最大限
「最大限丸まりましょう」
「……はい」
(イヤで〜す。大変だから)
でも、丸まらないと手に入らないものがあるから
丸まるの。
それを手に入れるために、この稽古場に来ているのだから仕方がない。
うわ〜ん、丸まると内臓がちぎれるよう。
(実際にはちぎれません)
「木刀を動かす円の頂点は、眉毛くらいまで上げてください」
「……はい」
(そんなことしたら疲れるじゃないですか〜)
でも、眉毛くらいまであげる軌道に修正するの。
なんか、稽古してると
自分が本当に楽して生きていきたい人間なんだなと
いうことが赤裸々になる。
その軌道通るの大変だから避けちゃおう、で
浅いところでお茶を濁している。
「丸まってください」
「……はい」
(今日は、この辺で良しにしてください)
意志の弱さが鋼の如く強いな、私。
でも、大変なんだけど、身体のよくわかんないところが軋むんだけど、内臓がよじれてゲロゲロゲーッて感じなんだけど、
先生のおっしゃるところを使うと
鏡の中で木刀握って立っている私が、なぜか剣士になっていく。
木刀が手に吸いついて、身体の一部になっていく。
この感覚が、人形を遣う時にも必要なんだ。
(…丸まるしかないのか)
私は心の中で あきらめた。
※丸まるのは連続した動作の一部分です。丸まったまま何かするわけではありません。詳細は先生にお尋ねください。