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俺は途方に暮れていた。十二月の乾いた空気が疲れ目をちくちくと刺してくる。 「すみませーん!」 先ほどから古い民家に向かって声をあげているが、応答はない。 ずいぶんと久しぶりにやって来たこの町は時間が止まっているみたいだ。さびれた駅から徒歩三十分にある、片田舎の景色。車が通るのもやっとなほどの細い道に、密集する古い家。昔から変わっていない。 冬風が小道を吹き抜ける。晴天の下に侘しさが積もっていくのを散らすように、俺はわざと声を張り上げた。 「誰かいませんかー!」 俺の