【もうすぐグローブ座】ハムレットお勉強note③
これのつづきだよ
【レアティーズの怒りと決闘】
フランスから戻ったレアティーズ(オフィーリアの兄)は、最愛の父が殺されたことに激怒し、王を糾弾し荒れ狂う。
民衆がレアティーズの味見方になりそうな気配を感じた王は、レアティーズに『お前の父親はハムレットに殺された』という事実をつげ、彼の復讐によってハムレットを殺してしまおうと企むのである。
王はハムレットとレアティーズに、剣術試合をさせようと提案する。※殺しあい的な真剣で一発勝負!みたいなものではなく、『や!』『いっぽん!』『それ!』みたいなやつである。
表向きはハムレットとレアティーズどちらが勝つか賭けをしよう、みたいな話になっているが、当然王はハムレットを殺す気まんまんであるし。
なんと、用意されたレアティーズの剣先には毒が塗られており、少し刺されたらハムレットは死にいたる。
しかも王は本当に悪いやつなので、レアティーズがうまくハムレットを仕留められなかった場合に備えてちゃっかりと毒入りの酒も用意しているのである。
ちなみに、ハムレットは毒を剣先に塗られているということまでは読めなかったものの、この試合を申し込まれた時点から、なにか変だぞ、と相当な違和感を感じている。
ハムレットに胸騒ぎがする、といわれた親友ホレイショーは『』気が進まないならやめるべきである、わたしが中止するように言ってくる』とハムレットを気遣うが、ハムレットはそれを認めない。
ホレイショーという登場人物は最後までハムレットにとって、唯一無二の正しい羅針盤である。
しかし、ハムレットはそんなホレイショーの言葉を最後の最後に無視をして、死の決闘へと向かってしまうのである。
【死の決闘】
試合は当初、ハムレットが優勢である。
あれだけみんなレアティーズの腕前は天下一品!みたいにいっていたのに、実際に試合をやらせてみたら、レアティーズはハムレットを前に手も足もでない。
やばいな、と思った王は、用意していた毒入りの酒をハムレットに飲ませようとする。しかし、ハムレットは『まだまだ!』と剣に夢中で飲もうとしない。焦った王が執拗にすすめると、ガートルードが代わりに酒を飲もうとしてしまう。
ガートルードは毒入りと知ってか知らずか、その酒を王の制止をふりきってのんでしまうのであった。
また、なかなか優勢になれず慌ててむきになったレアティーズの剣が、むいにハムレットを突く。
そして、制止をふりきりやりあってるうちにハムレットとレアティーズの剣が入れ替わり、ハムレットも毒が塗られたの剣でレアティーズをまたひと突きするのであった。
本来の標的であるハムレットも、そして復讐に望んだレアティーズも、その体に毒がまわりだす。
ガートルードはハムレットに『飲んだ酒に毒が入っていた』ことを告げ、亡くなる。
そしてまたホレイショーも、王がすべての黒幕であり、またハムレットも自分も剣先に塗られた毒によって、もうすぐ死ぬのだという事実を告げる。
ハムレットは母の死を目の前で目撃し、また王の卑劣な企みを目の前で体験したことで、怒りのまま、毒剣で王を刺す。
王はすぐには死なないが、ハムレットは周囲に助けを求める彼にさらに毒を飲むように迫る。
『近親相姦の罪と殺人の罪を犯したデンマーク王』
と、ハムレットは叔父を責め、『母上の後を追え』と言うのである。
そして王の死後すぐあと、レアティーズはハムレットに互いに許し会うことを求め、彼もまた絶命する。
【ハムレットほんとの終わり】
ハムレットは自分の寿命がいくばくもないという状況で、ホレイショーにことの顛末を語り継ぐように頼む。
しかしホレイショーは、ハムレットとともに死にたいと毒を手に取るのである。
ホレイショー、どこまでもいいやつ……
けれど、ハムレットはその毒をとりあげ、『少しでも俺を大事に思うのなら、生きて汚名をはらしてほしい』と告げ、その言葉をうけたホレイショーは、ハムレットの為に生き残ることを選ぶ。
ハムレットは最後に、次の国王にノルウェーのフォーティンブラス王子を任命し、絶命。
そして、ハムレットを看取ったホレイショーの目の前に、非常にタイミングよく、あのフォーティンブラスが現れる。
ホレイショーは彼にこの物語の顛末までを語りきることを告げ、フォーティンブラスはハムレットのために弔砲を撃つのであった。
完
というのが、ハムレット全体の流れである。
それにしても、
『なぜフォーティンブラスは最後に都合よく現れたのか??』である。
これ、じつはちゃんと全体の台詞を理解してないと全く意味がわからないと思う。
じつは、この舞台では最初の最初にフォーティンブラスという人物の不穏な動きが説明され、それ以降も彼が『国土を取り戻す』という意志のもと、この国を狙い秘密裏に行動していることがこまかく説明されている。(私は最初はよくわからなかった)
フォーティンブラスの父は、領土をかけて生前のハムレット国王(ハムレット父)と勝負をし、負けている。
その勝負にかったからこそ、ハム父はこの土地の王子として君臨していたのである。
しかしフォーティンブラスは血気盛んなため、ハムレット王の死去をきっかけに、先代の失った土地を取り戻すべく、ハムレット叔父が即位したデンマークに侵攻しようとしている。
※ちなみに冒頭、城の警備が厳重なのはそのためである
クローディアス王(ハム叔父)は、そのようなフォーティンブラスの怪しい動きをうけて、冒頭にノルウェー国王(フォーティンブラスの叔父)に親書を送っている。
フォーティンブラスは兵士をあつめデンマーク侵攻を仕掛ける直前であったが、送られた親書により国王である叔父に企みがばれ、普通に怒られてしまう。
そも領土のやりとりは条約を踏んで行われており、フォーティンブラスが乱暴な方法で奪還するなど、まぁ普通に怒られるわけである。
フォーティンブラスはしかたなくデンマーク侵攻をやめ、せっかく集めた兵士をつかって、ポーランド侵攻をはかる。
そして、その凱旋途中にイギリスの使節を迎えて(ローゼンクランツとギルデンスターンの死を伝えに来ている)一緒にデンマーク王に挨拶にきてみた。
というのが、最後のシーンの裏側である。
つまり、怒られたため土地を手にすることは諦めたはずなのに、挨拶にきてみたらどうやら王家は全滅、ハムレットからも王に指名をうけているらしちし、王になるならよくわからないけど当初の目的を図らずも達成してしまうなぁ、という棚からぼた餅的な結末なのだ。
全体を通してかれの行動は比較的丁寧に描かれてはいるものの、その殆どは台詞内の説明でしかなく、フォーティンブラス自身は役者としては最後の最後までてこない。
そういうわけで、ハムレットは中途半端な知識でみていると最後の最後で『誰やお前』となってしまうのである
【ハムレットとフォーティンブラスの光と影】
ハムレットとフォーティンブラスを比較したとき、おそらく頭のよさではハムレットが上である。
しかしハムレットはその頭のよさ故に悩み、苦しむことよって、最終的に恋人をはじめとしたあらゆる周囲の人間と共に死ぬこととなった。
フォーティンブラスは土地への執着から、とにかく猪突猛進気味に行動をおこし、しかし最終的には求めていたものを手にするラッキーパンチをかます。
これが、『生きるべきか死ぬべきか』と悩む人間と、『生きる』ことに迷いのない人間の差であろう。
つまり、ハムレットという物語には、
オフィーリア×ガードルード
ハムレット×フォーティンブラス
という、光と影のような二つの対比構造が存在する。
その対比こそが、観客にメッセージをなげかけ、考えさせる要素となるのである
【フォーティンブラスは黒幕なのか?】
フォーティンブラスの存在は、ぶっちゃねなぞである。
たとえば、じつはフォーティンブラスは黒幕なのではないか?という話がある。
わりかしわたしも、フォーティンブラスとホレイショーが結託してたらかなり上手い手口の復讐劇だぞ。とおもう。
しかしまぁ、事実クローディアスはハムレット父を殺しているし、深読みなような気がする。
フォーティンブラスはやっぱり、ただの棚からぼた餅なのかもしれない。
【ガートルードというひと】
さて。
最後に考えたいのは、ガートルードは酒に毒が入っていたのを知っていたか否かである。
ガートルードはハムレットの代わりに毒を飲んで死んだ。
これは、執拗にハムレットが酒を飲むようにすすめるクローディアスの様子から、その企みに感づいた故の行動だったのだろうか。
ちなみに私は気づいてなかったのだとおもうけど、みんなはどうでしょうか?
ガートルードはハムレットにずっとつめたいし、『わたしとあなたがすぐに結婚したからハムレットは傷ついてる』的なことを冷静にクローディアスに告げたりと、だいぶドライで嫌な女だと思うのだ。いちばん心がよめず、そのヒントも与えてくれない女性、ガートルード。
彼女は一体なにがしたかったのか。
彼女が最後に母は愛を見せたのか否か。
私はそれをぜひ舞台で注目したいなぁと思う次第である。
あーだめだ。
眠いからこのへんで。
おしまい
またね