はじめて ゆるんだ

身体がゆるむということを、はじめて味わった。

あたたかいお湯を含んだスポンジを、やさしく握りしめていっているみたい

身体の隅々まで、ほっとする やわらかい湯気が
ふわっと広がっていったんだ。


私は、この ゆるむ感覚を知らなかった。

締めることができない人だったから。

なにも仕事してない筋肉を、さらにたるませることで
ゆるんでいると勘違いしていた。


「筋肉を使いきれていない」
「カチカチにしなさい」

先生に教えていただいて、全身に力をこめた。

カチカチにできるところと、ぶよぶよのままのところ
私の身体は、まだら模様だ。

「ここにも力入れる」
「ここも固くする」

冷凍マグロになりなさいと言われた。

常温放置されて 溶けかかったマグロにしかなれません、と思った。


でも、冷凍マグロになろうと頑張って、そこから
解凍モードに入ったら

今まで、味わったことのない「ゆるむ」が現れた。


山の登りと下りみたい

下りが、ゆるみなんだ。

登らないと下れない。

私は登ることをしていなかった。
登れない人だったんだ。

登れる人は、下ることを考える。
周りの人にも、どうしたら上手に下れるかを教える。

登ることのできない人に、悪気なく
「更に下りなさい」と言うんだ。


私は、それを真に受けていた。
自分が、どこにいるかを理解していなかったから。

登ったこともないのに、下りる練習をしていたのさ。

でも、構造動作トレーニングの先生は教えてくださった。


「猫派さんは、登れてないよ」

「まず、登りの練習をしなさい」

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