道草小噺②カラスノエンドウ
”CBB”
という呼び方を知った時には衝撃だった。
子どもの頃の遊び方とか名前とか、身近であればあるほど、地域性が強くて、大人になって、もしくは高校で、今だったら割と近いと思う地域でもこんなにも違うものなのか、と衝撃を受けることがある。
中でも衝撃だったのが、シービービー。カラスノエンドウの通称である。
なぜかわからないけれど、鳥の気持ち。かわいい。
私の地域では、ピーピーマメと呼ぶのが一般的で、ぷっくりと豆が太った頃に片方の端っこを千切り、うまいこと筋を取って中身の豆を爪で掻き出して、笛のように息を吹き込んで音を鳴らす。
家に帰るまでずっと音を鳴らしながら帰る。
(でも、ピーピーっていうより、ブーって感じだよね?)
その頃はそのピーピーマメが、別の地域ではCBBと呼ばれるそれがまさか食べられるなんて思ってもいなかった。
しかもそれがこんなにも美味しいなんて。
昨年のVOID A PARTさんでの照り焼きテンペ丼の野草スペシャル。
サラダにカラスノエンドウ。
そこら中に生えていて、割と勢力強めで、どちらかというと邪魔者扱いされがちな、それこそ”雑草”という言葉がぴったりなカラスノエンドウ。
何がきっかけで知ったのか記憶にないけれど、2012年に初めて食して以来毎年飽きることなく食べているお気に入りの野草のひとつ。
本当は、おひたしが一番好きなのだけど、一番作るのはサラダ。
理由はシンプル、カラスノエンドウは、茹でるとむっちゃ縮むからだ。
あまりにも縮むので、毎回ショックを受ける。本当に、縮む。
あんなにも苦労してちまちま新芽を摘んでいっぱい獲れたと思ったのに(冒頭で豆の話をしたくせに、私が好んで食べるのは、新芽(豆も食べられる))、茹でたらたったのこんだけ!となるがっかり感が他のどんな野草よりもでかい。
だから、とっておきの時にしか作れない、究極に簡単で材料費は極めてタダに近いのにものすごく贅沢な食べ物なのだ。
これぞ、ケを極めたハレ。
いつもお世話に成っている小林ファームさんの畑。
オオイヌノフグリとハコベとカラスノエンドウと、
そしてブロッコリが共存している。
(ブロッコリがメインの株の収穫を終えて脇芽がたくさん出る時期の写真)
そんなカラスノエンドウの旬は、新芽狙いなので3月くらい〜4月の中頃くらいまでで、(野草は好き勝手に彼らのタイミングで生えてくるから”旬”がむっちゃリアル。)味のイメージとしては豆苗。
なんてったって、豆の新芽だからね。
(むっちゃ関係ないけど、スイートピーってsweet peaでつまりは豆だって数年前に知った時の衝撃は忘れられない。むっちゃ関係ないけど。)
ミニチュアの豆苗がカラスノエンドウ、と思ったらおそらく間違いはないと思う。
そして究極の旬だからとにかく素材そのものが持つエネルギーが強く、のびのび好き勝手育っているものはやっぱり美味しい、そんな感じです。
これはいつかの味噌汁。(友人の写真を借りました。)
おいしい食べ方ナンバーワンはおひたしだけど、
生でもいけるのでサラダ(茹でないから縮まないしね)、
もちろんパスタにもいけるし、天ぷらにもいけるし、
味噌汁やお澄ましの実としてつかっても見た目にも可愛い。
そろそろ、あたりを見渡すとカラスノエンドウがたくさん芽を出しているよ。
めげずに新芽をたくさん摘んでおひたし作ってみるかしら。
(3月末あたりからお弁当や出店でも野草登場しまくります。詳しくはまた追ってお知らせしますのでお楽しみに。)
去年の野草のフルコース「星屑と道草」の一皿目。
真ん中の緑のかたまりが、カラスノエンドウのおひたし。
生春巻きもカラスノエンドウ入り。
その他のメニュー詳しくはこちらへ。
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<カラスノエンドウのおひたし>
材料
カラスノエンドウの新芽
醤油
胡麻
作り方
①カラスノエンドウの新芽を摘む。
犬の散歩コースではない、除草剤も撒かれていないであろう場所で摘む。
できるだけアブラムシが付いていないエリアを選ぶのもポイント(3月中くらいは大丈夫かな)。
贅沢に柔らかい部分だけを選って摘んでもいいし、またすじすじしていなければ食べられるので、新芽を摘んで齧ってみて、すじすじになる一歩手前くらいを狙って大きめに摘んでもいい。
自分が食べる範囲であれば、多少、ね。
②カラスノエンドウを洗う。
3月〜4月初旬はまだアブラムシの登場が少ないので割と洗うの簡単でいいけれど、暖かくなってくると(花がつくと?)アブラムシがつくようになる、これは仕方がない。アブラムシが付いている場合は、しばらく水に放ち、振り洗いし、水を変えてまたしばらく水に放って振り洗い、をアブラムシがいなくなるまで繰り返す。
③鍋にお湯を沸かし、塩をひとつまみ入れる。
④カラスノエンドウを入れて、全体に満遍なく火が通るようにお箸でかき混ぜ、再び沸騰したらざるにあける。
⑤軽く絞って刻む。
素材がすでに”出汁”を持っているのできっちりしぼらずあえて水分を残すイメージ。
柔らかい場合は1cm〜1.5cmくらいに、ちょっとすじすじしかけていたり硬い場合は細かく刻む。
⑥ボウルに入れて醤油をたらしてお好みで胡麻油と胡麻をかけて全体を混ぜたらできあがり。
素材そのものに味があるので、醤油は気持ち程度(風味をつける感じ)で。
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<おまけ①>
The BeatlesのThe Blackbird。
この曲ギターで弾けたらかっこいいな、て思う曲。
お察しの通り、カラスノエンドウ→カラス→黒い鳥→Black Birdという流れです。でも、絶対この曲はカラスじゃないと思う。
<おまけ②>
カラスノエンドウがマドレで初めて登場した時(2012年)のブログに、
食べられる草が増えたら、それだけで、もし何かあった時にも、たぶん焦り具合が減る、はず。
それだけで、生きる力になると思う。生きる力があると、”ない”ということが、そこまで問題にならん、というか。
”ない”というのは、思い込みっていうか。
ぜんぜん、なくないねんよな、いろいろ。じつはあるんよな、て思う。
結構、生きていけるもんなんよな、物あんまりなくっても。
て書いていた。
強くなりたい、生きる力をつけたい、とむっちゃ思っていたことを今改めて思い出す。根っこはきっと何年たっても変わらないのだろうね。