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ドゥルガー女神系秋祭りに参加してみた(ドゥルガプジョ編)

参加するまでのこと。

最近あちこちでインド系のイベントに参加するようになり、インド人のお知り合いや友達もちょくちょくできるようになったからか、Facebookに流れてくるポストにインドのイベント情報が増えてきました。このイベントはそこで知ったものです。

Facebookに流れてきた募集の画像。どうやら在日ベンガル地方出身者の団体の一つのようだ。
英語で表記されているので日本人にも読みやすかった。

毎年秋に行われるナヴラートリ祭はインド各地で様々なスタイルの祭りとして祝われていますが、ベンガル地方ではドゥルガプジョ(ドゥルガープージャー)という名で祝われます。
そして画像の案内を見ると、午前中みっちりプジョとアンジャリ(プシュパーンジャリともいい、マントラと共に花を捧げる儀式)が行われるとあります。本場のベンガルスタイルのドゥルガプジョ!これは見応えがあるに違いない!

ということで少し懐に厳しいなと思いつつ参加予約をしました。バーコードを読むとGoogleフォームに繋がり、そこで登録します。すると個人番号が割り当てられ、指定された口座にその個人番号で振り込みます。さらに証拠となる振り込み用紙やメールをスクショしてメールに添付して送ります。ここまで複雑なのは初めてでした。何か過去にあったのかもしれません。
ともあれ、無事予約完了しました。

えっ……私の時間感覚、厳しすぎ?

10月13日当日会場へ向かう電車の中で、予約完了時に来たメールに添付されていた画像をもう一度確認してみました。
えっ……開始時間が11時からになっています。
しまった、もっと前もってちゃんと確認すればよかった。そう思いながら10時少し前に会場に着いてしまいました。

果たして、中学の体育館ほどの広さの会場にはパイプ椅子が並べられ、舞台には女神の像が設えられ、受付は開始されていました。しかし像の飾り付け、お供え、祭具などは揃っておらず、始められる状態ではない感じが漂っています。
受付を終え、インド人参加イベントで好まれるraffle(くじ引き)用に貰った番号札を箱へ入れてキョロキョロしていると、主催グループの男性が堪能な日本語で声を掛けてくださいました。まだ準備中だけどぼちぼち始まるので席を取って見ていてください、と案内され、人がまばらに座っている前の方の席に座って眺めていました。途中、綺麗なサリーを纏った日本人女性を見つけて声を掛けてみると、さっきの男性の奥様でした。日本語の司会補足を頼まれているとのことでした。

到着時。まだ準備中という感じだが、
金属の立派な祭具が並んでいてドキドキした。

そのうちぼちぼち参加者が到着し始めました。9割がたインド人のようです。同性グループや家族連れが多く、準備が進んでいる舞台の前で神像を撮り、次に神像をバックに記念写真を撮っています。座っている私は何度か彼らに頼まれてカメラマン役をしました。

準備は主に2人の女性が進めています。そして準備の最中にも時折マントラを唱えています。

右の女性が、儀式中もマントラを唱える僧侶役だった。
これは、プシュパーンジャリ用の花弁を茎から外して集めているところ。

その間にも参加者は増え、次々と舞台前で記念撮影を行います。関係者は舞台端で記念撮影を始め、小さな子供たちははしゃいで走り回り、舞台上と舞台下がまさに聖と俗の渾然一体の様相を呈してきました。

神像や神具を清め濯ぐ聖水を作るための牛乳やヨーグルト、
ティッシュやウェットティッシュ、みな私たちに馴染み深いものを使っていて親近感が湧く。

マイクオンで本番だった。

と、舞台上で準備を進めていた女性が小さなマイクスタンドを持ってきて、マントラ読誦をマイクに通し始めました。時計を見ると11時過ぎ、どうやらここからが本番のようです。
でも舞台周りの様子は全く変わりません。席に座っている参加者もいますが、半分ほどはてんでに神像を写し、記念撮影をし、子供たちはキャッキャと声をあげて走り回っています。到着した参加者の中には、お手製の料理や果物をお供えするために舞台へ上がり、お世話役の女性に手渡したり自分で祭壇の傍らに置いたりしていました。驚きのマイペースです。ならば私も近くで見ようと立ち上がり、暫く舞台前で記念撮影の間から見たり写真を撮ったりしました。

その場を清めるためか、
僧侶役の女性が頭上で手を右回りに回しながら指パッチンを繰り返した。
僧侶役の女性がマントラを唱えながら鐘を手にして鳴らし、周りの女性たちが法螺貝を吹く。
その左横で記念撮影をする家族もいる。

始まって暫くすると関係者と思しき女性が舞台に上がって座ってゆき、神像の前はおおかた埋め尽くされました。上がって行かない参加者は相変わらずのマイペースです。

一旦席に戻ると、側にインド人の家族が座っていました。私の隣はお母さんのようでした。挨拶をして、お話を伺いました。
彼女によると、ドゥルガープージャーは女神の力を讃える、ひいてはwomen's empowerment(女性が社会集団でも個人でも、力をつけて自律的に発揮できるようになること)のお祭りだから、普通は男性のブラーミン(僧侶)が儀式を行うところを女性が行っているのだそうです。
そして彼女は娘さんの同級生がベンガル人で招待を受けた、アーンドラプラデーシュ州出身者でした。こんな風にベンガル以外の人も結構招待されているのよ、とヒンディー語で語る彼女。なるほど、道理であちこちからヒンディー語が聞こえてくる筈だと納得しました。

プージャーは延々と続きます。驚きの長さです。チラリと耳に聞こえてきたのはアシュタミ(8日目)の言葉。ベンガルのドゥルガプジョは6日目以降が特別な儀式を行うのでもしかしたら6日目から10日目までのお経を順に全部読んでいた説が濃厚です。

ようやく13時前に聖水と花を捧げるプシュパーンジャリが始まりました。お世話役の女性がベンガル語と英語で参加者に呼びかけると、参加者はみんな舞台前に集まります。舞台上の女性が花びらを入れた竹籠を差し出しました。参加者の手が次々伸びて、籠から花びらを右手で少し取ります。続いて清めの聖水が金属の匙で一人一人の花びらに掛けられました。今まで参加したことのあるプージャーだと次は順番に舞台に上がって神像に花を捧げ礼拝していたので、これは時間が掛かりそうだなと思っていたら、
「aum…」と台上の女性。
「aum…」と参加者。
マントラを復唱するスタイルです。私も左手と右手を重ねてその上に花を乗せ、一緒にマントラを復唱しました。復唱し終えると、空になった竹籠が回されてきて、そこへ手の中の花を入れます。それを合計3回繰り返しました。その度に新しい花が配られます。また、マントラも3回違うものを唱えました。

竹籠で、参加者が手にしていた花を回収するお世話役の女性。

プシュパーンジャリが終われば一段落です。結局舞台上の神様に近づかずに終わってしまいました。そういう意味では少し残念な気がしました。
神像の左に山積みになっていた再生紙の箱が下ろされ、配られます。頂いて開けてみると、果物と「キール カダム」というお菓子のプラショド(プラサード、お下がり)でした。

「キールカダム」のカダムは花の名前だと教えてもらった。
空きっ腹に染み渡るお下がり有り難や。

プジョが終わって長い1日が始まる。

続いてベンガルのドゥルガプジョの紹介(2021年にUNESCOの無形文化遺産になったらしいです)、この団体の紹介、ご来賓及びスポンサーの紹介とスピーチが続き、ここでようやく日本語の司会補助が入りました。それが終わってランチタイムが始まったのが14時頃、場所を移動してランチ用の部屋でいただきました。ケータリングのインド料理屋さんは普段はナンカレーを出しているのですが、ベンガル料理も作れるお店だったのですね。
メニューは
ムグキチュリ(ムング豆の粥)
野菜のドライカレーにパニール(インド風チーズ)を2切れ後のせしたもの
ベジタブルパコーラー(ヒヨコ豆粉衣の揚げ物)
ロショグラ(ラスグッラー)
甘辛いチャトゥニ
パポル(パーパル、豆せんべい)
でした。

ロショグラとパコラが同居する弁当。
野菜ドライカレーにはツルムラサキが入っていて珍しかった。

ランチが終わって参加者が三々五々会場に戻ってくると、第二部の始まりです。
この時点で既に16時になっており、1時間押していました。大丈夫かしら。

第二部のカルチュアルプログラム、それはもう多種多様でした。日本の一人獅子舞とインド舞踊群舞のコラボ、インドの子供たちによる可愛らしい踊りや歌、かと思うと成人男女によるコーラス、ギター弾き語り、そしてベンガル語の喜劇……。
そう、これはベンガルコミュニティの文化祭だったのです。そして時間は刻々と過ぎて行きます。

踊る子供たち、歌う大人たち、そして笛を吹く日本人。

予定した出し物を全て終え、これで次はアールティー(灯火など光を使い御詠歌を歌う礼拝)かな!?と思っていたら、「さてお楽しみのくじ引きタイムです!」というアナウンスが。
忘れていましたわ……。
色々なスポンサーさんからのクーポンチケット、エアーインディアからのグッズ詰め合わせ、目玉は空気清浄機……カルチュアルプログラムの間も会場を走り回っていた子供たちが舞台の上に集められ、1人1回ずつくじを引いていきます。当たった人は舞台に上がり、その子から賞品を手渡されます。賞品はたくさん準備してあるようで、これも長く掛かりました。終わった時には18時半を過ぎていました。

さあアールティかな!と思っていると、辺りは騒然とし始め、参加者はぼちぼち帰宅し始め、パイプ椅子はどんどん片付けられていきます。
えっ……?
ベンガル語で何やらアールティという単語が聞こえた気がするのですが、周りはもう片付け全開モードに入っていて、ここからアールティーが始まる気配は全く感じられません。日本語で補足司会をされていた女性に、もうおしまいですかね?というと、片付けているし、そのようですという返事が返ってきました。
アールティーはもうされないのでしょうかね、と訊くと、彼女は、数年こうやってお手伝いしているけれど、アールティーをやっているのを見たことがない、今年はまだ早かった方で、去年は2時間以上時間が押したと教えてくれました。
アールティー……(涙)

最後に。

そういうわけで、不完全燃焼な気持ちを抱え、しょんもりしながら会場を後にしました。
日本の会場使用規約だとどうしても時間が区切られてきて、その中で済ませることが求められてきます。もし、撤収時間が延長できたなら、彼らはちゃんとアールティーまでやったかな……でも追加料金が生じるならどうかな……と、世俗的な考えを頭にちらつかせながら電車に揺られ帰路につきました。

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