29.無事これ名馬
紀尾井町の大先輩トークの続き。[9/20敬老の日]
いいか、これから君が具合悪くなった時、良いお医者さんに巡り会いなさいよ。色んな人がこれからたくさん君を助けてくれるから、色んな人に可愛がって貰いなさいよ。そうすると、誰かが必ず巡り合わせてくれるからね。それからお医者様に見つけてもらえる病気だといいね。それから治療ができる場所にあるといいな。そうすれば先生があなたのために力を貸してくれるさ。
いいか、よく覚えておくんだよ。
弱ってしまったら、泳ぐことも、美味しいご飯も食べられないし、他の楽しいこともなーんにも出来なくなっちゃうんだよ。僕は大きな病気を何度もして、子供の頃から体が弱くてな。喧嘩したって負けちまうし、同級生ができることが全然力では叶わなくて悔しい思いをたくさんしたさ。三途の川を何度も渡るんじゃないかって思ったけど、こうして欲張りにプールで泳いでいるから戻されたんだなぁ。まだこの世でやることを終わらせなさいって、天国には受け入れてもらえなかったんだよ。
僕は前君に、また来年もこの大会で会おうなといっただろ?毎週会ってるけどね。あれ、仲間ってのはどんどん減っていくんだよ。僕はね、学生時代パッとしない選手でな、マネージャーが向いているって、記録係していたんだよ。時計持ってタイム書いてさ。だから君のタイムも毎回おぼえているんだけどな。この前一緒に泳いだあの女性、今回はいないじゃないか!そういうことがこの先どんどん出てくるさ。
うまく泳げなくても早くなくても、ずーっとずーっと大会に出続けていれば、あの人は病気、あの人は怪我そうやって20人のライバルが5年後には15人10年後には10人30年もやっているとな、僕1人になっちゃうこともあるんだよ。
無事これ名馬。
今僕が君にそんなことを言ったって君は何を言っているかわかんないだろ?おじいちゃんのお説教って笑ったっていいさ。でも、頭の隅にちょこっと置いておきなさい。必ず君を救う日がくるから。