おばあちゃんのはなし 6

「生きたい理由」

おばあちゃんはずっと働いていた人です。家事をすべて自分でやって、ご近所の行事の面倒をみて、自分の事以上に周りの誰かの事を気遣っています。

だんだんと体が動かなくなっていきました。外出時に連れがいるようになり、家の中の歩行にも手を添えるようになり、抱えられてトイレに移動するようになり、食事も口に入れてもらうようになりました。

あれだけすべてを自分でまわしてきた人が、自分の生きる手段ですら、人にやってもらうようになったのです。

介助の手を添えてもらうたびに「もう死にたいよ。情けないよ。」そう呟いてはうなだれていました。その後、決まってこういうのです。

「でもわしが生きていれば、それなりに年金が入ってくる。それでみんなに少しでも分けてやることが出来る。」

おばあちゃんの「生きたい理由」は、やっぱり自分の事じゃないんです。

いつでも誰かが少しでも喜ぶように。そればかりなんです。

(2009.2.25の記事転載)

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