KISS地獄のラストツアー
ゴメン。私にはあの瞬間を冷静に分析する余裕はなかった。あまりに楽しすぎて細かいところまでは、正直よく覚えてない。もちろん”あの瞬間”とは2001年3月22日(木)キッス最後のライブである。だが、なんとか思いだしつつ書いてみる・・・・。
今回のFAREWELL TOURは不安でいっぱいだった。JAPAN TOURいきなりの延期、来日直前のピーター脱退、エリックの加入etc.「ほんまに来るんかなぁ~」とネットでの情報をあさり、後は祈るしかなかった。すったもんだの末ようやく無事この日を迎えることが出来た。ウレシイ!
朝からいい天気だ!本当に興奮して頭の中は今日のライブのことしかなかった。(その証拠に子供の検査があったのに、そんな大切な事すら忘れていた トホホ )なんたって今回はアリーナ12列目64番といういい席だったからだろう。前日に行った友人に自分の席はどの辺になるのか、どんなライブだったか、いろいろと情報をゲットしていたので、それも気持ちに拍車をかけたみたいだ。さらに、私は今年”年女”しかも”厄年”である。前回キッス生初体験の時も”厄年”だった。ただの偶然とは思えない。やはりキッスとは運命を感じる。
早速駅に向かうと何故か視線が冷たい・・・この日私の住む京都は暑かった。なのに革のメタジャンに真っ赤なパンツという時代遅れで暑苦しい格好のおばはんが、嬉しそうに立っているのだから、さぞかし怖いものがあったのだろう・・・「やっぱロック・ファンってまだ社会からこういう目でみられてんねんなぁ~」と肩身の狭さを実感。いや、この場合私だけか?!ま、ええわ
結局現地に到着したのは5時過ぎだった。
もうすでに人だかりが・・・「あっ!いたいた」フルメイク&衣装のキッスアーミーが記念撮影している。このさい偽物でもいい。私も記念に一枚。これを見ると「やっぱメイクするべきやった・・・」と後悔の念が。でも気持ちにはバッチリKISSフルメイクしてきたから大丈夫!!
だんだんとあたりが暗くなって、ぞくぞくとキッス・アーミーが集合。独特の雰囲気で盛り上がってきている!しかし、どうも前回より年齢層が高い!それが後に本当だったと会場で証明されることになるとはこのときには思いもしなかった・・・。
会場に入るとすでに熱気が!「うぉ~アリーナや!」思わず口から出た。自分の席に着くなりそそくさと持参したキッスTシャツに着替える。会場内で、しかも人目を気にせず着替えられるあたり、さすが筋金入りの関西のオバハンである。自分でもこの根性アッパレ!!だ。
いざ、座ってみるとなんとステージの近いこと!PAの前、しかもエース側、ラッキー!!KISSと記された垂れ幕の外にマイクスタンドが立っている「ここで歌うん?めちゃ近いやん!!」胸が高鳴る。キョロキョロと見回している間にどんどんと”いかにも”って感じのファンが前の方を埋め尽くしていく。時折SEが大きくなったり、ローディーが忙しく動き回る「もうすぐや、もうすぐや!」ますます気持ちが高揚してくる。
「お~!スタッフが垂れ幕持ったぞ!!SEも照明も怪しいのになったぞ!!」と思った時、おきまりの文句が・・・。
「 You Wanted The Best,You Got The Best.The Hottest Band in The World "KISS"!!」
キャァ~ !!!!!キッスや!ほんまもんやで!!エースが動いてる! デトロイト・ロックシティで幕開けだ。エースがなにを弾いてるかがわかる!指が見える!顔の表情もハッキリ見える、もう感激しかない。
ん?しかしなんか音が変。エース、チューニング間違えてる?え?なんか変やで?あまりの爆音に音がちゃんと聞こえない状態に陥った・・・くっそ~こんなことではいかん!とにかく、楽しもう。そう決めてたから飛ぶ、はねる、叫ぶ、拳振り上げて、拍手、手拍子、なんでもやりまくった。 時々客席が大スクリーンに映し出されたが「巨乳やったら、絶対脱いでたのに・・・」(←またか!)自分の体が憎かった。
次は大好きな「duce」またしてもキャァ~である。スクリーンにはエリックがよく映し出された。彼はもくもくと仕事をこなし、けれど実に楽しそうにドラムを叩く。その姿は美しかった。ピーターじゃなくても何の文句もない。彼は立派なキッスのメンバーである。パワーもあるし、うまい!だから、前回のキッスよりも音的に安定していたと思う。またメンバーはみなスレンダーになっていた。でもエースはそうとう疲れてるみたいだった。内股ふらふらポーズのせいもあるが、階段から落ちた時はヒヤッとした。
気づいてない人もいるかもしれないが、ドラム横の階段から暗がりで足を踏み外したようで、ひざまづくエースがギターを交換したのが見えた。その後もちょっと足を引きずり気味でステージに立っていた。痛い顔はせず、何もなかったかのように。「エース・・・(泣)」あまりにも けなげな姿。ポールは相変わらずお元気で、なんであんなにセクシーなんだ?!お尻の位置が違う。下がってない。足細い!ジーンもブラで汗を拭き拭きご機嫌さんだったが、オーディエンスはやはり平均年齢が高かった・・・。
はじめは勢いで手を振り上げて手拍子してるのにだんだんと下がってきてしまう、厳しい現実だ。そのたびジーンに手拍子を催促される。「わかってるねん、ジーン。私らも一生懸命やねん、時間差筋肉痛のことも忘れてやってるんやけど、下がるんじゃぁ~~(泣)」
面白いくらいにアリーナ中央は手が上がったり下がったり。だが、ステージではもっと過激に動き、歌い、サービスしてくれる彼らは、はるかに年上。限界ギリギリのところでやってくれてるんだと実感した。余裕な顔しか見せない、プロの姿を見た。途中でポールが何回か「モシモシ」って電話をかけるふりをして笑わせてくれた。ジーンも声色を変えて「モシモシ、ポールサン?」なんてやってくれて、おちゃめなオヤジたちである。ポールが宙を舞いアリーナ中央の特設ステージに移動する時、汗が天から降ってきた。みんなは彼に注目していたが、私は”エース命”一人暗く寂しいステージでのエースに熱い視線と声援を送った。
ジーンの火吹き、血吐き、エースの煙ギターに、レスポール銃、エリックのドラムソロ、ポールのソロと、どんどんステージがこなされていく。あっという間に「ブラック・ダイアモンド」だ。「え~、もう終わり?」そう思うほど短く感じられた。一曲一曲完全燃焼してたからよけいにそう思ったのだろう。彼らはあっさりと別れを告げて消えていった。
火柱が出ると暖かい感じがしたのには驚いた!無事一応終わった。
だが、、勝負はここから!!
私はこれまたお約束の「we want kiss!! we want kiss!!・・・・・・」を叫び続けた。しかし周りには座り込んでいる奴がいる。叫んでもいない!必ず出てくるとわかってるからか?殴りたい衝動にかられた。だが、それどころではない。これで終わってなるものか!と必死で叫んだ「we want kiss! we want kiss!・・・・」みんなが言わなくても言い続けようと決意していた。だって本当にまだ終わりたくなかったのだ!その思いが通じたのか四人が出てきた。ステージにファンが作った垂れ幕が投げ込まれ、それをメンバーが広げて見せてくれた。そして懐かしい曲をメドレーのように聞かせてくれた。前日は「何する?」って感じでメンバー同士顔見合わせて「それはもう覚えてないよ~」とかってやりとりしながら、しかし最後まではやらなかった曲を今夜はちゃんとやってくれたらしい。
私の体は限界にきていた。手が足がしびれて痛い。足が膨張して靴下を脱がないといられないほどだった。でも止められなかった。私を喜ばせようと必死にメンバーは演奏しているのだから、私も最後まで全力投球するのが彼らへの礼儀であり愛だと思うから・・・。
色とりどりの紙吹雪がステージを隠すほどに降ってきた!まるでキッスからの愛情がそそがれるようにみんなの頭の上に降り注いだ。そして「ロックンロール・オールナイト」最後にこの曲でポールはギターを壊すのだが、だいたい3~4回床に叩きつけてから壊れるのが主流なので、そのつもりでいたらなんとたった2回でブッ壊れた。ちょっと残念だった。一斉に花火&火柱が上がり「Dont' Forget Us!」とメッセージを残し大歓声の中を彼らは消えていった。
場内の明かりがつくと無心に紙吹雪を拾い集めていた。まるでキッスとの思い出を拾うかのように。とにかくたくさん拾いたかった。何かそこに自分が存在したことを証明するものが欲しかったのかもしれない。会場を出るとセミが耳元で鳴いてるような耳鳴りだ。わかっていたけれど、どうしても 耳栓をする気にはなれなかった。彼らに失礼な気がしたからだった。また、これもナマゆえの現象だと思うとちょっと嬉しかった。
今回で解散となるキッス。正直泣くかもしれないと思っていた。キッスは青春だったから。現に「泣いた」という感想も聞いていたし・・・。 けれど涙どころか、嬉しくて、楽しくて。涙が出るとしたらうれし泣きだったろう。最後の最後に自然と叫んだ言葉は「ありがとう」だった。彼らのおかげで今の自分がいる。何度勇気付けられ、癒されてきたことか。悲しいよりも、本当に今まで私たちファンのためにありがとう。そしてご苦労様という気持ちでいっぱいだった。よく彼らは「自分たちの夢を叶えてくれてありがとう」とファンに言っていた。支えてくれるファンのために全力を尽くす。ファンもそれに応える。きっとキッスのメンバーも幸せだったと思う。でなきゃ、老体にむち打ってあれだけのライブは出来ないだろう。彼らの場合、内容も回数も半端ではないのだから。
キッスは世界一のライブバンドで、そしてこんなにファンを大切にしてくれるバンドは彼ら以外にない事を証明してくれた。私はそんなキッスのファンでいられることを、彼らとともに青春を過ごせたことを誇りに思う。
もう生のライブで彼らを体験する事はないかもしれない。
けれど、彼らの作った曲、与えてくれた感動は色褪せることなく私の中で、そしてそれぞれのキッス・アーミー達のなかでこれからもずっと生き続けるのだ、永遠に。 KISS WILL NEVER DIE.
これも19年前のライブレポ。前回と似ているけれど(笑)いい思い出として残しておく。ただ、これがファイナルツアーだと信じていたため、完全に燃え尽きてしまい、その後のライブには一度も行ってない。本当に今年で引退宣言をしている彼らだが、またヨボヨボになってもやるんじゃないかと、どこかで期待している。