閑話休題⑥「泥酔者の自動筆記(ドランク・ライター)」

ある程度覚悟はしていたけど、北海道から帰って来たら仕事が山積みとなっていて、今週はよく働いた。印刷屋さん、早く建物図面用紙を送ってください。困ってます。

そんな春の訪れの時季に文字通り水を差す雨の今夜、狭い甲奴町の狭い狭い同じN地区の後輩達が飲みに来た。一人が就活でひさびさに地元に帰って来たから、タイミングの合う地元にいる他の三人達と四人で来てくれた。

そういえば最近この面子で飲んでないな~、と思ってたら降って湧いた飲み会だったのですごく楽しかった。みんな僕より一回り以上年下だけど、社会人になった者、学生の者、みんな普段の生活による成長が会話の端から見て取れて、彼らが子どもの時から知っている僕からしたらとても不思議で温かい時間を過ごさせてもらった。

最近の地元の飲み会で、僕の中では恒例となった飲酒マリオカートも楽しんだ。最近ちょこちょこ色んな所でマリオカートをやらせてもらってるおかげで、少しずつ勘が戻って来ている気がする。僕の骨クッパが最速となる日は思っていたより近いかもしれない。誰よりも速く、風になりたい。

最近気がついたけど、気持ち良く酔っ払っている時の方がいい感じの文章が降ってくる気がする。そういう条件で発動する念能力なのかもしれない。

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近所の子どもたちの相手をしながら地元の行事にのめり込む。もちろん仕事もやっている。でも家族との心はどんどん離れて孤独感が膨らんでいく。そんな日が続いていた。

更に孤独感が深まっていくきっかけがあった。同級生たちが次々と結婚して家族を作っていく。自分だけが周りから取り残されていくような焦燥感、劣等感。僕が他の事にかまけている間に、みんなは着々と家庭を、幸せを築いていた。

こんな事ばかりしてちゃいけない。僕も焦っていたし、親も世間体があるから、ある時は遠まわしに、ある時は露骨にも結婚相手を探し始めた。色んな人たちから紹介を受けて婚活もした、見合いもした。デートも何人かとして頂いた。気の利く娘もいた。かわいい娘もいた。優しい娘もいた。でも上手くいった試しはなかった。

今なら自分でも良く分かる。理由は単純だった。僕は、この時の相手方たちに好意を抱いていなかった。自分が相手を好きにならないのに、どうして相手が自分を好きになってくれると思っていたのか。大きな勘違いだ。

でも、この時の僕にはそれが分からなかった。毎月の様に婚活パーティーや見合いやデート、でも上手くいかない。僕の中のビンは、真っ黒な澱でいっぱいになっていった。

ある時、ふと気がついた。僕には、あの感情がない。それは恋だ。絶望した。人を好きになれない僕はいったいどんな人生を送ることになるのか。自分で自分が恐くなり、段々と人との関わりが恐ろしくなってきた。

町内ではお調子者で通っていたから、その仮面を被り続け、心の中ではそんな自分を冷淡に見下していた。

それでも、もしかして、ひょっとしたらと思いながらも、紹介してくれる相手がいれば誰にでも会った。もう、破れかぶれでどうにでもなればいい、と思う毎日だった。

そんな風に続いていく毎日に、とても、疲れていた。

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