。
先生は、遠くの的を観ていらっしゃる。(多分)
私は、一番手前の的(最初の『あ』)しか目に入っていない。
だからドタバタするんだ。
遠くの的まで観て、支えの位置を もっと深くしないと、われなさそう。
(われると、分身の術みたいになるなあ)
「あーずーまー」だと「ー」のところに誰もいない
布陣なの。
通り抜けられる穴がある。
「ああずうまあ」だと、言葉がシュパパパパッて割れて、忍者の分身の術みたいになる。
抜け穴がなくて、聞いている人は完全に包囲されてしまう。
聞いている人に、ズシッと物語の圧がかかっていく。
今の私は、穴だらけ隙だらけ。
空気漏れまくり。
でも、「あずまあそびの」って言うだけなのに
母音を わるか わらないかで、こんなに別物になってしまうことが面白いので
何とか穴を塞いで、風船をふくらませようとしている。
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