
お題note①:秋葉監督と戦術
※この記事は、海月の妄想で出来ています。
十分に注意して読んでください。
よくTwitterを眺めていると、
戦術がない、または戦術が選手任せだと言われる秋葉監督。
果たして本当に秋葉サッカーには戦術はないのか・・・
その謎を解明すべく、我々は三保の奥地へ向かった――

はじめに
まず最初に物申したい。
「そもそも戦術って言葉が意味を多く含み過ぎて良くない。」
スタートからガウガウ噛みつきますが、言葉の意味としては戦術=戦い方です。3バックか4バックかを決めるだけでも戦術だし、5レーンやらゲーゲンプレスやら、なんだか海月みたいな素人にはよく分からないものまで戦術なんです。
逆に、これを全部まとめて戦術と呼んでいる方がどうかと思う。
なんかもうちょっといい日本語ないのかよ、頑張れよ日本語。
などと、言葉尻を取って憤りを感じていますが、今回はそんな言葉遊びの話をしている場合ではないのです。
実はこんな戦術のせの字も分からない海月に、「秋葉監督と戦術」の話を聞きたいと大金を払ってくれた方がいます。
冷静になってください!
そのお金を持って本屋さんへいけば、いくらでも高尚な戦術本が買えますよ!
そっちの方が1億倍は役に立つはずですし、地元の本屋さんも喜びます!
そんな事を思いながらも、プレゼントに大変弱い海月は、ホイホイと受け取ってしまったのです。
そして受け取ったのならば、それくらいの価値のある記事を書かねばなりません。
しかし、内容に深みをもたらす事はまず無理なので、せめて本1冊くらいの文字数を書かねばならぬと決意しました。
(それも絶対無理なので、目標を5000字くらいにしておきます。)
戦術ってなに?
さて、良い感じに文字数を稼いだ所で、戦術について少し掘り下げてみようと思います。
そもそも戦術とは何か、と真剣に考えた場合、言葉の意味からいえば、試合に勝つために考えられた戦い方の総称だと定義付け出来ると思います。
ここで重要なのは「試合に勝つために」という部分です。
試合に勝つために、相手に強烈な個を持つ選手がいれば、それを防ぐ為に洗練された守備組織が生まれ、その強固な守備組織を崩す為に、新しい攻撃の理論が生まれてきました。
このように戦術の進化は、常に優れた個であったり優れた組織を乗り越える為の物として、対相手という軸の上に発展していったのです。
しかし、近年、対相手という軸での戦術的な進化に限界がやってきました。
11人対11人と人数が決まっていて、フィールドの広さもある程度決まっている等、サッカーのルールに則って行うゲームですから、そのルールの範囲内で作り出せる戦術なんて、必ず上限が来るのです。
そしてあらゆる戦術と呼ばれた物は、徹底的に分析をされ、その対策が立てられるようになり、さらにその対策は明文化されインターネットによって光の速さで世界中に広がっていくようになりました。
あらゆる戦術の赤本がいつでも誰でも見れるよ!って感じです。
そんなあらゆるパターンが出尽くした戦術君の次の進化は、今まであった戦術をいかに速く遂行するのかという時間的な進化に軸が移ってきました。
いくら赤本で対策を打たれても、相手が対応出来ないくらいの早さで遂行したら対応出来ないよね。という脳筋な考え方です。
結構、雑なアイデアでしたが、これがめっちゃ強かった。
圧倒的な運動量と速さは相手の思考も奪い、相手に何もやらせず圧勝するチームがチラホラ出てきたのです。
そこから先は、相手より早くという思考するチームがどんどん増え、今、サッカーは大高速化時代を迎えています。
そんな速さを貴ぶ現代サッカーにおいて、戦術とは、より早く次のプレーを選択出来るようにする作業手順書となってきました。
その理由としては、事前に行動を定めておけば個々の判断が高速化するメリットがあるからです。
例えば、「奪ったら相手DFラインの裏へロングボールを蹴る」という戦術があったとします。
「奪ったら相手DFラインの裏へロングボールを蹴る」だけの指示だと、
①ボールを奪う
②味方の位置を確認
③味方の方向へロングボールを蹴る
という動作になります。
これをもう少し細かく作業手順書を書いてみましょう。
「奪ったら同サイドの相手サイドバックの裏へロングボールを蹴る」
とすると、
①ボールを奪う
②同サイドの相手サイドバックの裏へロングボールを蹴る
で終了です。
まず出し手は、味方の位置の確認やどのような方向へボールを蹴るかを判断しなくてもよくなります。そして、受け手側もどこにボールが出てくるのか分かっているので、動き出しが早くなります。
これだけで、全体のプレーが何秒か早くなるでしょう。
作業手順書でどこまでの範囲の行動を定めるのかは、監督ごとに違いがあると思いますが、この時間的な速さ重視のトレンドが続く限り、作業手順書はどんどん分厚くなっていくことは間違いありません。
現代サッカーはこのように準備段階で出来る限りの効率化を行い、戦術遂行の速さを競うようになってきたのです。
以上の事から、現在における戦術とはチーム全体の時間的効率化を行う作業手順書のような物だと海月は考えています。
作業手順書の落とし穴
効率化出来るなんていいじゃないか。
と、弊社取締役が言いそうですが、実務が分かっていない取締役はお引き取り頂きたい。ちゃんと落とし穴も存在します。
まず、スカウティングが100%正確である必要があります。
これが非常に難しい。エスパルスもそうだったように、選手が離脱したり、逆に戻ってくるだけでも、戦い方が変わります。
そんな相手チームの内情まで全部把握していなきゃ出来るわけないじゃん!と、いつも思いますが、それをやってのけているのですから分析官の皆さんは大変です。お疲れ様です。
ちょっと話がずれましたが、前提となるスカウティングが間違っていた場合、それをもとに考えられた作業手順書は、まったく役に立ちません!
それどころかチームにマイナス要素しかもたらさない悪魔の書となってしまうのです。
先日、J1の予習として鹿島vs町田の試合を見に行って来ました。
正直、試合展開がJ2とは比べ物にならないくらいの速さで驚きましたが、ちょっと不思議に感じた部分がありました。
町田がとにかく奪ったら、セフンへロングボールを蹴っていたのです。
もちろんセフンが空中戦に強いのも知っていますし、そのストロングポイントを活かそうとしていた事は分かっています。しかし対戦相手の鹿島CBも、J屈指のエアバトラーである植田と関川です。
セフンは、その2人にほとんど仕事をさせてもらえず、結果として、セフンへのロングボールは、鹿島へのプレゼントパスのようになっていました。
最終的に、試合終盤で投入したデュークが疲労が見え始めた植田・関川に空中戦で勝ち始め、準備してきたであろう攻撃が見えましたが、そこまでで失った3失点が重く、町田はなすすべもなく敗北したのです。
鹿島のパーフェクトゲームと言ってもいい試合でした。
ここで気になるのは、やはり勝てないのにも関わらずセフンへロングボールを蹴り続けた町田です。なぜそんな選択をし続けたのだろう?と考えると、おそらく作業手順書がそうだったから。という回答が一番しっくり来ます。
町田が、
・スカウティングでもっと違う鹿島CBを予想していたのか
・植田・関川に対してセフンが勝てると見込んでいたのか
原因は分かりませんが、作業手順書が悪魔の書に変わった典型例だと考えています。

秋葉監督とパワー
さて、ここからはもう少しエスパルスのサッカーにフォーカスしていきます。
秋葉監督がよく使う言葉として「パワー」という言葉があります。
このパワーがなんなのかと説明する事が非常に難しくて、体幹的な強さの事だったり、走力だったり、切り替えの早さだったり、ボールを扱う技術であったり、そういった物を全てまとめた物がパワーだと個人的には思っています。
このなんとも曖昧なパワーという単語。
海月独自の解釈はこんな感じです。
まず、選手一人一人に能力に応じた個人パワー数値があります。
乾貴士なら100パワー。海月は1パワー。みたいな感じです。
この選手個々のパワーの総和(以下、この総和をチーム基礎値と表す)に戦術による効率化係数を掛けた物がチーム力となります。
そして、このチーム力の大きい方が試合に勝ちやすいと考えています。
何を言ってるのかさっぱりだと思うので、数式にしてみましょう。
例えば、出場選手が全員海月のチーム海月。
海月の個人パワーは人類最弱の1だけど、画期的な戦術がドはまりし、チームが凄い効率化され、戦術効果で1人で二人分の働きが出来ちゃいました!みたいな条件とします。
すると…
チーム基礎値(1パワー×11人)×戦術係数(2)=22パワー
チーム海月のチーム力は22パワーとなります。
対して、出場選手が全員乾貴士のチーム乾。
もう全員乾だと、あっちこっちでボールに触りたい乾貴士が大量発生し、乾貴士の渋滞が発生して、凄く非効率なサッカーになりそうです。
なので…
チーム基礎値(100パワー×11人)×戦術係数(0.8)=880パワー
※戦術係数は適当です
チーム乾のチーム力は880パワーとなります。
この条件でチーム海月とチーム乾が対戦すると
22パワー vs 880パワー で、チーム乾が圧勝します。
ここで聡明な小学校算数履修者の皆さんは、お気づきになると思います。
「戦術って大切だ」という話です。
今回、チーム乾の対戦相手が、チーム海月と言うアルティメット雑魚だったため圧勝出来ましたが、もし個人が80パワーの11人チームには戦術次第で負けるって事です。
能力がある選手が11人揃っているのに、負けてしまうとはもったいない!
じゃあ、戦術をしっかり整備した方がいいよねって普通の人なら思い当たるはずです。それが普通です。
しかし、秋葉監督は違いました。
秋葉監督は、戦術係数を上げるのではなく、個人パワー(チーム基礎値)を上げる方に全振りしたのです。

チーム基礎値全振りの解
なぜ、戦術を整備せずにチーム基礎値へ全振りしたのでしょうか?
理由としては、J2の中では強大な戦力を持っている事が原因だと考えています。
そもそもJ2リーグでは選手個々のパワーが飛びぬけているエスパルス。
個々の選手が、しっかりと走り、球際で戦い、持っているパワーを100%出せば、戦術係数でチーム力を上げなくても勝てちゃいます。
なので、秋葉監督の選択は、
・個々の選手が100%のパワーで戦えるようにする事
・エスパルスの戦術係数を出来る限り減らさない事
の2点でした。
「エスパルスの戦術係数を出来る限り減らさない事」とは、なんのこっちゃと思うでしょう。簡単に言えば、対戦相手がどんな特殊な事をしてきても、対応出来る柔軟性を持たせる事です。
昨今の作業手順書のように、プレーを事前に選手へインプットするような戦術では、イレギュラーな対応が難しい場合があります。
前述した町田の話のように、どうしてもインプットされた戦術がプレーの第一候補になってしまう為、悪いと分かっていても繰り返してしまうという現象が現れるのです。
悪い事を繰り返してしまうという事は、戦術係数が下がっている事を意味します。
そういう事が起こらないように、相手の出方を見ながらそれに対応し、後出しじゃんけんが出来る事が理想です。
もちろん練習では相手チームの情報はある程度伝えていましたが、それにとらわれすぎず、対応出来る対応力と柔軟な思考が重要でした。
さらに、特に戦力的に飛びぬけていたエスパルスに対して、J2リーグの各クラブは普段とは違う「対エスパルス用特殊戦術」を準備してくるチームが多かったです。
相手チームはエスパルスの長所を出来る限り消し、短所を思いっきり殴れるような準備をしたいと考えます。その時に、エスパルスの長所と短所がはっきりと分かる方が特殊戦術が作りやすくなります。
相手に対策されない為に、エスパルスは出来る限りチームの形をぼかさなければなりませんでした。
そこで、秋葉監督がとった手段は、出場選手によってチームの色が変えるカメレオン作戦です。出場選手は当日にならなければ分かりませんので、相手は対エスパルス用の戦術を作りにくかったと思います。
もちろん出場選手によってチームの色が変える事は色々な弊害がありました、その中でも特にチーム全体の成熟という部分ではかなり遅かったとおもいます。
三保活365でも書きましたが、チーム全体がうまく回り始めたのは、9月28日のアウェイ徳島戦。そこまでかかったのは、このチームの色が変わるカメレオン戦術のせいだと思っています。
しかし、この対応力とカメレオン戦術によって、相手の戦術的有利を少なくさせる事には成功したのです。
(秋葉監督のサッカーは、水戸の頃からあまり変わらないイメージもあるので、監督の好みなのかもしれませんが、結果的に同じ効果が出ているので狙ってやっている事にしました。)
J1へ向けて&まとめ
さて、戦術的な補正を準備出来ない分、うまくいかなくなった時には、「相手より走る」とか「戦う」という部分でチーム基礎値を上げるしかなかったのが、秋葉エスパルスです。
2025年からはJ1で戦うわけですが、対戦相手はJ1様ですから、もちろんJ2よりも相手のチーム基礎値は高いです。むしろ、エスパルスよりチーム基礎値が高いチームがゴロゴロしています。
つまり、J1で戦っていく以上、戦術での補正をかけていかなければ、チーム力で勝てないわけです。
じゃあ、早く戦術を整備しないと!
と、なりますが、ここにも問題があります。
戦術というのは、だいたい、
自分がボールを持っている時に、速攻型か保持型かの2種類
相手がボールを持っている時に、どの高さからプレスをかけるか(ハイプレス・ミドルプレス・ロープレス)の3種類
この組み合わせから出来ています。
ちなみに、J1様はこれが全部出来ます。
この全てを試合の流れや状況によって使い分けが出来る。これがJ1クラブであり続けるための最低ラインです。
そして現状のエスパルスでは、自信を持ってJ1でも通用する!と言い切れるものは一つもありません。
さらに、とりわけ今のJ1リーグは、ハイインテンシティを求められます。
↓インテンシティが分からない人はここ↓
J2リーグでさえも、インテンシティが高いチームを苦手としていたエスパルス。これがもっと速く、強度が高くなったJ1でまともにやりあったら、J1の強度に慣れるまでだけでも、10連敗くらいしていそうです。
しかし、インテンシティから目を逸らしても、上記の通り戦術で誤魔化せるほどの戦術的なベースがチームにありません。
インテンシティも戦術もないなら、どちらかだけでもJ1規格にするしかありません。今までやってきた事を考えると、まずは「走る」「球際戦う」という部分を強調したトレーニングを重ねて、まずは個人をJ1規格に近づくしかないという結論になると思います。
自分で書いていてめちゃくちゃ不安になってきますが、J1とはそういう世界です。それを受け入れて、なんとかJ1にしがみ付きながら、チーム力を上げていくしかないのです。
不安を煽るような話ばかりをしていますが、そんな中にも光はあります。
今年の新加入選手達の中で、弓場・小塚・中原は個人で状況を引っ繰り返せる選手です。攻撃と守備のバランスもあるので、どの選手がどこで使われるのか、現状では分かりませんが、組み合わせ次第で乾にかかる攻撃時の負担は軽減されるはずです。
少なくともユースとの練習試合では、そういった意図が見えました。
攻撃は、作業手順書にハメこまず乾のファンタジーに賭け、守備は相手より走る事で解決する。まずは、そこからスタートです。
現状で出来る事は、まずそこから。
しかし、J1上位、優勝を目指していくのならば、戦術的な要素も増やしていかなければならない。その過程に今、エスパルスはいます。
そんな成長過程のチームに秋葉監督が「どんな順番」で「何を」チームへ仕込み、どうやって戦っていくのか。
そういう部分にも注目しても面白いと思います。
思っている以上にJ1とJ2の差はあります。
サポーターも覚悟を持って、共にチームを支える存在であって欲しいと思います。
(6666文字)
