秩父・蛍観賞の夜。
10年くらい前に秩父が舞台の脚本を書いていた。
その頃、僕は大きなバイクに乗っていて(いつか自分のバイク遍歴についても書き残したい)休みの日に良くソロでツーリングに取材がてらに秩父に来ていた。
ある時、マス大山総裁が山籠りしたとも伝え聞く三峯山の三峯神社までバイクで登って参拝して、すぐ横のホテルで日帰り入浴させてもらった帰り、大雨に降られて秩父駅の近くの郵便局の軒先で雨宿りをしてたら、知らないおじさんに話かけられて、近くの川で蛍が見れるよって教えてもらった。
それまでも板橋区ホタル生態環境館ってとこで、育成してる蛍をビニールハウスの中みたいなところで見せてくれる日があって、そういうのには足を運んでたんだけど、興味を持っていただけにその日初めて外で飛ぶ蛍を見て、もの凄く感動したのを覚えてる。
川の横に小さな四角い穴にビニールシートを引いたみたいなプールで育成した蛍が、景色の中を自由に飛び回って、周りの木々の影の中に消えたり、空の星に混ざって飛んだり、水面に光を反射させてふわ〜って浮かんだり、光る交尾の宴を心の根元までくらった・・・・、いや、本当に綺麗すぎて泣きそうになった。
それから毎年梅雨の時期になると、色んな土地の蛍を見に行っていて、秩父近郊だけでも4〜5箇所あるし、あとは伊豆の方とか東北とか。長野の辰野の蛍は凄いって聞くからいつか行ってみたいけど、今のところ、やっぱり僕は初めて蛍を見た秩父の川のスポットが好きで毎年来てる大切な場所なんです。
近年は川の周りも綺麗に整備されて、蛍の育成環境も広げられてるのかな。
地元の町内会の人たちが県外からの観賞者も丁寧に迎え入れてくれます。
いつも蛍を見ると、こんな儚くて強い灯りを作品にしたいなぁと想うので、ここ数年は一緒に創作活動してる照明家の千田さんにも来てもらってます。まあ、その年によって(というか行ける日にちによって、が正しいかな)、全っく蛍が飛んでなくて見れない年もあるんだけど、今年は数が多いって聞いたんで、急遽予定を組んで周りに声をかけてこたえてくれた千田さんと役者の井野おりこと例年よりは少人数の3人で蛍観賞に出かけました。
キャンプもそうで、行くまでは面倒臭かったりするんだけど、そこで見た景色から感じるものは東京での生活の中で得られない貴重な体験になるし、アウトプットする際の栄養になることを僕は経験してきたので、フットワークの軽さや新しい体験に興味を持つ力のある仲間は仕事をする上で心強いなといつも想っています。
秩父へは練馬から関越道で花園ICを目指します。
高坂SAで休憩。
高速道路は大好きだし、SAも大好きだし、ハイウェイウォーカー(東日本の高速で配布されるフリーペーパー)はもう何年も集め続けてるくらい一番の愛読書(?)。
サービスエリアに来るとパブロフの犬的に旅のワクワクのよだれが頭の中に出てるのかな。単純にこの10年くらいでサービスエリアのお店は綺麗になりましたよね。スタバとかあるし。
昔は見たことない地元の定食屋とか、お祭りの出店みたいなお店が並んでて、もう言っちゃったけどお祭りに行く時みたいに心が踊るのが、今も続いてるんですよね。
高坂SAには、下りにはウルトラマンゼロが、上りにはウルトラマンが立っておられるのがおなじみです。どうして居るのかは誰も知りません。ウルトラマンの後ろには東京都庁があります。どうしてなのかは誰も知りません。
都庁の高さから察すると股の下にいる子供も結構デカいです。数十メートルあります。
花園ICを降りて、バイパスを使って長瀞をショートカットして秩父まで。ホタル会場まであっという間、近くのお寺の駐車場を貸してもらえます。
今年の蛍の多さがうかがえる出来事ですが、入り口で早くも蛍がマスクにとまって光ってます。
会場で地元の町内のおじさんが「灯りを消してくださいね」と声をかけてきます。蛍の鑑賞会なので、人が集まっても暗くなければいけないので、入り口から道を降りて川までは、数十メートルごとに町内会の方が設置してくれた手作りの灯籠のろうそくの灯りだけを頼りに歩きます。
お化け屋敷くらい暗いですが、進んでるうちに目が慣れてきます。
橋の手前のテントの中の暗闇でホタルの会の人たちがニコニコとして溜まっているので、真っ暗で何が書いてあるかわからない箱に財布の中にある小銭を全部入れると、今年(令和三年)は令和元年の蛍の写真のポストカードがもらえました。
ここまで長々と書きましたが、で、鑑賞した蛍の写真がこれです。どうぞ。
川沿いの公園は綺麗に整備されてるけど、橋はずっと古いまま雰囲気あります。
暗闇でカメラを設定して撮影すると、どうしても空が明るくなってしまって昼間に蛍を撮影したみたくなるのが気になる。僕の知らない良い方法があるのかも知れないが、ホタルの会にいただいたポストカードの写真はもう青空の中を蛍が飛んでるので、これはこれでいいのかなって想いました。
写真で伝えるのは難しいけど、野のお花と蛍とこの景色を撮影するためだけにもっと良いカメラが欲しくなります。
実際は飛んでる蛍だけではなく下の草むらの中にも、みっしり蛍がいます。
手にとまった蛍が飛び立つ瞬間。くるくるって飛んでった。
この場所で見た中では過去一、蛍の数が多かったです。
数が多ければ良いってものでは決してないけど、とても心に沁みる光を見てめぐリズムの10倍は目から心がじわ〜ってしました。めぐリズムも蛍を観賞する10分の1くらいのじわ〜を与えてくれる素晴らしい商品です。
暗いなかで人が集まって、ライトやスマホの灯り、会話のボリュームを控えながら、そっと蛍のあかりを楽しむっていう慎ましやかな雰囲気を壊すとすれば、やはり写真(スマホ〜本格的なハイスペックカメラでも、一人でも集団でも)を撮ろうとする人達で、自分も外で撮影をさせていただく時はその場の空気を感じ取って、迷惑にならないように心がけたいです。
帰りの高坂SA。短い旅の終わり。
でも濃い、高まる、たぎる1日でした。
東京に近づくのはいつも寂しいです。でも人が少ない深夜のサービスエリアでなんか盛れた良い写真撮れた。
売店で購入した椎茸スープの素を無料のお湯をいただいて溶かして、それと焼き鯖寿司を食べました。若廣さんの鯖寿司は本当に美味しいです。SAや東京駅でも買えます。鳥久や金兵衛に並ぶくらいテンション上がる弁当です。若廣の情報だけでも、この記事の高評価をいただくに値する味ですっ。
体験を自分の中だけにとどめておくのには、その感動が深く質量が大きいほど苦しくなるときがあります。
だから周りの人に、その話を聞いてもらう代わりにお土産を渡して、記憶の景色や出来事を言葉で反復してみるけど、それはとても難しいことだから、こうして書いてみるし、こうして写真を撮ってみるし、こうして誰かと一緒に見に行って、体験を、つまりは記憶を共有しておく。
これからもそうだと想う。
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