35.力まずに泳ぐには

(長い上に少し複雑です…)

水泳は、水の上に浮かんで前進したり潜ったりするスポーツであるが、陸上での運動と違う点がいくつかある。

メリット1
重力が1/6となるので、関節への負荷が減少する。
→力を入れずにぶらぶらしていれば進む。

メリット2
浮いているので、一点ではなく全身で満遍なくバランスをとりながら運動する必要がある。接地のような重さを固定できる場所がない。
→ゆらぎの中で動けば良い

メリット3
水圧の関係で深度により空気中にいる時よりも水圧がかかる。自分が動けば水が動いて流体力学が発生する。
→重さを支えにすることも負荷にすることも技術次第。波を推進力と捉えるのも抵抗と捉えるのも技術次第。

水泳だけができないというスポーツ万能の方が案外多いのはそのためではないかと思う。

逆をいうと水泳の常識で話をすると大抵理解してもらえないのは、重力が少なくフワフワしたところで流れに乗りながら進んでいるから、点ではなく面で考えるし、重心の位置も陸上ではおへそ、水中ではみぞおちに変わるからかもしれない。


陸上の運動で筋はどのように力を出すかというと以下のようになる。

アイソトニック収縮(等張性筋収縮)

筋が長さを変えながら収縮すること。動作時に関節の角度の変化によって発揮する力が変わる。

-コンセントリック収縮(短縮性筋収縮)
求心性収縮
手にダンベルを持って、肘を曲げてバーベルを持ち上げる際の動作には、上腕二頭筋は短縮し、力こぶを作りながら力を発揮している。(ポジティブ)

-エキセントリック収縮(伸張性筋収縮)
遠心性収縮
一方、肘を曲げた状態から、ダンベルを脱力せずにゆっくりとコントロールしながら下ろす動作の際には、上腕二頭筋は引き伸ばされながら収縮しています。(ネガティヴ)


アイソメトリック収縮(等尺性筋収縮)
静的収縮
筋の長さを一定に保ったまま収縮すること。両手を壁について力一杯壁を押し続けている状態などがこれに当たる。

アイソキネティック収縮(等速性筋収縮)
ウエイトを持って加速をつけずに一定の速度で動作を行ったり、動作スピードを規定できるトレーニング器具を利用してトレーニングを行う際には、筋肉が一定のスピードで収縮を行っています。

アイソトニック収縮(等張性筋収縮)がある。
筋が長さを変えながら収縮することをいいます。動作時に関節の角度の変化によって発揮する力が変わってきます。

皆さんが普段無意識に行っている動作もこれらの組み合わせで、力を出すという場合イメージするのは、コンセントリック収縮ではないだろうか?

水泳においては、厳密には様々に関節が曲がったり、伸びたり、その時点での力の出し方、筋肉の部位においても若干違うが、どのような筋肉を多くつかっているか?というと、浮くための動作で姿勢維持なので、アイソメトリック収縮がそれに当てはまる。

つまり、体幹トレのスタビライゼーションで、プランクをしたり、空気椅子をしたり、筋を伸ばしたまま維持したり、スタビリティ(安定性)を崩さないまま、モビリティ(可動性)手足を動かす必要がある。体幹から力を出して手先足先に伝えるように動く必要があるが、ついつい使いやすい手や足の関節だけを曲げて動こうとしてしまう。

スタビリティが維持できず動作に振り回されてバランスをくずしてしまう。とバランスを整える作業と泳ぐ動作をダブルでおこなわなくてはならなくなる。

さらにキックやストローク動作としては水から受ける負荷に耐えながら筋肉を伸ばす運動、エキセントリック収縮をして水を押していくので、普段の生活で使う力と反対の力が多く働いている。

力んでしまう人の特徴としては、
1.泳げないと思い込んでいる
2.力を入れないと水を押せないと思っている
3.小さな関節を曲げて動かそうとする

1.については、力んでいるから沈むので息を吐いたり体を揺すったりして水上で踏ん張らなくても浮いていられることを覚え、リラックスすることを考えれば良い。
2.については手の角度を90度にしないといけないと思い込んでしまっていたり深く曲げないと関節を伸ばせないと勘違いしてしまっている。
飛行機が真上に飛び上がらないように、浅めの角度で浅い角度をつければ十分小さな力で進む。
3.については、肩や首膝など体幹から離れた関節とそれに付着する筋肉で体幹を支えようとしてしまう。

またこれは現場で感じることだが、手足を遠くにまっすぐ伸ばして、力が入りにくい場所でストロークを始めようとしたり、浮く力がまだ備わっていないにもかかわらず、細長くなってしまって動けなくなっている。

解決策としては、
1.浮く姿勢は大の字で。
浮くために使える面積を増やすこと。
2.関節を伸ばし切らずに緩めておく。
どちらかというと手も足も手前に置いておく。

そこから、
3.小さな動作から徐々に大きな動作に繋げていく。
4.遅すぎる動作はかえってバランスを崩すので自転車を漕ぐようにある程度テンポ良く泳いでいく。

そうすれば、身体中に力を入れていた自分に別れを告げ軽やかに進んでいく私に出会えるはずだ。


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