足は置いてあるだけ

鼻緒をガッとつかんで、その反動で身体を動かしたくなった。

でも、それは違うんだって。

「足は置いてあるだけです」

そう先生はおっしゃった。


足は置いてあるだけにすると、身体が戸惑う。

「え!? じゃあ、どこで頑張ればいいんですか?」

足は置いてあるだけだと、
手のひらの上に傘をたててバランスをとる遊びの傘、
その傘に自分の身体がなったみたいな気がしてくる。

固定されていない。
身体は常に揺れている。


足で頑張れなくなると、動きの始まる場所が変わる。足からじゃなくて、よくわからない場所から動きが
始まる。

よくわからない場所から始まる動きは、フルアニメーションみたい。
ぬるっとしている。


足から始まる動きは、リミテッドアニメーション。
カクカクしている。


多分だけど、
足から始まる動きは、動きの起こりが見えやすいだろうなと思う。

足が置いてあるだけの動きは、気がついたら動いてた
相手から見た時、そんな感じになりそうだ。

だから、足は置いてあるだけにしたいのかな?

そんな考えが頭をよぎる。


でもさ、全ての挙動をこれに書き換えるんですか!?
マジで!?
正気の沙汰じゃないですよ!?


ちょっと文句を言いたくなっている自分がいる。

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